米国大統領選は終わったが、トランプ大統領は「選挙で不正があった」として抵抗を続けている。こうした米国大統領選の混迷に関して、朝日新聞は2020年11月26日の朝刊「論壇時評」面の「あすを探る」で、三牧聖子・高崎経済大准教授の「投票権は人権 草の根の闘い」という寄稿を掲載している。
それによると、米国ではここ数年、様々な州で低所得者やマイノリティの投票を厳しくする法律が成立、彼らの選挙権行使のハードルが上がっているという。一種の「投票妨害」だ。背景には2013年の連邦最高裁判所の判決で、黒人の投票権を保障してきた投票権法(1965年)のうち、黒人への投票妨害が広く行われていた南部の州に対し、投票に関する法律を変更する際には、連邦政府の承認を得なければならないとしていた条項が違憲とされたことがあるという。
トランプ大統領は「選挙不正」を訴えているが、黒人有権者らに対して、すでに真逆の締め付けが強化されてきたというのだ。
BOOKウォッチで紹介した『アメリカの政治』(弘文堂)でもこのことは指摘されていた。
18歳以上でアメリカ国籍があれば選挙権を持つが、実際に投票するには、有権者登録の手続きをする必要がある。18歳から29歳までの若年層や、ラティーノ(中南米からの移民と子孫)では6割を切っているそうだ。選挙権はあるものの、有権者登録をしない国民が相当数いるというわけだ。大統領選は接戦州が多かったが、いくつかの州では選挙権の行使をあらかじめ制約されていたマイノリティがいたことがうかがえる。
日本では、米国は民主主義の先進国と思われているが、三牧さんによれば、ハーバード大学などの調査で、米国の選挙の公正さは、西洋民主主義国家の中では最低レベルに近いとされているという。
BOOKウォッチでは関連して『ジョン・ボルトン回顧録』(朝日新聞出版)、『アメリカはなぜ戦争に負け続けたのか――歴代大統領と失敗の戦後史』(中央公論新社)、『アメリカと銃――銃と生きた4人のアメリカ人』(共栄書房)などを紹介済みだ。
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