人は誰でもウンコをする。生きているなら当たり前のこと、それどころかとても大切なことなのに、どうして誰もウンコの話をしなくなったのだろう。
クラスのみんなに「ウンコいってきまーす!」なんて、恥ずかしくて絶対言えない! そんな子どものために、ちょっと風変わりな先生が、大切なウンコの話をしてくれる。『ウン小話(こばなし) 世界一たのしくてまじめでちょっとクサい授業』(集英社)を覗いてみよう。
今日から待ちに待った新学期。4年2組には新しい先生がやってくるらしい。どんな先生が来るんだろう、ドキドキ。
ガラガラッとすごい音を立てて教室のドアが開いた。入ってきたのはもじゃもじゃ頭の男の先生。着ているTシャツの柄を見て、教室じゅうがざわざわしだす。そこにはにょろ~んとしたイラストと、「nice unko」の文字が。
彼こそ4年2組の担任、宝土大作(たからど・だいさく)先生だ。先生は黒板に大きく名前を書くと、「大」の字に丸をつけて、「これは大便っていう意味だ」なんて言う。大丈夫か、この先生?
おまけに先生はこんな言葉を黒板に書いた。
クラスのもくひょう
ウンコを知る、おもしろがる、考える
教室はさらに大騒ぎ。このクラスはどうなっちゃうんだ! すると先生はこんな話を始めた。
ふざけてるのかって思ったひともいるよな。でも、このテーマをみんなと大まじめに、しんけんに、とことん考えてみたいんだ。だって、ウンコしないひとなんていないだろ。人間だけじゃないぞ。虫も鳥も、けものも魚も植物も、生きているものはみーんなウンコをしているんだ。生きることは食べること、ってよく言われるけど、生きることは食べてウンコすることなんだって、オレは考えている。
なんだかわかったようなわからないような。こうして、もじゃ大(という先生のあだ名をクラスのみんなでつけた)と4年2組の日常が始まった。
もじゃ大先生は、社会科、体育、国語、理科、図工などなど、どんな授業にでも「ウンコ」の話をぶちこんでくる。4年2組のみんなは、これを「ウン小話」と名づけた。「でたー、ウン小話!」と叫ぶと、先生は満足そうな顔をする。
破天荒なもじゃ大先生をはじめ、個性豊かな登場人物たちの活躍は、読み物としておもしろい。説教くさくなく肩ひじ張らないテンポ感が本書の魅力だ。子どもたちはきっと、もじゃ大先生の楽しくて大切な「ウン小話」に夢中になるはず。本文はすべての漢字にルビがふってあり、小学校低学年から読むことができる。
「ウンコってのは、体の中からの『手紙』みたいなもんで、健康状態を教えるメッセージを運んでくるものでもある」
ウンコは恥ずかしいものじゃない(クサいけど)。生きるうえでとても大切なものだ。さあ、あなたも4年2組の一員になって、もじゃ大先生の魂のウンコ授業を受けよう。
トイレを恥じる子どもには勇気と興味を、
トイレに慣れた大人には情報と知識を授けてくれる貴重な一冊。
人目を忍んでトイレへ向かう小さき私に、印籠として授けたい。
この本を懐に、胸を張れ!
――朝井リョウ(作家)
〈目次より〉
・ウンコは手紙である
・イタリアのウンコ祭り
・ウンコの漢字練習
・空飛ぶトイレの物語
・ウンコを食べて生きている?
・ウンコができるまでの時間をはかる
・地球上のウンコを計算する
・戦争とウンコ
・ウンコから紙を作る
......など全17話
■著者プロフィール
文:湯澤規子(ゆざわ・のりこ)さん
1974年大阪府生まれ。法政大学人間環境学部教授。専門は歴史地理学、農業史。博士(文学)。著書に『7袋のポテトチップス』『ウンコはどこから来て、どこへ行くのか』『食べものがたりのすすめ』 『うんこでつながる世界とわたし』など。
絵・金井真紀(かない・まき)さん
1974年千葉県生まれ。文筆家、イラストレーター。著書に『パリのすてきなおじさん』『世界のおすもうさん』(共著・和田静香)『戦争とバスタオル』(共著・ 安田浩一)など。挿絵担当に毎日小学生新聞の連載「日本語をつかまえろ!」、岩波ジュニアスタートブックスなど。
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