死者・行方不明者271人という甚大な被害を出した2018年の西日本豪雨や、タワマンが水に浸かった東日本台風(2019年)、静岡県熱海市で発生した土石流(2021年)......。台風や集中豪雨などの災害のニュースを耳にするたびに「自分の家は大丈夫だろうか」と不安になる。これから引っ越すなら、なるべく安全な土地を選びたい。
2021年10月21日『私たちはいつまで危険な場所に住み続けるのか』(日経BP)が発売された。
2016~20年の5年間に起こった水害による被害額は、全国で計5.2兆円にも及ぶという。本書では長年にわたって自然災害の取材を担当してきた建築・住宅・土木分野の専門記者が、今後激しくなると予想される水害や土砂災害の最前線を、現地取材をもとに綿密に紹介していく。
では、本書の内容を紹介していこう。
第1章 水害事件簿 / 第2章 狙われた臨海部気候変動の影響で、ますます激しくなるとみられる水害。タワーマンションの浸水から関西国際空港の水没まで、近年話題となった被害の詳細や背景、「その後」を徹底的にリポート。自宅が200メートルも流されたという事例も。
第3章 土砂災害頻発列島土石流に地滑り、がけ崩れ。日本は世界でも有数の土砂災害多発国だ。行政は危険なエリアを指定し、情報を公開するものの、被害は一向に減らない。熱海の土石流では、「盛り土」が問題視された。誰もが被害者になり得るだけでなく、場合によっては加害者になることもある。
第4章 危険な土地からの撤退堤防やダムなどで水害を防ぐこれまでの「治水」が2020年、土地利用の工夫、保険制度などの仕組みも含めて水害に対抗する「流域治水」に大転換。先進的な自治体では、都市計画や条例によって危険なエリアから安全なエリアへ居住地を誘導する取り組みが始まっている。
第5章 耐水都市への挑戦災害を受け流すという新発想で、住宅・建築・都市づくりが始まっている。これまで水害対策に未着手だった住宅・建築分野を中心に、浸水対策の「コスパ」の検証、耐水害住宅の開発など、興味深い取り組みを紹介。
第6章 防災テックに商機AIによる被害予測、人工衛星による被災状況の把握など、盛り上がりを見せる防災テック(防災×テクノロジー)の動向を収録。民間企業にとっては新たなビジネスチャンスになる可能性も。防災市場を育てることは、被害の軽減や復旧・復興の加速につながる。
資料編 近年の主要な水災害の記録西日本豪雨や東日本台風など、この数年間で日本に甚大な被害をもたらした水害や土砂災害の基礎データと、それによって政策や技術開発のトレンドがどのように変化したかを、巻末に収録。
「災害リスクの高い土地からの撤退を戦略的に進める」、「撤退が難しい場所では災害を受け流す街づくりに投資する」。これらは、これからの住まいや街づくりに欠かせない考え方だという。命はもちろん、財産をどのように守り抜くかも関心が高まる一方だ。
本書は下記のような方にオススメ。
・一般メディアが提供する情報よりも、踏み込んだ内容を知りたい方
・住まいづくりや引っ越しを検討中で、災害リスクに関心がある方
・住まいづくりや街づくりに関わる建築・住宅・土木の専門家
・災害対応を担う自治体職員、企業の防災担当者
・防災分野でビジネスを考えている方 など
大規模な災害に対し、個人レベルですぐにできる対策は限られている。まずは、自分が住んでいる環境が抱えるリスクや行政による最新の取り組みを知るところから理解を深めていきたい。
■著者プロフィール
木村 駿:日経クロステック・日経アーキテクチュア副編集長。建設産業のDXや自然災害、原発事故などの取材を担当。著書に「すごい廃炉」(18年)、「建設DX」(20年)など
真鍋 政彦:日経クロステック・日経コンストラクション副編集長。自然災害や土木分野の取材を担当。編書に「新設コンクリート革命」(17年)、「実践版! グリーンインフラ」(20年)など
荒川 尚美:日経クロステック・日経アーキテクチュア記者。住宅分野や自然災害の取材を担当。編著に「なぜ新耐震住宅は倒れたか」(2016年)、「100の失敗に学ぶ結露完全解決」(19年)など
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