読むべき本、見逃していない?

ネット小説大賞受賞! 高校生のほろ苦い青春群像劇

それでも僕らは、屋上で誰かを想っていた

 小説を書くことに興味はあっても、ハードルが高くてはじめの一歩が踏み出せない。ましてや作品を応募するなどもってのほか! という人は多いのではないだろうか。しかし、ネットで投稿できるとなれば、ぐんとトライしやすくなるだろう。

 日本最大級の小説投稿サイト「小説家になろう」と提携して開催されるネット小説大賞。文字数などに制限はなく「どなたでも楽しめ、評価を得られるコンテスト」を目指して運営されている。過去最大応募作品数は一万超といい、書きたい人にとって格好の場となっている。

 そんな第7回ネット小説大賞受賞作は、応募総数9,376作品から選ばれた櫻いいよさんの本書『それでも僕らは、屋上で誰かを想っていた』(宝島社文庫)。高校二年生の男女五人が屋上で共有した特別な時間を、個々の視点から描く青春群像劇。

屋上で過ごすのが五人の日常だった

 まず、メインとなる五人を紹介しよう。

■蒼汰(そうた)......金髪。穏やかで笑みを絶やさない。

■小毬(こまり)......純朴。蒼汰の幼馴染。蒼汰に告白したことがある。

■由宇(ゆう)......クールで大人びている。大学生の彼氏がいる。

■漣(れん)......イケメン。教師から不良扱いされている。

■智朗(ともろう)......童顔。生徒会長。学年トップの成績。

 本書は「僕等の空」「赤い夕焼け」「黄色の雷」「黒い夜空」「灰色の雲」「水色の雨」「白い朝」の七話からなる。蒼汰、小毬、由宇、漣、智朗と語り手が交代していき、再び蒼汰に戻る構成。

 見た目も性格も成績もバラバラにもかかわらず、一年生からずっと、五人は毎日屋上に集まって過ごしている。それが五人の日常だった。ところが、蒼汰がある女子生徒から告白されたことをきっかけに、五人の関係は少しずつ変化し、保たれていたバランスが崩れていく――。

 当たり前だった五人で集まる時間が、当たり前ではなくなっていく。その過程を、五人の内面の奥深くにある葛藤、嫉妬、怒り、孤独をまざまざと描きながら追っていく。「それぞれの秘密に触れられた時、本当の青春が動き出す」――。五人は「秘密」を抱えながらも、屋上で誰かを想っていた。読了後に改めてタイトルを見ると、たしかにそのとおりだった。

 なお、五人のうち三人はいわゆる「不良」寄りのタイプ。昼休みだけでなく授業をサボって屋上で過ごすこともあり、そんなに授業ってサボれるものだっけ? などと心配になる。しかし、それぞれが語り手を務める話を読むと、軽率に見える行動の裏でどんな葛藤を抱えていたのかがわかり、等身大の彼らが浮かび上がってくる。

この想いにどんな名前をつけるのか

 蒼汰と小毬はただの幼馴染なのか、恋愛なのか、家族愛なのか。二人が相手に対する想いにどんな名前をつけるのか。蒼汰と小毬の関係が、本書の軸となっている。

 蒼汰はある経験から、恋愛を信じられなくなっていた。どれほど小毬が特別な存在であろうとも、恋愛を選ぶことができない。一方の小毬は、そんな蒼汰の葛藤に気づいている。もう一度想いを告げたら今度は突き放されるかもしれないと思い、このままでいいのだと自分を誤魔化している。その結果、蒼汰と小毬が選んだのは、それぞれ別の相手だった―――。

 もっと単純に好きなら好きと言えばいいのに、なんだかややこしい......というのが評者の正直な感想だ。ただ、高校を女子校で過ごした評者は、その年齢の男女の友情や恋愛の経験がスッポリ抜け落ちているからそう感じるのかもしれない。実際はそうとんとん拍子に事は運ばず、彼らのように感情が絡まってしまうものなのかもしれない。青春の疑似体験をしながら、そんなことを思った。

 「はじめから、屋上で過ごしたあの時間はとても脆く、とても歪だった。そうしたのは僕たちだ。(中略)結局、みんな現実から目をそらして縋りついていただけで、全部まやかしだったんだ。」
 「あの苦しさもあの涙もあの悲しみも、すべてが青春だった。そう思えるときが、いつか、くるのだろうか。そう言ってまた笑い合えるような日が、俺たちには訪れるのだろうか。この苦しさもこの涙もこの悲しみも、今の俺を壊してしまいそうなほど痛むのに。」

 どれほど一緒に時間を過ごしても、どれほど好きだと想っても、いつまでも同じ関係でいることはむずかしい。あの時間はなんだったのかと思うこともある。本書は読者が自身の経験を振り返りながら読める、ほろ苦い青春小説だ。

 櫻いいよさんは奈良県出身、大阪市在住。2012年『君が落とした青空』(スターツ出版)でデビュー。以降、ライト文芸・児童書などを中心に執筆している。本書は「小説家になろう」に掲載されていたものを、改題・改稿のうえ書籍化したもの。

  • 書名 それでも僕らは、屋上で誰かを想っていた
  • 監修・編集・著者名櫻 いいよ 著
  • 出版社名株式会社宝島社
  • 出版年月日2020年1月23日
  • 定価本体680円+税
  • 判型・ページ数文庫判・343ページ
  • ISBN9784299001061

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