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「説法しながら恋愛小説を書く」瀬戸内寂聴さんの愛に触れる4作

愛に始まり、愛に終わる

 今月9日、瀬戸内寂聴さんが99歳で亡くなった。40年来の親交があった黒柳徹子さんは、「みんなの味方が、亡くなった。」と、寂聴さんの死を悼んだ。「説法しながら恋愛小説を書く」破天荒でお茶目、愛にあふれた寂聴さんは、数多くの著作の中で悩める女性に寄り添い、勇気を与え続けた。

 波乱に満ちたその人生や人となりを、たった1本の記事でたどることなど到底できないが、追悼の意を込めて、寂聴さんの愛に触れることのできる作品を紹介する。

45歳の"晴美さん"が説く「愛の倫理」

『愛の倫理――「自分を生ききる」ということ』(青春出版社)

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 1968年に瀬戸内晴美の名で刊行された本書は、50年以上読み継がれ、今年新装版として復刊したもの。愛、男女、性、結婚、出産、離婚、仕事について、45歳の晴美さんが持論を展開している。

 21歳で出産し、結婚5年目に夫と子どもを残して家を出たときの心境を振り返り、「ここまでさらけ出していいのか」と心配になるほど、力のこもる言葉で表現し尽くしている。「女性の幸福と自由を説いた瀬戸内寂聴の原点」とも言える、現代女性にとっても刺激的な読書体験となる一冊。

 詳しい内容は、以下の記事を参照。

愛、男女、性、結婚、出産、離婚、仕事について

「お嬢さまコース」から波瀾の人生へ

『寂聴 九十七歳の遺言』(朝日新書)

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 2019年4月に京都・寂庵で2回にわたって行われた朝日新聞記者による単独インタビューを基に加筆したもの。タイトルにもあるように、97歳を迎えた寂聴さんが「遺言」として、自らの生い立ちから波瀾に満ちた人生、「今この時を切に生きる」こと、そして「死ぬ喜び」までを話し言葉で綴っている。

 徳島の仏壇屋の娘として生まれ、成績優秀だった少女時代、東京女子大への進学。「お嬢さまコース」を順調に歩んだ。しかし、早々に結婚した後、世間のルールを大きく踏み外す波瀾の人生が待ち受けていた。出家のきっかけの1つとなった、作家の井上光晴氏(1926~1992)との8年に及ぶ不倫についても、正直に語っている。

 そうした経験を踏まえた人生相談でも知られる寂聴さん。離婚を望む女性や、最愛の伴侶を失くし悲しみに暮れる女性への言葉も、慈愛に満ちている。さりげない一文に込められた寂聴さんの思いに勇気づけられる。

 詳しい内容は、こちらの記事を参照。

「寂聴法話」を新書で手軽に

愛することは「生きた証」

『愛に始まり、愛に終わる 瀬戸内寂聴108の言葉』(宝島社)

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 今年4月に発売された寂聴さんの名言集。新聞や記事のインタビューや対談、エッセイ、法話などから、愛、生、老、死などの7つのテーマに分けた108つの言葉を集めた。

 「本当の愛は"あげっぱなし"」と語る寂聴さん。「どんなに辛く苦しんだ恋愛であっても、恋愛を知らずに死を迎える人より幸せな人生だと感じているので、どうか恐れずに人を愛して、生きた証を残して欲しい」と説いている。

 随所にあふれるユーモアで、「老」や「死」などのテーマも重たくならず、説教くささはみじんも感じられない。あなたが今抱えている悩みを軽くしてくれる「パワーワード」が、きっと見つかるだろう。

 詳しい内容は、こちらの記事を参照。

瀬戸内寂聴、注目の名言集から「4つのパワーワード」を紹介。

不倫相手の娘との邂逅から生まれた衝撃作

『あちらにいる鬼』(2019年、朝日新聞出版)


 寂聴さんが亡くなるつい4日ほど前に文庫版が出版された、井上荒野さんの衝撃作。井上光晴氏と寂聴さんとの不倫関係、それを静かに見守った母をモデルに、逃れようもなく交じり合う3人の「特別な関係」を、井上氏の長女である著者が2019年に発表した作品だ。

 著者と寂聴さんはもともと交流があり、寂聴さんから聞いた話も参考にしたという。寂聴さんの体調が悪化し、「そろそろお目にかかっておかないといけない」と寂庵を訪ねた著者は、寂聴さんと半日ほど話し込んだ。父との思い出話を聞き、「ああ、寂聴さんはほんとに父のことが好きだったんだ」と思ったという。

 葛藤や憎しみ、さまざまな感情を超越した2人の邂逅から生まれた本作は、映画化も決定している。

 詳しい内容は、こちらの記事を参照。

父と瀬戸内寂聴の不倫、見守る母。3人の「特別な関係」を娘が描く衝撃作

 今回は、寂聴さんの人物像を紐解く作品を中心に紹介した。さいごまで「みんなの味方」として、人々を大きな愛で包んだ寂聴さん。そのひと言ひとことが、胸にしみいる。



 
  • 書名 愛に始まり、愛に終わる
  • サブタイトル瀬戸内寂聴108の言葉
  • 監修・編集・著者名瀬戸内 寂聴 著
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2021年4月26日
  • 定価1,540 円 (税込)
  • 判型・ページ数四六判・264ページ
  • ISBN9784299014696

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