「多目的トイレの神様」と言えば、世間を騒がせたあの人。ここでピンと来た人はいるだろうか。
「2021年4月21日、政治、芸能、人文、ビジネス。各界を動かすおじさんを鋭い切り口で批評する『ニッポンのおじさん』(KADOKAWA)が発売された。
「好きだけど寝たくはないとか、嫌いだけど使えるとか、軽蔑してるけどそそる声だとか、尊敬してるけど一緒にいたくないとか、そういう複雑系の中でおじさんたちを見ていると、単純な善悪も優劣も多面的で、一度悪者や善人に認定した者も、結構簡単に揺らぐ。そしてその、正しさが常に揺らいでいる、ということが、圧倒的に正しい。」(本文あとがきより)
単なる「おじさん」批評ではない。矛盾と曖昧を常に持ち合わせる人間のグラデーションに真正面から向き合っている。
著者は、ホステスやAV女優などの経験がある文筆家・鈴木涼美さんだ。鈴木さんは、慶應義塾大学を卒業後、東京大学大学院学際情報学府修士課程を修了している。彼女の修士論文は、『「AV女優」の社会学 なぜ彼女たちは饒舌に自らを語るのか』(青土社)として書籍化され、話題となった。
本書では、ビートたけし・岡村隆史・麻生太郎・星野源・小沢健二・木村拓哉・村上春樹・石原慎太郎・堀江貴文・菅義偉(敬称略)など各界で活躍する「おじさん」たちを取り上げ、彼らを取り巻く社会の動きや、それを語る女たちにも鋭く切り込んでいく。
ウェブメディアcakesの同名連載などに大幅な加筆修正をし、書き下ろし文が加えられた。連載時には、「言語化がすごい」「今回も名言だらけ」「今まで読んだ●●評の中で一番しっくりきた」などの声が寄せられた。
刊行にあたって著者の鈴木さんは以下のようにコメントを寄せている。
鼻につくおじさんや嫌われ者のおじさんや人気者のおじさんを、なんで鼻につくのか、なんで嫌われているのか、なんで好かれているのかと想像しながら書いていく作業は、私にとって、輝かしいものを疑い、嫌いなものを好きになっていく過程になることが多く、とてもエキサイティングな体験でした。
目次は以下の通り。「僕らがミスをチル理由」「嫌われ男の一生」「可愛くってずるくって意気地なしな去り際にカンパイ」など見出しも秀逸だ。あとに続く名前を読むと、なるほど!と思わず吹き出してしまう。
まえがき 権力とオカネを持ったいじめられっ子たち
愚かなおじさんは愚かじゃない女がお好き?――ビートたけし
言い難き嘆きも手――岡村隆史・藤田孝典
分け入っても分け入っても、あるよ山――乙武洋匡・ダースレイダー
僕らがミスをチル理由――Mr.Children
嫌われ男の一生――麻生太郎
多目的トイレの神様――渡部建
星野源になりたいボーイと小沢健二の全てに意味を持たせたガール――星野源・小沢健二
世界はそれをクロと呼ぶんだぜ――箕輪厚介・鬼滅の刃・愛の不時着
この街に降り積もってく真っ黒な悪の華――松浦勝人・惡の華
ブスの瞳に恋するな――燃え殻
ひょっとして死ンデレラ――角幡唯介・安田純平
ここが巣窟、迎えに来て――村西とおる
いやん、We can't――福田淳一
キムタクはどう生きるか │ 木村拓哉・伊集院静
オナニー・コンフィデンシャル――吉村洋文
死の棘の刺さらずオトコ――船越英一郎・死の棘
ハルキはソレを愛しすぎてる――村上春樹
フェミ愛すべきオスがいて――石原慎太郎・椿三十郎
たのしく たのしく かわいくて――小室哲哉・つんく♂
なんとなく、クルッテル――田中康夫
木曜日のタロウ――山本太郎・キングダム
可愛くってずるくって意気地なしな去り際にカンパイ――安倍晋三
モテに火をつけ、白痴になれ――堀江貴文
謝んジャパン――菅義偉・Zeebra
あとがき カントリー・フォー・オールドメン~「ニッポンのおじさん」からこぼれ落ちた者についての覚書
古典からポップまでのあらゆるおじさん、そして男女をズバリと分析していく本書。身の回りのおじさんにイラっとした時におすすめ。ただし気を落ち着かせようとして読み始めたら、むしろヒートアップしてしまうかも?
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