「あなたは、ダイエットをしたいと思っていますか? それは、どうしてですか?」。
「やせ礼賛の真っ只中」にある日本では、実際に太っていようがなかろうが、「ダイエット」を意識しないほうがむずかしい。ところが......。
永田利彦さんの著書『ダイエットをしたら太ります。 最新医学データが示す不都合な真実』(光文社新書)には、「ほぼ確実にリバウンド」「BMI18.5未満の死亡リスクは倍」「実は小太りが一番長生き」とある。これは一体どういうことか。
「ほとんどの場合、ダイエットは成功しません。どうしてって、ダイエットには『ダイエットすると太る』という、"不都合な真実"があるからです」
ダイエットをすると体に何が起こるのか。なぜ成功しないのか。そもそも必要なのか。健康になるのか。本書はその謎を探っていく。
「理詰め」とあるとおり、「ダイエットすると太る」メカニズム、不都合な真実の数々について、最新医学データに基づき詳しく解説されている。むずかしそうに感じるが、いざ読んでみるととっつきやすく、頭にすんなり入ってきた。
■目次
はじめに――あなたはダイエットに乗っ取られていませんか?
第1章 ダイエットしたら、太ってしまった!
・ミネアポリスで証明された"不都合な真実"
・そもそも「太っている」「やせている」って、どういうこと?
・糖質制限、ダイエットピル、腸内洗浄と、いろいろあるけれど
第2章 誰も言わなかった、ダイエットの落とし穴!
・ダイエットしたのに、なぜ太る?
・やせていると寿命が短く、認知症にもなりやすい
・ダイエットが、摂食障害の引き金になる
・ダイエットすると、子どもが肥満体質になる
第3章 ダイエットがダメなら、どうすればいいのか?
・本当に「私は太っている」のか
・"美しさ"の基準が、変わりつつある
・健康と美しさを手に入れるために
著者は本書を執筆した理由について、大学人としての研究、さらに広い臨床経験の中で「ダイエットが決して幸せをもたらさないという事実を、あまりにもたくさん見てきたから」と書いている。
願ったのとまるで違う結果になってしまった。以前より太ってしまった。心身が不調になり、気持ちが沈んでしまった。摂食障害を発症してしまった。こうしたケースがあまりにも多いのだという。
「ダイエットの真の姿を、コマーシャルでは決して語られない不都合な真実を知ることが、何よりも重要です。(中略)ダイエットが体にいいという思い込みや、ダイエットすれば幸せになれるという呪縛から解放されて、穏やかで心豊かな人生を送っていただきたいと思うのです」
米国ミネソタ大学が中高生約1900人を10年間にわたって追跡調査した結果、「ダイエットや不健康な体重コントロールを繰り返していると、何もしない場合よりも、確実に体重が増えるという事実」が判明したという。
■ダイエットすると太る4つの理由
・ダイエットが、ごく短期間の行動であること。
・『ダイエッティングサイクル』に、はまり込んでしまうこと。
・食欲をコントロールできなくなること。
・太りやすい体質になること。
ダイエットの本質は、いわば「命知らずの突撃行為」。穏やかな長期戦である「ライフスタイル変更」とは「似て非なるもの」。結局は、低カロリー・低脂質の食事、1時間程度の運動、体重測定、朝食、一貫した食事パターンの維持(羽目を外さない)という、「地道な生活を送り続けること」が重要のようだ。
最後に1つ。もしあなたが「やせること=自己実現」と思い込んでいるなら、その「自己実現」を疑ってみることだという。
「真面目な人ほど内面化した価値観に忠実で、その価値観に基づいて自己実現しようと、一生懸命努力してしまいがちです。(中略)そうした努力や競争を、ちょっと脇に置いて冷静になってみてください。そして、なりたい自分は、本当に自分のなりたい自分なのかを、改めて考えてみてください」
メディアはしょっちゅうダイエットを取り上げているし、「このままではいけない、ダイエットしなさい」とつねに自分に言い聞かせてきたが......。「ダイエットすると太る」とは、なんというパラドックス。
「摂食障害が専門の精神科医が、過剰な『やせ礼賛』文化を理詰めで斬る!」――。本書は「ダイエット礼賛」の真逆を行く、ダイエットの常識を根本から覆す1冊だ。
■永田利彦さんプロフィール
大阪市立大学大学院医学研究科修了(医学博士)。同科(神経精神医学)准教授、ピッツバーグ大学客員准教授などを経て、2013年なんば・ながたメンタルクリニック開設。医学博士、精神科専門医、精神保健指定医、精神保健判定医。Academy for Eating Disorders、Eating Disorder Research Society、日本摂食障害学会(理事長)、日本不安症学会、日本うつ病学会、日本精神科診断学会(いずれも評議員)などの学会に所属。日本摂食障害学会監修・「摂食障害治療ガイドライン」作成委員会編集『摂食障害治療ガイドライン』(2012)の代表編者の1人。摂食障害、不安障害、パーソナリティ障害、気分障害に関する論文、総説多数。
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