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滝藤賢一、今までの演技スタイルを卒業?「これからは門脇麦流で」

Hariki

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レキシントンの幽霊(Audible版)

 藤木直人さんが朗読する『ねじまき鳥クロニクル』、妻夫木聡さんが朗読する『ノルウェイの森』など、Amazonオーディブル(以下、Audible)では、著名人の声で聴く村上春樹作品を配信中。2023年9月22日に新たに配信されるのが、1996年の短編集『レキシントンの幽霊』だ。

 ナレーターは、門脇麦さんと滝藤賢一さん。2人が同じ作品に参加するのは、2014年の映画『愛の渦』、2015年のドラマ『世界はひばりを待っている』、2020年のドラマ『コタキ兄弟と四苦八苦』、2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』など、多数の作品で共演している。楽しそうに談笑しながらやって来た2人は、インタビューでも息ぴったり。収録の裏話やお互いの朗読の感想をうかがった。

門脇麦さん(左)、滝藤賢一さん(右)
門脇麦さん(左)、滝藤賢一さん(右)

初・春樹は「思ったより読みやすい」

 読書家の門脇さんは、村上春樹作品もこれまでにいくつか読んだことがあるそう。ナレーションも経験済みだが、「物語を声に出して読む」ことは仕事でもプライベートでもしたことがなかったそうだ。朗読は、普段の演技とは全く感覚が違うのだとか。

門脇さん「朗読は、『この言葉をしゃべっていてほしい声』を出していく作業、という感じですかね。声に出して読みながら、モニターヘッドホンから聞こえてくる声をどう動かすかに集中していました」

 収録されている7編のうち、門脇さんが担当したのは女性視点の「緑色の獣」「氷男」の2編。「緑色の獣」は家の木の根元から奇妙な獣が出てくるというコミカルな作品、「氷男」は氷男とその妻の繊細なラブストーリーで、それぞれ違った気分で読んで楽しめたそうだ。苦労したのは、獣のセリフ。「当たり前でですよ」「ないいじやありませんかね」など特徴のあるしゃべり方がとにかく難しく、何度もリテイクしたという。

 普段ほとんど本を読まないという滝藤さんにとっては、これが「初・村上春樹」。自分には読みこなすための読解力がないとずっと思っていたそうだが、「思っていたよりもすごく読みやすくて、イメージが膨らんだ」と嬉しそうだ。

滝藤さん「ディレクターさんには、余計なことをせず、感情を乗せないで淡々と読むように言われました。映像だとオーバーな演技を求められることが多いので、新鮮でよかったですね」

 滝藤さんが担当した表題作を、事前に試聴させてもらった。村上春樹さんが実際に体験したこととも読めるような作品で、アメリカのレキシントンで知り合った友人の家で幽霊に遭遇した一部始終がつづられている。家主のケイシーのセリフを読む滝藤さんの声がダンディーだったと伝えると、「ちょっとブランデーを飲んでる感じでね」と、茶目っ気たっぷりにジェスチャーしてみせてくれた。

滝藤さん「全体は淡々と読むんだけど、セリフのところは演技してもいいということで。本当は全編をケイシーみたいな感じで読みたかったんですよ。そうしたら、ちょっと暗いとか低いという指摘が入って。暗い話を暗く読まないで、と。朗読は明るく読んだほうがいいみたいですね」

 「麦ちゃんは感情を説明しないで想像させる女優さんだから、淡々と読むのは得意分野なんじゃないの?」と滝藤さんがパスすると、門脇さんは「私は感情を乗せてたはずなんですけど、わかんないや......」と苦笑い。それぞれ違った朗読スタイルだったようだ。

門脇さんと滝藤さんが話している様子

聴き方の可能性を広げるように

 門脇さんも、朗読する上で「表現しすぎない」ことにはこだわったという。

門脇さん「朗読する側が何か表現すると、トゥーマッチになるんです。たとえば作品の世界を1から100まで100通り想像できるとしたら、表現することで『これは36です』と決めてしまう。そうすると、本当は聴く人が30も感じられたかもしれないし、80も感じられたかもしれないのに、届くものは36だけになっちゃいますよね。淡々と、『1から100まで可能性がありますよ』と読むからこそ、聴いている人がいろんなところに飛んでいけるんです」

 朗読はあくまで橋渡し役で、自分の解釈はできるだけ入れないのだという。滝藤さんの「表現は、想像してもらうためにあえてやらないの? それとも、そもそもやりたいと思わないの?」という質問には、「あー、思わないですね」と即答。門脇さんはもともとナチュラルな演技が好みなのだそうだ。これを聞いた滝藤さんは、「オレなんかやりたいところしかないよ! 滝トゥーマッチだから」。

滝藤さん「でも今回、この朗読を通して、『やらない』という選択肢が俺の中に生まれたんだよね。だから、残りの俳優人生では『やらない』芝居をやってみようかと思ってさ。だけどここまで滝トゥーマッチでやってきたから、滝トゥーマッチを求められちゃうんだよねえ」

門脇さん「滝藤さんはそのお芝居が魅力なんじゃないですか?」

滝藤さん「滝トゥーマッチがね」

門脇さん「言わせようとしないでください(笑)」

存分に俺たちを味わって

 門脇さんにとっての滝藤さんは、「一緒にやりやすい」相手だそう。対して滝藤さんは、「麦ちゃんに引っ張られて、滝トゥーマッチはちょっと恥ずかしくなっちゃう。俺が用意してきたものはどうでもよくなって、麦ちゃんに集中できる」という。滝藤さんのいつものやり方を変えてしまうほど、門脇さんは大きな存在のようだ。

滝藤さん「今日、麦ちゃんの思考がわかってなるほどなーと思った。オーバーな表現はそもそもやりたいと思わないんだね。これからは俺もそういう考え方で臨めばいいんだ」

門脇さん「でも、滝藤さんはやれるわけじゃないですか。私はやりたくても表現できないですもん」

滝藤さん「やることは好きなんだけど、ちょっと飽きてきちゃったんだよ。ここから先はトゥーマッチ卒業。門脇麦流でいきます」

門脇さん「(笑)」

 正反対だけれど相性ぴったりの門脇さんと滝藤さん。『レキシントンの幽霊』のバリエーション豊かな7編に、2人の朗読がかけ合わさって、いろいろな味わいが楽しめそうだ。最後に、Audibleを聴く人へのメッセージをお願いした。

門脇さん「文字を読むよりも声を聴くほうが、本能的・動物的というか、ステップが小さいんじゃないかなと思います。だから、村上春樹さんの作品を読んだことがない人に、まずはAudibleを聴いてみてほしいです。また違った景色で本の世界を楽しめると思います」

滝藤さん「この朗読を聴いたら、麦ちゃんと滝トゥーをひとりじめできます。ぜひ、自分の時間を作って、心と体を休めながら聴いてほしいですね。存分に俺たちを味わってほしいです」
『レキシントンの幽霊』の書籍を持っている門脇さんと滝藤さん

■門脇麦さんプロフィール
かどわき・むぎ/1992年生まれ。東京都出身。2011年の女優デビュー以来、2015年に『愛の渦』などで第88回キネマ旬報ベスト・テン新人女優賞を受賞など確かな演技力を武器に、映画やドラマ、舞台で幅広く活躍。2018年には第42回エランドール賞新人賞や2019年に『止められるか、俺たちを』で第61回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。NHKの連続テレビ小説『まれ』でも大きな注目を集め、大河ドラマ『麒麟がくる』ではヒロインを演じた。2023年11月7日より村上春樹原作「ねじまき鳥クロニクル」の舞台が再演される。

■滝藤賢一さんプロフィール
たきとう・けんいち/1976年11月2日生まれ。愛知県出身。舞台を中心に活動後、映画「クライマーズ・ハイ」(08)で一躍脚光を浴び、以降数々のドラマ、映画、CM等で幅広く活躍。今年の出演作品に、映画「ひみつのなっちゃん。」、TVに「グレースの履歴」(NHKBSプレミアム)、テレビ朝日ドラマスペシャル「友情」(11月11日21時~)の放送が控えている。


取材・文・撮影 Hariki


  
  • 書名 レキシントンの幽霊(Audible版)
  • 監修・編集・著者名村上春樹 著/門脇麦・滝藤賢一 ナレーター
  • 出版社名(配信元)Amazon Audible
  • 出版年月日2023年9月22日

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