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「うんち」のにおいの正体は食べ物ではない。

うんち学入門

 私たちは日々ものを食べ、「うんち」を出している。「うんち」を出さない人はいない。でも、その「うんち」とは、いったい何ものなのだろうか。なぜつくられるのか? なぜ臭いのか? なぜ茶色なのか? なぜ出したらお尻を拭くのか? 毎日(ではないかもしれないけれど)「うんち」をしているそこのあなた、答えることはできるだろうか。

 「食べたら便が出るのは当然じゃない?」いやいや、私たちが今の形の「うんち」を出すようになるまでには、途方もない生物の歴史があるのだ。北海道大学理学部生物化学科教授の増田隆一氏による『うんち学入門 生き物にとって「排泄物」とは何か』(講談社ブルーバックス)に、「うんち」の正体がすべて書いてある。


「うんち」のにおいの正体は?

 とりあえず、まずは「うんちはなぜ臭いのか」という問いにだけ答えを出しておこう。あの茶色い塊の全部がプワ~ンとにおっているイメージだが、そのにおいの正体は消化された食物ではない。臭いのは、「うんち」に混ざっている腸内細菌だ。腸内細菌は、体の役に立つ善玉菌・ときどき悪さをする悪玉菌・ときによってはたらきが変わる日和見菌の3種類に分けられる。善玉菌はたとえば乳酸菌やビフィズス菌、悪玉菌は大腸菌やレンサ球菌など。このような腸内細菌のなかに特有のにおいを出すものがあり、それが「うんち」に混ざって体外へ出てきて、あのプワ~ンとしたにおいになっているのだ。

 体内の何らかの不調で3種類の腸内細菌の生存バランスが崩れると、「うんち」のにおいも変わる。「うんち」のにおいで健康状態がわかると聞いたことがある人もいるかもしれないが、つまりはこういうこと。悪玉菌の割合が増え、悪さをしていると、「うんち」も臭くなるのだ。

 ちなみに、健康な成人の腸内には、目に見えないほど小さな腸内細菌が600兆~1000兆個も住んでいる。そのなかにも約500~1000種類のバリエーションがあり、総重量はなんと1~1.5kgだ。私たちの体重のうち1kg強は、腸内細菌の体重ということになる。誰の腸内にも、これだけの細菌が住んでいる。胎児や、他の動物の卵のなかの子はまだ無菌状態だが、生まれてきてものを食べ始めた瞬間から、腸に細菌が入ってくる。腸内細菌のいない消化器官はない。だから、すべての「うんち」が臭くて当然なのだ。

 人間は往々にして、「うんち」を「臭い!」と避けたがる。しかし、その臭さにはれっきとした理由があったことがおわかりいただけただろうか。ヒトは嗅覚が退化してしまったが、他の動物たちのなかには、個体ごとに異なる「うんち」のにおいを利用して、なわばりを嗅ぎ分けるものもいる。「うんち」は生き物にとって、欠かせない役割を果たしているのだ。

「うんち学」は生物学そのもの

 その他、生命誕生以来の排泄史スペクタクル、私たちの体のなかで「うんち」が生成されていく過程の神秘、さまざまな生き物から出される個性豊かな「うんち」たちなど、てんこもりの「うんち」トリビアをぜひ書籍で。

 さて、この本のテーマはもちろん「うんち」だが、本を開くと「単細胞生物・多細胞生物」「DNAの構造」「生態系・食物連鎖」などなど、生物の教科書で見たことがある単語がたくさん。この本は「うんち」の本でありながら、「うんち」から見る生物学そのものの本でもある。

 私は、学生時代から現在までに学び、研究してきた生物学の知識すべてを動員して、「うんち」について考えました。しかし、「うんち」について考えれば考えるほど、生き物全般にわたるさまざまな疑問が湧いてきました。本書のタイトルになっている「うんち学」とは、生物学そのものではないか! と考えるにいたったのです。(本文より)

 生き物と切っても切れない関係にある「うんち」。毎日出している「うんち」が実はどんな歴史をもっていて、どんな役割を果たしているのか。「うんち」のかぐわしい世界をちょっと覗いてみてはいかがだろうか。


〈もくじ〉
第1章 生物にとって「うんち」とは何か
第2章 個体にとっての「うんち」──なぜ「する」のか
第3章 集団にとっての「うんち」──果たして「役に立つ」のか
第4章 他の生物にとっての「うんち」──「うんち」を使った巧みな「生き残り」&「情報」戦略
第5章 環境にとっての「うんち」──地球規模で活躍する「うんち」

■増田隆一(ますだ・りゅういち)さんプロフィール
1960年、岐阜県生まれ。北海道大学大学院修了(理学博士)。アメリカ国立がん研究所(NCI)研究員等を経て、現在、北海道大学大学院理学研究院教授。哺乳類を中心に、分子系統進化学および動物地理学に取り組んでいる。研究では、動物を捕獲せずに非侵襲的に得られる排泄物を用いた遺伝子分析を取り入れてきた。2019年度日本動物学会賞、日本哺乳類学会賞を受賞。著書に、『哺乳類の生物地理学』(東京大学出版会)、『ユーラシア動物紀行』(岩波新書)、『ヒグマ学への招待』(北海道大学出版会・編著)、『日本の食肉類』(東京大学出版会・編著)、『生物学』(医学書院・共著)など多数。


※画像提供:講談社


  
  • 書名 うんち学入門
  • サブタイトル生き物にとって「排泄物」とは何か
  • 監修・編集・著者名増田 隆一 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2021年10月21日
  • 定価1100円(税込)
  • 判型・ページ数新書・240ページ
  • ISBN9784065170144

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