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誰しもが向かい合い、処理するであろう人生の葛藤を描く「風俗嬢A」

 2020年3月号から誌面をリニューアルした小説現代(講談社)。

 リニューアル後は、インタビュー記事や読み切り作品も多くなり、単号で買っても十分楽しめる構成になっている。

写真は、小説現代2021年4月号(講談社)

櫻井翔さんがドラマ「ネメシス」を語る

 小説現代2021年4月号の表紙と巻頭インタビューを飾っているのは、4月11日から日本テレビ系列で日曜日の22:30から放送の連続ドラマ「ネメシス」に広瀬すずさんとともに主演を務める櫻井翔さん。

 巻頭インタビューでは、自身が演じる探偵の役作りについてや、原作小説がある作品ならではのドラマの楽しみ方についても語っている。

30代のカップルに向けた応援小説

 読み切りの作品で目を引いたのが大木亜希子さんの「風俗嬢A」。この作品は、人生の岐路に立つ役者志望のカップルを通して、自分の生き方に向かい合うことの奥深さを描いている。職業は違えど、きっと誰しもが向かい合い、処理するであろう人生の葛藤が、この作品には凝縮されている。

 そして、男女の関係も単なる恋愛模様を描いているわけではない。例えば、作品に登場する売れない女優"平野紗英"の感情として描かれる1シーン、「目の前の男に心底情が湧き、心底冷めている」という描写などは、大人の女性にとっては日々の中で共感できる一幕なのではないだろうか。

 なお、本作については、作者の大木亜希子さんと有村藍里さんの対談も掲載されているので、合わせて読むと作品の背景なども垣間見ることができる。対談相手がなぜ、有村藍里さんなのかはネタバレになるので、本書を開いていただきたい。

読み応えのある長編や、タイムリーなミャンマー情勢も

 本号には、直木賞作家の白石一文さんの長編「我が産声を聞きに」や、ノンフィクション作家の高野秀行さんの「移民の宴 ミャンマー反クーデター編」も収録されている。

 「我が産声を聞きに」は、新型コロナウィルスと夫のがんに向き合う妻の心理に迫る、熟年夫婦の物語。

 「移民の宴 ミャンマー反クーデター編」は、高野秀行さんが、東京のミャンマー人たちの生の声を緊急取材した作品。挿入されている写真も含めて、今、まさに読んでおきたい作品だろう。


 リニューアル後の小説現代は、読みやすい文字量、親しみやすい作品が数多く収められ、小説雑誌をあまり手にしてこなかった方でも手に取りやすく、文芸の世界に入りやすい一冊。会社帰りのコンディションにも程よくマッチするのも、魅力の一つではないだろうか。


 

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