和菓子には、日本の季節の変化を楽しむ遊び心が加えられているものが多い。夏は透き通るような羊羹やゼリーに涼しさを感じる。
2022年3月24日に発売された『和菓子と言の葉』(光文社)は、四季を表す日本語を和菓子で表現した美しい写真が満載のレシピ集だ。作り方だけでなく、うつわとの合わせ方や、写真の撮り方も収録されている。
《春》
ほころび・東風・木の芽時・花便り・夢見草・花筏・苔むす・光芒・うたたね・木漏れ日
《夏》
翠雨・雨模様・玉響・夏木立・逢瀬・蛍火・潮鳴り・たゆたう・泡沫・夏の果
《秋》
黄昏時・残り香・待宵・初音・うつろい・夜の帳・錦秋・水鏡・木の実降る・木枯らし
《冬》
風花・閑花・銀嶺・灯火・言祝ぎ・常永久・雪華・ひだまり・薄氷・はなむけ
風流な名前をつけられた、美しい和菓子の数々。ここでは、夏の和菓子を見ていこう。
「雨模様」と題された3つのハーブ羹。右が「みぞれ【霙】」真ん中が「ぎんちく【銀竹】」、左が「しゅうう【驟雨】」と、名前がついている。
よく見ると、それぞれ模様が異なっている。ガラスの向こうに見える空を映し出しているようだ。
続いて、「夏木立」。白ワイン羹に空豆餡を入れた一品は、青々と茂る木立を表現している。
緑茶羹と黒糖羊羹でできた「蛍火」は、夏の夜を彩る光の演舞を思い起こさせる。
淡いピンクのグラデーションが上品な練切は、「潮鳴り」。貝殻にそっと耳を寄せてみたくなる。
ついうっとりと眺めてしまう本書は、第9回料理レシピ本大賞の一次選考を通過している。詩的でやさしい和菓子の世界を、目でも舌でも味わって。
■藤原夕貴(ふじわら ゆき)さんプロフィール
和菓子デザイナー、グラフィックデザイナー。出版社勤務を経て、ロンドンの美術大学へ留学。帰国後、グラフィックデザイナーとして広告・ブランディング業界で働く一方、茶道を教える祖母の影響で幼い頃から身近にあった「和菓子」に着目し、デザイナーの視点から独自の感性で和菓子を制作。自然や日常をテーマにした和菓子を始め、企業とのコラボ作品など既存の枠にとらわれない和菓子のあり方を探求、作品を発表している。
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