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コロナにうんざりしたら読む本。25カ国のほっこり話まとめました

コロナの世界を照らす50のやさしい物語

 「知恵と勇気とユーモアでコロナと共存していく」――。

 片野優さん、須貝典子さんの共著『コロナの世界を照らす50のやさしい物語』(宝島社)は、コロナ禍の25カ国ほっこりエピソード集。

 「病院編」「家族編」「恋愛編」「仲間編」「旅行編」「仕事編」「寄付編」「商品編」「飲食店編」「ステイホーム編」「政策編」の構成で、国内外のSNSやメディアで取り上げられた50のエピソードを紹介している。

■隔離期間中のデートの方法(アメリカ)
■恋人に会うため水上バイクで島へ不法侵入~禁固四週間(イギリス)
■ウツウツした時代にウケる「文豪缶詰(宿泊)プラン」(日本)
■世界一高価なマスクは一億六〇〇〇万円!(イスラエル)
■カナダ政府によるヒューマンな在宅勤務の基本原則(カナダ) etc.

コロナ禍を笑い飛ばすようなSNS

 はじめに、セルビアに暮らす著者の体験を書いている。

 ヨーロッパではイタリアが最初にロックダウンに踏み切った。"対岸の火事"と思っていたが、やがてセルビアでも緊急事態宣言が発動された。2カ月間、スーパー、食料品店、薬局以外はすべて閉店。不要不急の外出禁止。さらに、金曜18時から月曜5時までの外出禁止令も。

 「そんな不自由な暮らしにうんざりした頃、心を癒してくれたのがコロナ禍を笑い飛ばすようなSNSだった」

 今年3月、著者はとうとう新型コロナウイルスに感染。「なんとも言えない気分の悪さが普通の風邪やインフルエンザとは違う」と感じたそうだ。

 「笑いや感動を共有することが孤独な隔離生活中の喜びであり、生きる希望となった。(中略)日本の方々にも元気が出る物語の数々をシェアできたらと思い、本書を上梓するに至った」

"覆面アーティスト"異例のメッセージ

 ここでは、とりわけ「へえ!」となったものを紹介しよう。

■"覆面アーティスト"が病院に寄贈した絵が二五億円で落札(イギリス)

 "芸術テロリスト""覆面アーティスト"と呼ばれるバンクシーは、2000年代はじめから世界各地の路地裏の壁や橋梁などにグラフィティ(落書き)を描き残してきた。

 徹底して姿を見せないようにしているかと思えば、大英博物館やメトロポリタン美術館に自身の作品を無断で展示したことも。うっかり姿を見られかねない、ギリギリの行動をとる一面もあるようだ。

 そんな神出鬼没のバンクシーが、イギリス南部のサウサンプトン総合病院に新作を届けた。4、5歳ほどの男の子が、看護師の人形を頭上にかざして遊ぶ姿が描かれている。人形は右手を前方に伸ばし、マントをなびかせ、スーパーマンを思わせる。

 そこには、こんな異例のメッセージが添えられていた。

 「皆さんのご尽力に感謝します。モノクロ作品ですが、これで少しでも場が明るくなればと願っています」

 作品はオークションにかけられ、これまでのバンクシー作品の倍近い約25億円で落札された。このお金は全国の医療機関や慈善団体に寄付されるという。ちなみにこの作品「Game Changer」は、バンクシーのインスタグラムで公開されている。

武漢の配達員が涙したサプライズ

 世界で初めて新型コロナウイルスの感染爆発が起きた武漢のエピソードも。

■見知らぬ人から届いたケーキに涙する中国の配達員(中国)

 中国では9億人のネットユーザーのうち、4億6000万人が食品デリバリーを利用し、配送は1日平均5000万件。24時間体制、配達は平均30分以内、渋滞をすりぬけ単車を走らせる。この「給料に見合わない命がけの仕事」に携わるのは、地方出身の20代、30代の男性が多いという。

 配達員が店員から伝票を受け取ったところ、受取人が自分の名前になっていた。店員に確認したが、間違いないという。「本当に僕でいいの?」といぶかしんでいると、注文書の備考欄には、こんなメッセージが添えられていた。

 「これは配達員さんへのプレゼントです。毎日お疲れさま。身体にはくれぐれも気をつけてね」

 その日は配達員の誕生日だった。なぜそこまで親密? と思ったが、中国では注文者は配達員とSNSのチャットでやりとりでき、配達員のプロフィールも見られるのだとか。

 YouTube動画では、配達員がコンクリートの階段に腰かけ、涙をぬぐい、掻きこむようにケーキを食べる様子が。武漢では1万人以上の配達員が、見知らぬ人から心温まるサプライズを受けたという。


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 自分の知らないところで、こんなにもタフに、ユーモアを持って、コロナ禍を生きている人たちがいるのか! と元気をもらえる。世界の「やさしい物語」を読みながら、身の回りにあったほっこり話を振り返りたくなる1冊。


■片野優さんプロフィール
 ジャーナリスト。1961年群馬県生まれ。東京都立大学法学部卒業。集英社退社後、オーストリア、ハンガリーを経て、セルビアのベオグラード在住。著書に『ヨーロッパ環境対策最前線』『ここが違う、ヨーロッパの交通政策』(ともに白水社)、『フクシマは世界を変えたか』(河出書房新社)など。

■須貝典子さんプロフィール
 旅行ジャーナリスト。1962年新潟県生まれ。東京女子大学短期大学部卒業。集英社退社後、オーストリア等を経てセルビア在住。片野さんとの共著に『図説 プラハ(ふくろうの本)』(河出書房新社)、『こんなにちがうヨーロッパ各国気質』(草思社)、『日本人になりたいヨーロッパ人』『ヨーロッパ人が来て見て感じて驚いた! 不思議の国のジャパニーズ』(ともに宝島社)、『ヨーロッパの都市伝説』(祥伝社)など。


※画像提供:宝島社



 


  • 書名 コロナの世界を照らす50のやさしい物語
  • 監修・編集・著者名片野 優、須貝 典子 著
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2021年9月24日
  • 定価1,320円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・208ページ
  • ISBN9784299019998

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