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"天才"成田悠輔が、叶恭子の赤裸々エッセイを哲学的に読むとどうなる?

(企画名)#木曜日は本曜日

 テレビやYouTubeなどでコメンテーターとして活躍している、経済学者の成田悠輔さんは、自身の読書についてこう語る。

僕けっこう胃もたれ系が好きなんですよね。
自分がけっこう淡白なので、どっちかっていうと胃もたれ系の人の方が動物を見ているようで楽しいんですよ。違う動物を見ているっていう感じですかね。

 「週に1回、木曜日は街の本屋に足を運んでもらおう」と東京都書店商業組合が立ち上げたプロジェクト〈#木曜日は本曜日〉。〈東京○○書店〉と題し、毎週木曜日に著名人・インフルエンサー・作家が「人生を変えた本」を紹介している。これまでに上白石萌音さん佐久間宣行さん鈴木涼美さんらが登場した。

 第11回で成田さんが紹介したのは、「胃もたれ系」のおすすめ本の数々。"天才"と称される頭脳を持つ成田さんが、人生に影響を与えられた本とは?


叶恭子さんは「人間の1番難しい問題に取り組んでる」

 紹介した1冊は、なんとタレントの叶恭子さんのエッセイ『トリオリズム』(小学館)。自身の「愛と性」について赤裸々につづり、刊行時はベストセラーとなった。成田さんは本書を「ある種の自伝哲学」と言い表す。

それ(愛と性)を素材として使いながら、描かれているのは「自分と他人の関係」っていうことだと思うんですよね。(中略)この本は、自分という鏡を通じて他人がどう映るかとか、他人という鏡を通じて自分がどう見えるかとかっていう、一人称と三人称の間を行ったり来たりする。それによって結局、自分にとって大事な人との関係っていうのはなんなのかとか、人との関係をどう作り出すべきなのかみたいな、1番人間が社会の中で生きていく上で難しい問題に結構真っ向から取り組んでるなと思って。

 さらに、他人との関係を語る上で、精神的なことよりもお金やセックスといった、人間の原始的な欲望に「正面からタックルしている」という点も評価する。

「第7章 LOVEはお金で買えるのか?
結論 メイクラブの快感と財力の快感は、とても似ています。」
......こんなこと書く人あんまりいないですよね(笑)

 「"普通"の感覚をボンっと超えてみることで、誰しもが生活の中で悩んでいることを見直すことができる」と語る成田さん。センセーショナルなエッセイも、確かになんだか哲学的で、人生に役立つ本に思えてくる。


もはや、本なんですかね?

 続いて紹介した本は、オノ・ヨーコさんの詩集『グレープフルーツ・ジュース』(講談社)。1964年に500部限定で出版された『グレープフルーツ』を再編集したもので、原作はジョン・レノンが「イマジン」の歌詞の一部に引用したことでも知られる。

 成田さんはこの本を開きながら「本なんですかね......」「もはや本なのか本でないのか怪しいですね」と衝撃の発言。

パフォーマンスアートとしての本みたいな感じじゃないかな。(中略)
「掃除をしなさい。」「太陽を見つめなさい。それが四角くなるまで。」とか、こういう指示がひたすら書かれてるんですよ。
だから要は、読むための読む行為ではなくて、何か行為をしたり行動を起こしたりするための、触媒としての言葉、触媒としての本という感じなんですよね。

 本書には他にも、「想像しなさい。千の太陽がいっぺんに空にあるところを。一時間かがやかせなさい。それから少しずつ太陽たちを空へ溶けこませなさい。ツナ・サンドイッチをひとつ食べなさい。」というように、スケールも現実味もバラバラな指示がたくさん書かれている。成田さんはこれを読みながら、できることとできないことの間、本当にやっていることとただの想像の間には何があるのか......ということ考えるという。さすが、一味違った読書体験がそこにありそうだ。

 動画後半で訪れたのは、東京都目黒区祐天寺にある本屋「王様書房」だ。「ルーティンしたくないから本屋さんに来る」「本屋さんに来るのは、あんまり固まってない、目的もないものが欲しい時」と語る成田さん。意外にも雑誌が好きだそうで、特にファッション誌や料理系の雑誌を手に取ってパラパラとめくる。成田さんの思う雑誌の魅力とは。


〈成田悠輔さんの「人生を変えた本」10冊〉

『意味の変容』森敦(筑摩書房)
『トリオリズム』叶恭子(小学館)
『グレープフルーツ・ジュース』オノ・ヨーコ(講談社)
『神聖喜劇』大西巨人(光文社)
『ルネッサンス 経験の条件』岡崎乾二郎(文藝春秋)
『池袋・母子餓死日記 覚え書き』公人の友社 編(公人の友社)
『桶川ストーカー殺人事件―遺言』清水潔(新潮社)
『血が、汗が、涙がデザインできるか』石岡瑛子(小学館)
『クリストファー男娼窟』草間彌生(KADOKAWA)
『HERE ヒア』リチャード・マグワイア(国書刊行会)

 哲学書、小説、美術、事件を追ったノンフィクションと、成田さんの関心の向きがよくわかるラインアップだ。

 〈東京○○書店〉は毎週木曜日に更新される。次回は誰が登場するのか楽しみだ。

 〈#木曜日は本曜日〉公式サイトはこちら。→https://honyoubi.com/

 東京の各書店では〈#木曜日は本曜日〉オリジナルデザインのしおりを配布している。配布店舗の一覧はこちら。→https://honyoubi.com/assets/data/present_shoplist.pdf

 また2023年1月5日(木)から2023年1月31日(火)まで、〈#木曜日は本曜日〉のアーカイブ展が開催される。場所は渋谷ヒカリエの「渋谷○○書店」だ。これまでのゲストの選んだ本から各3冊ずつが展示・販売されるほか、動画内でゲストが記入した「○○さんにとって本屋とは?」の手書きフリップも展示される。各書店にて配布中の〈#木曜日は本曜日〉オリジナルしおりも、展示会で配布される。

■「#木曜日は本曜日」アーカイブ展@「渋谷○○書店」概要
期間:2023年1月5日(木)~2023年1月31日(火)
場所:渋谷ヒカリエ内「渋谷○○書店」(〒150-0002 東京都渋谷区渋谷2丁目21−1 ヒカリエ8階)

■アーカイブ展と同時開催 限定6店舗にて各ゲストの選書本10冊の展示・販売が決定!
アーカイブ展と同時期に、都内6つの書店にて、各ゲストの10冊分全てを展示・販売予定しております。
アーカイブ展に展示されていないゲストの選書本をご覧いただける機会となっておりますので、ぜひ足をお運びください。
【対象書店】
教文館(中央区)/中野屋書店(品川区)/恭文堂(目黒区)/小川書店(港区)/黒田書店(日野市)/一二三堂(大田区)

■成田悠輔さんプロフィール
なりた・ゆうすけ/研究者・零細事業者・三流タレント。専門は、データ・アルゴリズム・ポエムを使ったビジネスと公共政策の想像とデザイン。ウェブビジネスから教育・医療政策まで幅広い社会課題解決に取り組み、多くの企業や自治体と共同研究・事業を行う。混沌とした表現スタイルを求めて、報道・討論・バラエティ・お笑いなど様々なテレビ・YouTube番組の企画や出演にも関わる。夜はアメリカでイェール大学助教授、昼は日本で半熟仮想株式会社代表。著書に『22世紀の民主主義:選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SBクリエイティブ)など。


※画像提供:東京都書店商業組合




 


  • 書名 (企画名)#木曜日は本曜日
  • 出版社名(主催)東京都書店商業組合

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