人は、どうして太ってしまうのか。意志が弱いから？ そうではない。痩せられないのはあなたのせいではなく、脳が「糖質中毒」に侵されているからだ。
現代社会ではならないほうが難しいという、「糖質中毒」。この中毒の正体と、「糖質中毒」から脱して効果的に痩せる方法を、糖尿病専門医の牧田善二さんが解説している。その本が、『糖質中毒 痩せられない本当の理由』（文藝春秋）だ。
糖質中毒。それは、タバコやギャンブルの中毒のように、糖質が欲しくて欲しくてたまらない状態だ。多くの人は、自分が糖質中毒であることに気がつかない。なぜならこの場合の「糖質」には、糖と聞いてまず思い浮かぶお菓子やジュースだけでなく、果物や、ご飯・パン・麺などの炭水化物もすべて含まれるからだ。
甘い砂糖も炭水化物も、体のなかでは同じブドウ糖に変わる。このブドウ糖が私たちを太らせ、健康に害を与えている。
糖質が肥満をまねくメカニズムを簡単に説明しよう。まず、糖質はほぼ100％吸収される栄養素だ。そのうち必要な分は筋肉や肝臓に貯蔵されるが、余った糖質は、脂肪細胞のなかに蓄積される。過剰に糖質を摂れば摂るだけ、どんどん脂肪が増えていくのだ。
「脂肪」と言うくらいだから、脂質のほうが太りやすいのではと思う人もいるだろう。しかし実は、脂質は肥満にはつながりにくい。脂質は細胞膜などの材料としてどんどん消費されるうえに、吸収率が悪い。むしろ私たちの平均脂質摂取量は、厚生労働省が推奨している摂取量に足りていないのだ。カロリーを気にする人も少なくないが、カロリーには糖質のエネルギーも、タンパク質や脂質のように摂っても太らないエネルギーも含まれるので、カロリーの数字も太る・痩せるには関係がない。
私たちを太らせるのは、糖質ただ一つだ。
次に、人々が糖質中毒におちいる理由をみていきたい。糖質を摂ると、まず血糖値が急激に上がる。すると、血糖値を下げるためにインスリンが大量分泌され、今度は血糖値が急激に下がる。その結果、また血糖値を上げようとして、糖質がもっと欲しくなるのだ。
また、エネルギー源としての糖質が貴重だった大昔の名残で、私たちの脳の「報酬系」には、「糖質をどんどん摂れ」という指令が組み込まれている。しかし糖質が豊富な現代社会で、その指令に従って食べていくと、あっという間に糖質中毒になる。
糖質の摂りすぎは肥満だけでなく、糖尿病や高血圧などの生活習慣病や、老化の促進もまねく。健康を長続きさせるために、ぜひ早めに糖質中毒に気づいて手を打ちたい。
では、糖質中毒を治すにはどうすればいいのか。それには「血糖値を上げない食べ物」と「血糖値を上げない食べ方」を知る必要がある。
糖質を含んだあらゆる食品のなかでも、炭酸飲料やジュース、砂糖入りの缶コーヒーなど、液体がもっとも危険だ。液体は胃で消化する必要がなくすぐに小腸まで運ばれるので、猛烈なスピードで血糖値が上がる。牧田さんは、甘い飲み物を「悪性度ナンバー1」「悪魔の食品」とまで呼んでいる。糖質中毒を治したいなら、甘い飲み物は決して飲んではいけない。
また、「カロリーを抑えるために、おかずなしでパンだけ食べる」という人がいるかもしれないが、実は、炭水化物単体で食べるのは最悪。では、どんな食べ方が効果的なのだろうか。書籍で確認してみてほしい。
ちなみに、糖質中毒で太ったケースで死亡率が上がるのは、肥満度を表す「BMI」の数値が27を超えたときだそう。BMI27の体重は、以下の式で出すことができる。
身長（メートル）×身長（メートル）×27
たとえば、身長160㎝の人なら、1.6×1.6×27＝69.12㎏となる。
算出した数値よりも、実際の体重が重かったあなたは要注意。あなたの未来のために、今すぐ糖質中毒対策を実践してほしい。
■牧田善二（まきた・ぜんじ）さんプロフィール
糖尿病専門医。AGE牧田クリニック院長。医学博士。1979年、北海道大学医学部卒業。地域医療に従事したあと、ニューヨークのロックフェラー大学医生化学講座などで糖尿病合併症の原因であるAGEの研究を約5年間行う。1996年より北海道大学医学部講師。2000年より久留米大学医学部教授を経て、2003年に糖尿病をはじめとする生活習慣病、肥満治療のための「AGE牧田クリニック」を東京・銀座に開業。延べ20万人以上の患者を診ている。『医者が教える食事術』『医者が教えるダイエット』『医者が教える最強の解毒術』『人間ドックの9割は間違い』など著書多数。
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