アジア9地域9名の作家によるアンソロジーが完成した。参加作品の多くが書き下ろしという、大がかりなプロジェクトだ。タイトルは『絶縁』(小学館)。日韓同時刊行となった。
「絶縁」をテーマに選んだのは、プロジェクトの発端となった韓国人作家チョン・セランさんだった。チョンさんはNetflixでドラマ化された『保健室のアン・ウニョン先生』などの代表作があり、日本でも7作品が翻訳されている。
チョンさんが「絶縁」をテーマにした理由は、「私たちの世代はいろいろと"分節"を経験していると思うから」。1984年生まれのチョンさんは、韓国の軍事政権の終焉、民主化、保革イデオロギーの対立などをリアルタイムで経験してきた世代だ。
このプロジェクトに「痺れるテーマですね!」と乗った日本人作家が、1979年生まれで、芥川賞受賞作『コンビニ人間』が世界30言語で翻訳されている村田沙耶香さん。このほか、「折りたたみ北京」でヒューゴー賞を受賞した中国の郝景芳(ハオ・ジンファン)さんなど、世界的に活躍する1976~84年生まれのアジアの作家たちが集結した。
「絶縁」というテーマでありながら、アジアの諸地域の縁をつなげるかのようなアンソロジー。9名はそれぞれの土地・それぞれの言語で何を描き出したのだろうか。
〈作品リスト〉
【日本】
村田 沙耶香『無』
突如若者に舞い降りた「無」ブーム。世界各地に「無街」が建設され──。
【シンガポール】
アルフィアン・サアット『妻』(藤井 光・訳)
夫がさりげなく口にした同級生の名前、妻は何かを感じとった。
【中国】
郝景芳(ハオ・ジンファン)『ポジティブレンガ』(大久保 洋子・訳)
ポジティブシティでは、人間の感情とともに建物が色を変える。
【タイ】
ウィワット・ルートウィワットウォンサー『燃える』(福冨 渉・訳)
先鋭化する民主化運動の傍らで生きる「あなた」たちの物語。
【香港】
韓麗珠(ホン・ライチュー)『秘密警察』(及川 茜・訳)
都市に走った亀裂、浸透する秘密警察、押し黙る人びと。
【チベット】
ラシャムジャ『穴の中には雪蓮花が咲いている』(星 泉・訳)
ブラック職場を去ることにした僕。頭を過るのは死んだ幼馴染の言葉だった。
【ベトナム】
グエン・ゴック・トゥ『逃避』(野平 宗弘・訳)
家族の「縁」から逃れることを望んできた母が、死を目前にして思うこと。
【台湾】
連明偉(リエン・ミンウェイ)『シェリスおばさんのアフタヌーンティー』(及川 茜・訳)
3人の少年には卓球の練習後に集う、秘密の場所がある。
【韓国】
チョン・セラン『絶縁』(吉川 凪・訳)
6人の放送作家に手を出した男への処罰は不当か否か。
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