この作品は、オーディオブック向きだ。永井紗耶子さんの『木挽町のあだ討ち』を初めて読んだとき、そう思った。いつか実現しないかなと期待していたら、このたびAmazonのオーディブルから、6人の豪華声優陣によるオーディオ作品として配信開始された。
本作は、芝居小屋が立ち並ぶ江戸時代の木挽町を舞台に繰り広げられる時代ミステリー小説。2023年、直木賞と山本周五郎賞をダブル受賞し、話題になった作品だ。全六幕で構成され、それぞれ異なる人物のひとり語りで物語が進む。
今回、朗読を担当したのは次の6人だ。各幕を一人ずつ分担して読んでいる。
第一幕 芝居小屋の場 関智一さん
第二幕 稽古場の場 安元洋貴さん
第三幕 衣装部屋の場 野島健児さん
第四幕 長屋の場 三石琴乃さん
第五幕 枡席の場 小西克幸さん
終幕 国元屋敷の場 小林千晃さん
「とざい、とーざい」という掛け声から始まる第一幕では、関さん演じる木戸芸者の一八が、芝居小屋を訪ねてきた若侍を相手に、あだ討ちの夜に目にしたことを滔々と語って聞かせる。「武具馬具武具馬具三武具馬具......」という舌を噛みそうな外郎売(ういろううり)の長台詞も一息に読み上げるのはさすが。スピード感があり、一気に物語に引き込まれていく。
第二幕以降も、声優陣の個性が光る。安元さんが立師の与三郎を渋い声で演じれば、野島さんは、衣装係で女形でもある蛍の声を艶っぽく表現する。ベテランの三石さん、小西さん、若手の小林さんの声も、永井さんが「この人物はこの声優さんで」と指名したのかと思うほど、見事に役にはまっている。
「令和の革命的傑作」と評される本作。読んでから聴くもよし、聴いてから読むもよし。時代小説好きの人はもちろん、講談好き、落語好きの方にもおすすめだ。
『木挽町のあだ討ち』あらすじ
ある雪の降る夜に芝居小屋のすぐそばで、美しい若衆・菊之助による仇討ちがみごとに成し遂げられた。父親を殺めた下男を斬り、その血まみれの首を高くかかげた快挙は多くの人々から賞賛された。二年の後、菊之助の縁者という侍が仇討ちの顛末を知りたいと、芝居小屋を訪れるが――。
■永井紗耶子さんプロフィール
ながい・さやこ/1977年、神奈川県出身。慶應義塾大学文学部卒。新聞記者を経て、フリーランスライターとなり、新聞、雑誌などで幅広く活躍。2010年、『絡繰り心』で小学館文庫小説賞を受賞し、デビュー。2020年に刊行した『商う狼 江戸商人 杉本茂十郎』は、細谷正充賞、本屋が選ぶ時代小説大賞、新田次郎文学賞を受賞した。2022年、『女人入眼』が第一六七回直木賞の候補作に。他の著書に『大奥づとめ よろずおつとめ申し候』『福を届けよ 日本橋紙問屋商い心得』『横濱王』などがある。
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