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小3以上は「はずれくじ」世代。「子育て罰大国・日本」のリアル

子育て罰

 「『子育て罰』をなくすか。子どもを日本からなくすか」――。

 児童手当廃止は子ども差別!? 「こども庁」は政治の道具!? すべての子どものために闘う論客、渾身の提言書『子育て罰 「親子に冷たい日本」を変えるには』(光文社新書)が7月14日に発売された。

 本書は、日本大学教授の末冨芳さん(すえとみ かおり)さん、立命館大学准教授の桜井啓太さんによる共著。

 タイトルを見てぎょっとする人も多いだろう。子育ては罰を受けるようなこと!? むしろその逆では!? と。本書における「子育て罰」の定義とは......

【子育て罰】
社会のあらゆる場面で、まるで子育てすること自体に罰を与えるかのような政治、制度、社会慣行、人びとの意識。

「ボーナス」どころか「罰」

 本書の概要は以下のとおり。

 少子高齢化が加速する日本において、出生数の回復は急務であるにもかかわらず、日本は諸先進国に比して家族関連社会支出が極端に少ない。子育て世帯に福祉的「ボーナス」を与えるどころか、金銭的にも社会的にも「罰」を与える政策により、日本の少子化対策は完全に失敗している。

 子育てを「自己責任」とみなし、親子を苦しめる社会・政治の制度・慣行を、本書では「子育て罰」と定義。

 9月入学問題や高所得世帯の児童手当廃止、「こども庁」の政治利用などに鋭く切り込んできた教育学者の末冨芳さんが、日本から「子育て罰」をなくし、再び「親子にやさしい国」にするための方策を論じる。学術用語「child penalty」から「子育て罰」という訳語を生んだ社会福祉学者・桜井啓太さんの論考、末冨さんと桜井さんの対談も収録。


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著者の桜井啓太さん、末冨芳さん(画像提供:光文社)

■目次
 はじめに
 第1章 「子育て罰」を作った3つの政治要因 末冨芳
 第2章 「子育て罰」と子どもの貧困 桜井啓太
 第3章 「子育て罰大国」はどのようにして生まれたか 末冨芳
 第4章 対談「子育て罰」大国から「子育てボーナス」社会へ! 末冨芳×桜井啓太
 第5章 「子育て罰」をなくそう
     ―失敗を受け入れ、「親子にやさしい日本」に変えるために― 末冨芳
 あとがき
 ※本書は、2021年6月現在までの政治動向を収録。

 第1著者の末冨さんは今年5月18日、子ども・子育て支援法及び児童手当法の一部を改正する法律案の参考人として参議院内閣委員会で提言した。また、Yahoo!ニュース オーサーとして子ども・教育関連の記事を執筆し、「児童手当廃止」「こども庁」に関する忌憚なき意見を発信している。


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著者の末冨芳さん(画像提供:光文社)

 「子どもと子育て世帯に冷たく厳しい日本の現状と、なぜそんな国になってしまったのかを考えるため、この本ではあえて『子育て罰』という厳しい言葉を使っています。そして、どうしたら日本という国が、子どもや親にやさしくあたたかい国になれるのかを考えていきたいのです」

「児童手当廃止」「こども庁」に怒りを禁じえない

 昨年11月6日の「児童手当の特例給付、廃止検討 待機児童解消の財源に」(産経新聞)という報道に、「私は怒りを禁じえませんでした」と末冨さんは書いている。

 もともと日本の子育て層は、年金・社会保険料の負担が高齢者世代より高いうえ、児童手当や授業料無償などの恩恵を十分に受けることができていないという。

 「子どもを産み育てるほどに生活が苦しくなっていく、子育てをしながら頑張って働いている中高所得層ほど追い詰められる、『子育て罰』の国なのです」

 とくに2021年現在に小学校3年生以上の子どもを持つ世代は、幼児教育無償化の恩恵をまったく受けていない。そのため「純粋な負担増になる『はずれくじ世代』」に。

 もう1つ、末冨さんが「怒りを禁じえない」のが、今年4月に始まった「こども庁」構想による総理、官邸、一部の自民党幹部の子どもの政治利用。ヒトもカネも増やさずに作る「こども庁」は「子どもを票取りの道具に使っているようにしか見えない」とも。

あえて訳した「子育て罰」

 桜井さんが「child penalty」を「子ども罰」ではなく「子育て罰」とあえて訳したのには、こだわりがあるという。その1つは、「『子どもの貧困』をはじめとする日本の子育て政策に対する強い不満」。

 「子育て罰」という言葉には「子育ては罰じゃないよ」という反響もあるそうだが、「誤解を招く表現であることは承知のうえ」として......

 「あえて『子育て罰』としたときに、かわいそうな個人が貧困に陥っている(ので助けてあげよう)という話から脱して、『罰しているのは誰か』『罰されているのは誰か』という、いま現実にある差別と不平等を論じることができます」

 本書は、政治と社会が子どもと親に加える「子育て罰」という課題をあきらかにし、「子育て罰」をなくしていくことを目的とした1冊。本書を通じて1人ひとりが「子育て罰大国・日本」の現状を知ることも、「親子に冷たい日本」を変える1つのきっかけになるかもしれない。


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■末冨芳さんプロフィール
 1974年生まれ。京都大学教育学部卒業。同大学院教育学研究科博士課程単位取得退学。博士(学術・神戸大学大学院)。現在、日本大学文理学部教授。内閣府子どもの貧困対策に関する有識者会議構成員、文部科学省中央教育審議会委員などを歴任。主な著書に『教育費の政治経済学』など。

■桜井啓太さんプロフィール
 1984年生まれ。大阪市立大学大学院創造都市研究科博士課程単位取得退学。博士(創造都市)。名古屋市立大学准教授を経て、現在、立命館大学産業社会学部准教授。主な著書に『<自立支援>の社会保障を問う』など。


※画像提供:光文社


 
  • 書名 子育て罰
  • サブタイトル「親子に冷たい日本」を変えるには
  • 監修・編集・著者名末冨 芳、桜井 啓太 著
  • 出版社名光文社
  • 出版年月日2021年7月14日
  • 定価1,012円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・296ページ
  • ISBN9784334045517

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