読むべき本、見逃していない?

40年間、ずっと人生相談に答えてきた鴻上尚史さん

  • 書名 鴻上尚史のほがらか人生相談
  • サブタイトル息苦しい「世間」を楽に生きる処方箋
  • 監修・編集・著者名鴻上尚史 著
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2019年9月30日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・250ページ
  • ISBN9784022516312

 人はなぜ他人の人生相談を読むのだろう? 相談者の悲惨な境遇や厳しい状況を読み、「世の中にはこんな人もいるんだ」と自分をなぐさめるため? それとも、ふざけた相談内容にいきり立ち、「バカヤロー、もっとまじめに生きろ」と罵倒し、カタルシスを得るため?

媒体ごとに違う人生相談

 人生相談には媒体ごとに性格がよく現れると思う。読売新聞家庭面の人生相談には、悩めるまじめそうな主婦がよく登場するし、朝日新聞beには、土曜日の別刷りという性格のためか、ちょっと明るくて奇妙な相談が載っている。TBSラジオには、どろどろの不倫に苦しむ女性や金銭問題で煮詰まった人が出てきて、回答者から厳しく詰問、時には罵倒される。ネットでも聴けるので、ファンも多いようだ。

 当たり前のことだが、肝心なのは回答者のパーソナリティーだ。大抵は複数いる回答者のあの人に答えてもらいたい、と投稿し、編集者やディレクターは、ぴったりとはまったものを文字や声にする。だから、回答者ひとりというのは、とても大変なことだと思う。

 本書『鴻上尚史のほがらか人生相談』(朝日新聞出版)は、その大変なことを作家・演出家の鴻上尚史さんが、ひとりでやっている人生相談を書籍化したものだ。月刊誌「一冊の本」(朝日新聞出版)に連載、それをネットのAERA dot.(アエラドット)で1週間に1本の割合で紹介、5000万PVを突破した人気人生相談である。

 本書にはその中から28の相談と回答が収められている。毎回、「神回答!」と評判になっているそうだが、いくつか紹介しよう。

男がモテるには?

 「そこそこのスペックだと思うのに、恋は連敗。モテるにはどうしたらいいですか?」(27歳・男性)

 鴻上さんは、モテない理由は二つあるという。ひとつは「とてもいけてない部分」がある場合。グチをこぼすとか、陰口が好きだとか、「この人と一緒にいたくない」と思わせる理由だ。

 そうでない場合は、「いいポイントが何もないからだ」。このケースなら、「こうなりたいというモテる男をまず見つける」ようにアドバイスしている。「万人に通じるモテポイント」なんてない。あるのは、個別の真実だと。

 身近な先輩、友人でそういう人がいたら、日常の話し方、女性に対する接し方、仕事のやり方、食事の仕方、遊び方を真似ろという。そうやって、こつこつとモテポイントを足してゆくのが、時間はかかるが、一番、確実な方法だと、書いている。

子どもに手をあげないようにするには?

 子どもに自分がいずれ手をあげるのでは、と恐れる女性からはこんな相談も。

 
「4歳の娘が可愛くありません。怒鳴ったり、手をあげたりする前にお知恵を貸して下さい」(41歳・女性)

 この相談には、とても長くていねいに答えている。まず、赤ん坊と違い、4歳になり、なまじ言葉が通じ始めると、相手に自分と同じレベルの理屈が通じると思い、理不尽さを感じるようになる、と指摘。その上で、まずエネルギーが必要だと。ちゃんとした睡眠と精神的余裕がありますか? と問う。そのためには一人になれる時間がいるから、公的サポート、家族、友人、民間サービス含めて、なんとか方法を見つけて下さいとアドバイス。

 さらに悩みを理解してくれる人、話せる人がいなかったら、ネットを活用してと。

 その上で、本題に入る。まず、「子育てをがんばらないこと」。「うまく家事や子育てを手抜きしながら、娘さんと接して下さい。その方がきっとうまくいくと思います」。

演出家だから出来た人生相談

 「専業主婦の妻が、突然働きたいと言いだしました。突然の方向転換はルール違反じゃないでしょうか」
 「SNSを辿って、彼女が整形していたことに気づいてしまいました。なんだか騙された気分です」
 「今年入籍したばかりの妻が、酒を飲むと暴言をはきます」......。

 28の相談は、多岐にわたり実にさまざまだ。回答は本を読んでもらうことにして、鴻上さんは、なぜスムーズに答えることが出来るのか? 「あとがきにかえて」にその秘訣が書いてある。「正直に言うと、そんなに大変ではありません。それは、僕がずっと演劇の演出家をしているからだと思います」。

 劇団員から実にいろんなことを相談されたという。「まるで自分がゴミ箱(正確に言えば『痰壺』)になったような気持ちになったこともありました」。そこで気付いたのは、「人は、他人を説得する方法で説得されやすい」ことだった。情熱的な人にはそのように、論理的な人にはそのように、と使い分けた。

 演劇という人間と人間がぶつかる場で、観念的でも理想論でも精神論だけでもなく、「具体的で、実行可能な、だけど小さなアドバイスをずっと探してきた」成果だという。

 結果的に、「僕は約40年間、ずっと人生相談に答えてきた」ということみたい、だと結んでいる。優しく相談者に寄り添った回答を読むと、心が洗われる思いがする。5000万PVという支持の理由がわかった。雑誌とネットでの連載はいまも続いている。

 BOOKウォッチでは、鴻上さんが書いたノンフィクション『不死身の特攻兵』(講談社現代新書)を紹介済みだ。

 

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