読むべき本、見逃していない?

知らなかった良書に出会う! 出版社が選んだ中小4社の作品はこれ!

つけびの村

 出版社や新聞社が、出版社を表彰するというユニークな賞がある。

 専門書を中心とする出版社108社を擁する一般社団法人梓会が毎年行っている「梓会出版文化賞」と「出版梓会新聞社学芸文化賞」だ。

 この賞は、中小出版社を対象に優れた書籍を生み出す出版活動そのものを顕彰するもの。

 2020年は全国789社余りの出版社によびかけ、そのうち76社が選考対象となった。どちらも白熱した議論が行われ選考の結果、以下の4社が受賞した。

第36回梓会出版文化賞
一般財団法人 東京大学出版会
同特別賞:株式会社 ゲンロン

第17回出版梓会新聞社学芸文化賞
株式会社 晶文社
一般社団法人 京都大学学術出版会

日本の国立大学では初めての大学出版部

 第36回梓会出版文化賞を受賞した東京大学出版会は1951年設立。当時の東京大学総長の南原繁氏の考えにより発足した、日本の国立大学では初めての大学出版部だ。従業員は35名。

 今回の選考対象となった自薦図書に『かたちは思考する―芸術制作の分析』(平倉圭 著)や『近代天皇制と東京―儀礼空間からみた都市・建築史』(長谷川香 著)などがあげられた。

 専務理事の黒田拓也氏が寄せた受賞の喜びは次の通り。

「東京大学出版会は本年3月で70周年を迎えます。そうした記念の年にこうした栄誉ある賞をいただけたことは、これまで約7,800点あまりの本会の刊行物に関わって来たすべて著者の皆さま、本会の先輩たち、書店・販売会社の皆さま、そして何より読者のみなさまの支えあってのことです」

 同特別賞を受賞したゲンロンは、従業員20名。2010年に作家で思想家の東浩紀氏により設立された。学会や人文書の常識にはとらわれない「知のプラットフォーム」の構築を目指している。

 自薦図書として、日韓並行出版された『哲学の誤配』(東浩紀 著)や『新写真論―スマホと顔』(大山顕 著)などがあげられた。ゲンロンは時間の制約のない討論などをコロナ禍の中でもオンライン配信で活動を止めることなく行ってきたことも評価された。

出版社の新たな可能性を感じさせる良書

 第17回出版梓会新聞社学芸文化賞は、朝日新聞、共同通信、産経新聞、時事通信、毎日新聞、読売新聞などの文化欄・読書欄を担当する記者によって選考が行われた。度重なる選考を経て、1社に絞るのは無理があるとし、晶文社と京都大学学術出版会の2社同時受賞となった。

 晶文社は1960年創立でサイのマークが目印の出版社だ。90年に第6回梓会出版文化賞に選ばれて以来2度目の受賞となった。

 今回はBOOKウォッチでも取り上げたノンフィクション作品『つけびの村―噂が5人を殺したのか?』(高橋ユキ 著)や、哲学者でがん患者でもある宮野真生子氏と医療人類学者の磯野真穂氏の往復書簡『急に具合が悪くなる』(宮野真生子・磯野真穂 著)などを自薦図書として挙げている。

 作品について、選考者からは「出版社の新たな可能性を感じさせる良書」という意見があった。

 代表取締役社長の太田泰弘氏は、次の通り喜びをの言葉を寄せている。

「受賞を大きな励みとして、出版の原点を忘れずに1冊1冊心を込めて作り続けていきたい」

 京都大学学術出版会は、アフリカの狩猟採集民ブッシュマンの研究者による『ブッシュマンの民話』(田中二郎 採録・解説)やフランス人研究者による『『女工哀史』を再考する―失われた女性の声を求めて』(サンドラ・シャール 著)などを自薦図書として挙げている。

 一般人には難しい「学術」を専門外の人にも関心を持ってもらえるような本づくりの巧みさも評価されての受賞となった。

 普段は手にしないジャンルの本を手にすること、新たな発見があるはず。各出版社のホームページをチェックして、読書の幅を広げてみては。

※画像は各出版社のホームページより



 


  • 書名 つけびの村
  • サブタイトル噂が5人を殺したのか?
  • 監修・編集・著者名高橋ユキ 著
  • 出版社名晶文社
  • 出版年月日2019年9月25日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数四六判・302ページ
  • ISBN9784794971555

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