2018年の当選から現在に至るまで、沖縄県知事として県政に尽力している玉城デニー氏。沖縄の代表として立っている玉城氏だが、彼がどんな半生をもつどんな人物なのかは、沖縄でも若い世代にはあまり知られていないそうだ。
『誰も書かなかった 玉城デニーの青春 ――もう一つの沖縄戦後史』(光文社)は、玉城氏の半生を通して沖縄戦後史を見つめるノンフィクションだ。アメリカ統治下の沖縄にミックスルーツの子として生まれた玉城氏は、統治と復帰の中揺れ動く戦後沖縄で、青春時代を生き抜いてきた。
本書の著者であるノンフィクションライターの藤井誠二さんは、「第5回沖縄書店大賞」の授賞式の場で、初めて玉城デニー氏と会った。同賞「沖縄本部門」を受賞した藤井さんの著書『沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち』(講談社)を、玉城氏はこう語ったという。
「これはまさに私の時代の物語だ。私が生きてきた沖縄戦後史が書かれている。感動しましたし、いろいろな思いも込み上げてきました」
(「はじめに」より)
玉城氏が生きてきた沖縄戦後史とは。「この人はどんな人生を歩んできたのだろう」という思いから、藤井さんは玉城氏にオファーし、その半生についてインタビューをした。
玉城氏は、アメリカ軍人だった父と沖縄の離島出身の母のあいだに生まれた「アメラジアン」(アメリカ兵とアジア人のあいだに生まれた子ども)だ。将来アメリカに渡ることを前提に「デニス」と名付けられたが、結局玉城母子がアメリカの父を追うことはなかった。「デニー」は愛称だ。小学4年生のとき、家庭裁判所に申し出て「康裕(やすひろ)」に改名した。そして戦後沖縄のアメラジアンに対する差別と偏見の中を、玉城氏は生き抜いてきた。
玉城氏は高校卒業後、東京で福祉の専門学校に通い、帰沖後、音楽活動や内装業、音楽マネージャーを経て、県民に広く知られるきっかけとなるラジオ番組のパーソナリティを始めた。政治とは無縁に生きてきた玉城氏は、どのようにして沖縄の政治の中心人物となったのだろうか。
アメリカ統治の痛み、出自による差別の痛み、「日本」と対峙する沖縄の痛み。玉城氏の青春時代をたどると、戦後沖縄の生々しい息遣いが聞こえてくる。
【目次】
戦後青春から未来への旅――まえがきに代えて
第1章 四畳半の青春――伝説のロックバンド「ウィザード」
第2章 5人の「後輩」たち
第3章 激動の日々
第4章 「あんたは『日の丸』振らなくていい」
第5章 ミックスルーツと沖縄アイデンティティ
第6章 政治家、結婚、ルーツ
あとがき
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