読むべき本、見逃していない?

皇居内に何匹のタヌキが生息していると思う?

  • 書名 皇室ファイル
  • サブタイトル菊のベールの向こう側
  • 監修・編集・著者名共同通信社会部 編
  • 出版社名共同通信社
  • 出版年月日2019年10月12日
  • 定価本体1400円+税
  • 判型・ページ数四六判・141ページ
  • ISBN9784764107137

 平成から令和に代替わりして各種行事が続いている。皇室・天皇がらみの出版物も目立つ。本書『皇室ファイル: 菊のベールの向こう側』(共同通信社)もその一つ。共同通信社会部が「皇室ナビ」というタイトルで加盟新聞社に配信した記事を加筆修正してまとめなおしたものだ。「菊のベール」に包まれた世界への道案内書だという。

100余りの項目が並ぶ

 本書は基本的に、一つのトピックについて一枚の写真と300字ほどの文章でまとめたミニ解説集だ。あいうえお順に、「赤坂御用地」「秋篠宮家」「熱田神宮」「伊勢神宮」「一般参賀」「歌会始の儀」「歌声の響」「内舎人」「園遊会」など、全部で100余りの項目が並んでいる。公式行事、特有の用語、皇居内の施設、歴史や日常生活、支える役人の職種、会議や法律など各方面に目配りしながらピックアップされている。

 「皇居のタヌキ」などというのもある。都心とはいえ、自然が残る広い皇居内にタヌキが生息していることは知られている。十数匹いるそうだ。上皇の研究テーマといえば、ハゼが有名だが、皇居のタヌキも研究対象にされているそうだ。2009年から約5年間、皇居内で計164個のタヌキのふんを集められ、顕微鏡で分析、主要な餌として8種類の植物を季節ごとに食べていることを突き止められた。「皇居におけるタヌキの果実採食の長期変動」という論文を国立科学博物館の研究員らとともにまとめ、16年10月に発表された。タヌキの生態に関する共著論文も08年に発表されているそうだ。公務で超ご多忙の中での研究。改めて感心する読者が多いのではないだろうか。

 「忘れてはならない四つの日」「ゆかり発言」「陛下と『水』」「忠恕」など、少し角度の違う話も盛り込まれている。カット写真の中には、「皇太子時代の大正天皇の訪韓写真」(1907年)など珍しいものもある。韓国の皇太子も写っている。

「戦争責任言われ『つらい』」

 本書のもう一つの特徴は、共同通信社の皇室報道に取り組む体制がよくわかることだ。同社の編集局では2016年8月8日、平成の天皇によるビデオメッセージを受けて、宮内庁を受け持つ社会部とは別に、元宮内庁担当記者で固めた編集局直轄の「皇室取材チーム」を発足。さらに政治部、社会部による「改元取材チーム」も生まれ、ストレートニュースは社会部、特集記事は皇室取材チーム、さらに改元取材チームと、三位一体で取り組んできたという。

 企画や特集記事は、「象徴考」「皇位継承 古の営み」「記者が見た両陛下」「皇室クロニクル」「皇室と憲法」など多数に及び、本書のもとになった「皇室ナビ」もその一つ。巻末に6人の担当記者名が並ぶが、そのほかにも数人の、宮内庁担当記者の一文が本書内に挿入されている。皇室報道に、共同通信がいかに力を入れているかが伝わってくる。

 宮内庁担当というのは、マスコミ界でも取材競争の激しい職場だ。近年の担当記者では、宮内庁長官の「富田メモ」報道で2006年度新聞協会賞を受賞した日経新聞の井上亮記者、「天皇陛下『生前退位』の意向」をスクープし、16年度新聞協会賞を受賞したNHKの橋口和人記者らが敏腕で知られる。

 共同通信社にはかつて、高橋紘さんというベテランの皇室担当記者がいて、『象徴天皇』など多数の著書を残した。今は記者もすっかり代替わりして総力戦ということなのだろう。同社も18年8月23日の朝刊用に「戦争責任言われ『つらい』昭和天皇85歳、心情吐露」のスクープ記事を配信、加盟41社が一面トップ記事として掲載した。その詳細は『昭和天皇 最後の侍従日記』(文春新書)として刊行されている。

 BOOKウォッチではこのほか関連で、『天皇の戦争宝庫――知られざる皇居の靖国「御府」』(ちくま新書)、『昭和天皇の地下壕 「(吹上)御文庫附属室―大本営会議室(地下壕)」の記録』(八朔社)、『新版  古代天皇の誕生』(角川ソフィア文庫)、『奪われた「三種の神器」――皇位継承の中世史』(講談社現代新書)、『水運史から世界の水へ』(NHK出版)、『旅する天皇――平成30年間の旅の記録と秘話』(小学館)、『戦前不敬発言大全』(パブリブ刊)、『天皇のお言葉 明治・大正・昭和・平成』(幻冬舎新書)など多数紹介している。

 共同通信記者の本では『自衛隊の闇組織――秘密情報部隊「別班」の正体』(講談社現代新書)、『写真で見る日めくり日米開戦・終戦』(文春新書)、『私が愛した映画たち』 (集英社新書)なども紹介している。

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