大学時代に好きだった人と、社会人になって再会した。爽やかで優しい人気者だった彼は、どっぷり「陰謀論」にハマっていた。それでも彼を愛せますか?
斜線堂有紀さんの恋愛短編小説「君の地球が平らになりますように」が、集英社公式noteで全文公開されている。
主人公の待﨑小町は、大学のボランティアサークルで一緒だった東壱船が好きだった。でも、見た目が爽やかで性格も真面目で、誰にでも優しく人気がある東は、地味で冴えない小町にとっては手の届かない存在だった。
大学を卒業して5年。サークルの同窓会をきっかけに、小町は、東の現在を知る。「陰謀論」にどっぷりとハマって、同期たちに避けられているというのだ。東は「海外から輸入される食品には毒が入っている」「水は一度煮沸させて飲まないと危険」といった考えを信じ、"気づき"を広める「自葎会」という団体に所属していた。
同窓会で、東は妊娠している同期に「アメリカ産の牛肉は危ない」「ジンジャーエールも駄目だ」と説教し、トラブルになってしまう。
「やばすぎ。あれ何? 東マジでおかしくなっちゃったわけ?」
「そーそー。だからアカウント見んの面白いよって言ってたじゃん」
そう東を噂する同期たちをよそに、小町は考えを固める。今なら、東の恋人になれるかもしれない。小町は東の隣に座り、こう伝えた。
「私は東くんが正しかったと思うよ」
ミステリのジャンルでデビューした斜線堂さんが書く恋愛小説は、「胸キュン」「切ない」といったラブストーリーとは大きく趣が異なる。一途な愛情は暴走し、一線を越え、絡まり、そして......。果たして、小町は東を愛しきれるのか。美しいだけではない「愛」の一面にヒリヒリする。近日中にさらにもう1篇、短編の公開が予定されているそうだ。
斜線堂さん初の恋愛小説集である最新刊『愛じゃないならこれは何』(集英社)も、ヒリヒリする愛の暴走に満ちた傑作揃いだ。
「ミニカーだって一生推してろ」
28歳の地下アイドル・赤羽瑠璃は、男の部屋のベランダから飛び降りた。男といっても付き合っているわけではなく、瑠璃のファンの一人だ。瑠璃は彼のストーカーをしている。なぜこんなことになったのか、話は4年前にさかのぼる。
「健康で文化的な最低限度の恋愛」
美空木絆菜は、会社の新入社員・津籠の気を引くため、彼の趣味である映画やサッカーに、生活を犠牲にして一生懸命話を合わせていた。そして今、絆菜は孤独に山の中で死にかけている。どうしてこんなことに。
など、"恋愛の地獄"を描いた5篇が収録されている。こんなの、現実じゃ絶対にありえない! でも、もしかしたら私もこうなるかも......。そんな紙一重を描いたキケンな作品たちに、あなたもどっぷりハマるはず。
【著者略歴】
斜線堂有紀(しゃせんどう・ゆうき)
秋田県出身。2016年、第23回電撃小説大賞《メディアワークス文庫賞》を『キネマ探偵カレイドミステリー』にて受賞、同作でデビュー。『コール・ミー・バイ・ノーネーム』『恋に至る病』『楽園とは探偵の不在なり』『廃遊園地の殺人』など、ミステリ作品を中心に著作多数。最新刊『愛じゃないならこれは何』は、著者初めての恋愛小説集。
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