家族のために作る料理の楽しさ、喜びが伝わってくる平野レミさんのエッセイ集『おいしい子育て』(ポプラ社)が2月16日に出版される。二人の息子さんの子ども時代のこと、育児や仕事への向き合い方、レミさん流料理哲学には、家族への愛がギューッと詰まっている。
その息子さんたちの妻である、食育インストラクターでモデルの和田明日香さん、女優の上野樹里さんとの「和田家の嫁姑鼎談」も収録。レミさんが和田誠さんと出会って1週間後にスピード結婚した話に始まり、三者三様の結婚エピソードが、笑いとツッコミを交えて明かされる。
「お腹すいたー!ごはんまだ~?」と家族に言われると、「どうして人間はおなかが空くのだろう」と恨めしく思うことがある。レミさんの『おいしい子育て』は、そんなうつうつとした気持ちを吹き飛ばしてくれ、料理がもたらす家族の幸せと喜び、楽しさに気づかせてくれる。
お料理は、むずかしく考えるとめんどうですが、ままごと遊びの延長だと思えば、こんなに楽しいものはありません。お料理の本のとおりではなく、新しいこともやってみる。食べられるものを組み合わせるんだから、失敗したって平気です。(「料理は遊び感覚で」より抜粋)
レミさんにとって台所は、「朝からトントントントンとにぎやかな音がしたり、みそ汁の湯気がフワーッと上がっていたり、おいしい匂いがただよっていたりして、家中でいちばん元気であったかい場所」。
本書には、「誰かのために、おいしいものを」という気持ちがレミさんを料理に向かわせてきたことが綴られている。「子どもたちからもらった、たくさんの楽しさやうれしさが、私のからだの中でエネルギーに変わっているような気もします」という子育て中のエピソードの数々は、子育てに忙しい思いをしている人の気持ちをすーっと和らげてくれる。
プロレスごっこが大好きだったという二人の息子さん。ロックバンド「トライセラトップス」でボーカルとギターを担当する長男の唱さんは、上野樹里さんと、自身が立ち上げた会社でキッチンウェアの企画デザイン、アプリ開発などを手掛ける次男の率さんは、和田明日香さんと結婚した。
にぎやかになった和田家の様子がよくわかる、レミさんと二人のお嫁さんとの鼎談は、『文藝春秋』2016年10月号の「和田家の嫁姑全員集合!」から転載、加筆・修正されたものだ。
樹里さんは対談の数カ月前に和田家のメンバーになったのだが、嫁姑、兄嫁という垣根はなく、3人がフラットに語り合っている。
レミさんがこのときに初めて知ったことがある。それは、料理を教えたことも、台所仕事を手伝ってくれたこともなかった二人の息子さんが、家庭では率先して料理をしていることだ。しかも、明日香さんも樹里さんも、夫が料理上手だと口を揃える。その理由は、ぜひ本書で確認してほしい。
また、レミさんは息子が結婚するまで上野樹里さんのことを知らなかった。樹里さんもレミさんのことをそんなに知らなかったという。今は食育インストラクターとして活躍する和田明日香さんも、結婚したときには、料理のこともレミさんのことも知らなかった。すごい人だと気づいたら料理のことを聞けなくなり、「キャベツとレタスは一緒だと思っていた」と告白できたのはレミさんの本のレシピを一通り作ってみてからだった......なんてエピソードも披露されている。
平野 そう。で、「これは大変!」となって実習が始まったのよね。だって、シジミがアサリになってアサリがハマグリになるって、ずっと出世貝だと思ってたんだから(笑)。それが今じゃ食育の資格も取って、私にお説教するのよ。 (「和田家の嫁姑鼎談 平野レミ×上野樹里×和田明日香」より)
そんな面白エピソードとともに、レミさんの料理が和田家の絆をつくってきたこと、それが息子さん二人にも受け継がれていることがわかる、とても奥行きのある素敵な鼎談だ。
本書に掲載されているレシピから、「豆腐となすのピッツァ」を作ってみた。休日のブランチメニューに選んだのだが、家族には大好評だった。作り方を本書から紹介する。
豆腐となすのピッツァピザのベースを豆腐にしたから、たくさん食べても太らない、楽しいピザです。
【材料】 木綿豆腐1丁、なす1個、ベーコン2枚、トマト小1個、サラダ油適量、ピザ用チーズ50g、塩、こしょう各少々 【作り方】 ① 豆腐はペーパータオルに包んで600Wの電子レンジで1分加熱。さらに重石をして十分水切りする。 ② なすは薄い輪切り、ベーコンは一口大に切り、サラダ油少々でしんなりするまで炒める。 ③ ①を長さ半分にしてから薄くそぎ切りして、耐熱容器に並べて塩こしょうする。 ④ ③にトマトの薄切り、②のベーコン、なすをのせてチーズを散らし、オーブントースターで焦げ目がつくまで焼く。あれば、生バジルか乾燥タイムを散らす。
本書は1997年に出版された『笑顔がごちそう』に大幅な加筆・修正がされたもの。その時は、息子さんが子どもの時に描いた絵が挿絵として掲載された。
『おいしい子育て』は二十五年前に出た本をリニューアルしたものです。夫の和田さんの絵を新たに載せて、素敵な本になりました。和田さんは天国に旅立ってしまったけれども、また和田さんが地上に舞い降りてきてくれたような気持ちです。(「はじめに」より)
子育ての思い出だけでなく、レミさんと和田誠さんの素敵な夫婦愛も詰まっている。おうちごはんは夫婦、親子、そして家族の絆をつくってくれる、とても大切なもの。家族で囲む食卓をもっと慈しみたいと思える一冊だ。出産のお祝いに贈るのもおすすめ。
目次は下記の通り。
はじめに 料理は遊び感覚で 特別な日を作ろう ごちそうおにぎり 十二時すぎのシンデレラ 野菜はえらい 魚もえらい 寒い日はあったかい おやつの時間 ★和田家の嫁姑鼎談 平野レミ×上野樹里×和田明日香
■平野レミさんプロフィール
料理愛好家、シャンソン歌手。主婦として料理を作り続けた経験を生かし、NHK「平野レミの早わざレシピ」などテレビ、雑誌を通じて数々のアイデア料理を発信。また、レミパンやエプロンなどのキッチングッズの開発も手がける。著書に『ドレミの子守歌』(中央公論新社)、『新版平野レミの作って幸せ・食べて幸せ』(主婦の友社)、『家族の味』(ポプラ社)など多数。
■和田誠さんプロフィール
グラフィックデザイナー、イラストレーター。1959年多摩美術大学卒業、ライトパブリシティに入社。68年からフリー。77年より40年余り「週刊文春」の表紙を担当。74年講談社出版文化賞ブックデザイン賞受賞。89年ブルーリボン賞監督賞、94年菊池寛賞、97年毎日デザイン賞、2015年日本漫画家協会賞特別賞。受賞多数、著作は200冊を超える。19年逝去。
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