本を知る。本で知る。

『鎌倉殿の13人』影の主役・北条政子が「わきまえない女」になった本当の理由

「わきまえない女」だった北条政子

 NHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。大泉洋さん演じる源頼朝と、毎回のように夢枕に立つ後白河法皇(西田敏行さん)とのやりとりなど、三谷幸喜さん脚本のコント的な面白さに加え、頼朝をめぐり伊東八重(新垣結衣さん)と北条政子(小池栄子さん)が対峙する場面も見どころのひとつだ。

 夫を奪われ、息子が死に、墓の前で泣き崩れる八重。その八重を「あの女」呼ばわりし、頼朝はもう自分のものだとマウントをとる政子。「怖い」「冷酷」「わきまえない女」という政子のイメージを、小池栄子さんが熱演している。

 歴史作家・跡部蛮さんの著書、『「わきまえない女」だった北条政子』(双葉社)は、そんな「怖い」政子の意外な一面を明らかにしている。跡部さんは、政子を評して、無闇に権力に溺れたり、他の女に嫉妬していたわけではなく、「あること」に対してだけわきまえない女だったとする。本書はその「あること」が何だったのかを追求する謎解き本だ。

book_20220215174314.jpg

政子の後継者、竹御所の悲劇

 1つ目の謎は、政子の後を継いで「御台所」と呼ばれるようになった女性・竹御所(たけのごしょ)の流産&急死事件だ。時は1234年。実はこの時点で、頼朝と政子の子供たちは、権力争いによって彼女以外全員死んでしまっていた。そのため、頼朝と政子の孫娘として生まれ、京都から来た摂関家の将軍・九条頼経の妻になっていた竹御所は、源氏将軍家最後の希望だった。その彼女が亡くなったことで、北条家の治世が完成するのである。

 なぜ、政子本人ではなく、その孫娘の死から話が始まるのか? それは、この事件が政子とその実家である北条氏の対立を表しているからだという。政子は生前、唯一残った子孫である竹御所のために支援を惜しまなかった。だが、北条家からしてみれば、竹御所は自分たちの支配を阻む最後の障害だった。つまり、政子は実家と対立していたようなのだ。

「わきまえない=悪女」の風評

 実家のために尽くしたのでなければ、政子は何のために働いていたのだろうか。男性優位が確立していた江戸時代にしばしば見られたのは、「嫉妬」や「権力欲」を原動力にした「悪女」であったという見方だったが、著者はこのような政子像を否定する。たしかに政子は、頼朝の不倫相手の住居を破壊したり、別の不倫相手を鎌倉から京都へ追放するなど、当時としても珍しいほど自分以外の頼朝周辺の女性には厳しかった。

 だが、その厳しさはあくまで「正室」としての立場を守るためのものだったという。政子は不倫相手には厳しくても、その子どもを殺したり追放したりすることはなかった。鎌倉時代において「正室であること」は、女性が権利を獲得できるかどうかの重大事であり、苛烈な行動も、嫉妬や権力欲によるものでなく、その立場をはっきりさせるためのものだったのだ。

「家」を守りたかった政子

 その証拠に、政子は敵方の女性に優しかった。木曽義仲の妹の境遇を哀れんで養子にし、源義経の妻・静御前(しずかごぜん)が頼朝に当てつけのように「義経が恋しい」という内容の芸を披露したときも、怒る頼朝を諭した。さらには静御前が反逆者である義経の男児を産んでしまった際には、その助命嘆願まで行ったのである。

 著者は、政子が守りたかったものは、夫である頼朝とその子供たちで構成される「家」だったと指摘する。その「家」と、そこにおける自分の立場を守るためなら、政子はなりふり構わなかった。だからこそ、その思いを共有する敵方の女たちに政子は同情的だったともいえる。だが、そんな政子の思いとは裏腹に、彼女の「家」は権力闘争に巻き込まれていき、悲劇的な結末を辿ることになる......。

 「尼将軍」と呼ばれた晩年の北条政子は、その名の通り出家し、仏教に傾倒していた。その姿は、『鎌倉殿の13人』でもかならず描かれるはずだ。本書は、政子がそこに至るまでの長く苦しい道のりを描き出している。大河ドラマをより深く楽しむためにオススメの一冊だ。



 
  • 書名 「わきまえない女」だった北条政子
  • 監修・編集・著者名跡部 蛮 著
  • 出版社名双葉社
  • 出版年月日2021年12月22日
  • 定価1,100 円 (税込)
  • 判型・ページ数新書判・200ページ
  • ISBN9784575316858

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

ノンフィクションの一覧

一覧をみる

書籍アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

漫画アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?