眞子さんと小室圭さんの結婚は、皇室史上類を見ない形で国民の注目を集めた。真偽不明のおびただしい情報、懐疑的な声。天皇陛下(当時皇太子)と雅子さま、秋篠宮殿下と紀子さまの祝福ムード一色だった結婚とは、まるで違う風向きだった。
異例の騒動のなかで、眞子さんの父である秋篠宮殿下は、いったい何を思っていたのか。以前から秋篠宮夫妻と親交のあるジャーナリスト・江森敬治さんが、マスコミでは報じられない秋篠宮殿下の素顔を、『秋篠宮』(小学館)という一冊の本にまとめた。取材を開始した2017年6月から脱稿する2022年1月末までの間に、江森さんが秋篠宮邸と御仮寓所へ足を運んだ回数は、なんと37回。取材するなかで見えてきたのは、皇族である前に「一人の人間」、あるいは「一人の父親」として葛藤する秋篠宮殿下の姿だった。
秋篠宮殿下と江森さんに親交が生まれたのは、紀子さまと江森さんの妻が学習院で知り合いだったことがきっかけ。秋篠宮夫妻が新婚の頃に初めて会って以来、個人的な付き合いが31年以上続いているという。
秋篠宮殿下の人柄について、江森さんはあるエピソードを挙げている。皇族の誕生日前には毎年、記者会見が開かれ、この一年を振り返っての感想などを記者たちから求められる。結婚から数年経ったあるときのこと、秋篠宮殿下は江森さんに、困った顔でこう話しかけてきたそうだ。
「漠として一年の感想と言われても困ります」
皇族という立場で一年の感想を聞かれるならば、その年に起きた災害のお見舞いや、国際大会での日本選手の活躍の祝福など、国民に向けたメッセージが求められる。しかし、私たちが一個人として一年の感想を尋ねられたら、確かに困ってしまうだろう。よほど大きなイベントやトラブルがない限り、平凡な日々が一年間続いただけなのだから。
当時、秋篠宮殿下はまだ二十代。「秋篠宮」という特別な身分にある自分と、一人の若者にすぎない自分とのはざまで、懊悩していたのかもしれないと江森さんは述懐する。
「皇族である前に一人の人間である」。秋篠宮殿下の人生には、こうした規範ともいえるものが一貫してあるのだと、江森さんは言う。
「皇族である前に一人の人間である」。この姿勢は、長女の結婚についても同じだった。江森さんが、秋篠宮殿下の本心を確かめるため、「今回の結婚に反対された、ということはありませんか?」と尋ねると、殿下は「反対する理由はありません」ときっぱり答えたという。
「憲法には『婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立する』と書かれています。私は立場上、憲法を守らなくてはいけません。ですから、二人が結婚したい以上、結婚は駄目だとは言えません」
さらに江森さんは、小室圭さんが定職についていないという報道があることについて尋ねた。当時小室さんは、弁護士の指示のもとで法律事務を補佐するパラリーガルとして働いており、年収は300万円ほどではないかと懸念する記事もあったという。しかし秋篠宮殿下は、江森さんを不思議そうに見て、「いまのお仕事が定職ですよ」とだけ、さらっと答えたそうだ。
秋篠宮殿下の発言からは、「皇族だから」「こう報じられているから」といったバイアスなしに、一人の人間として考え、冷静に判断を下す、とても誠実な人柄がうかがえる。このほか、江森さんは本書で、以下のような殿下の言葉を伝えている。
「二人はそれでも結婚しますよ」
「最近はSNSでの情報拡散も多々あります。かなりけしからん記述も見られますが、それらまで含めて対応するのは、とてもできることではありません」
「ある一定の年齢を超えた時期に、余生を大事にすることは、それが天皇であっても同じ人間として人間的に生きる権利という観点からも大切なことではないかと思いました」
「私の『自由』は、頭の中の自由が一番大切になります」
理知的、客観的、哲学的。秋篠宮殿下の言葉からは、こんな言葉が思い浮かぶ。本書を通して、テレビ画面越しに見る「皇族」の秋篠宮像だけでなく、秋篠宮という「一人の人間」の素顔に触れてみてはどうだろうか。
【目次】
はじめに
第一章 混迷
第二章 聖家族
第三章 秋篠宮家
第四章 令和を迎えて
第五章 一人の人間として生きる
第六章 問題提起
第七章 憲法のもとで
おわりに
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