「どこから始めたらいいのだろう? どこかの誰かの、本当に不思議なお話を」――。
オーサキ・コーさんの著書『わたし、探偵になっちゃいました』(幻冬舎メディアコンサルティング 発行、幻冬舎 発売)は、主人公の「私」が挫折を繰り返し、「捕鳥」「警備員」「探偵」と転職を繰り返す「スーパー破天荒な人生の物語」。
オーサキさんは昨年、探偵事務所を設立している。主人公の「私」とは、オーサキさん自身なのだ。本書は、著者の実体験を大いに盛り込んだ「実話を元にしたフィクション」となっている。
「これは、ちょっとだけ平凡をはみ出した男の、実話のような作り話」
「ちょっとだけ平凡をはみ出した男」の「私」が、序章で自身の半生を振り返る。
もともと「元気が良すぎる子供」だった。ガマガエルを箱にぎゅうぎゅうに詰めたまま置き去りにして全滅させたり、線路に石を置いて「スタンド・バイ・ミー」のように次の駅まで線路の上を走り抜けたり......。
母はそんな「私」を「小さい体で一番一生懸命走っている」と評してくれた。そして高校生になり、大学生にもなった。しかし、ここでドロップアウト。
旅に明け暮れ、インド音楽にはまり、牧場で働き、その頃にはもう四児の父親になっていた。「北海道で牧場をただで借りられる」といううまい話にまんまと騙され、一番上の子供はもう大学生だというのに、五、六回転職をした。
たしかに、なかなかの破天荒ぶりである。ここで大江健三郎さんの「人は生きている間に一度は本を書きたくなる」という言葉を紹介し、「私」つまりオーサキさんが本書を執筆した動機を書いている。
「誰しも実は、物語みたいな日常を生きている。(中略)まあまあ、書いてみよう。自分の生きる小さな日常を少しだけはみ出してみた、どこかの誰かを描いた、面白おかしい私の作り話を」
謎の求人、鶏舎での「捕鳥」。警備会社での孤軍奮闘、仲間との絆、裏切り、そして決別。「ろくでなしのオヤジ」は、なぜ「探偵」になったのか――。
本書のタイトルを見て「私」が「探偵」になってからの物語を想像したが、「捕鳥」~「警備員」時代の凄まじい人間模様や「探偵」に行き着いた経緯にスポットを当て、「私」の流浪の人生をありありと描いている。
■目次
序章 子供返りしたオジサン
第一章 熱き血潮の海陸魂!捕鳥の王 聖帝サウザーとの出会い
第二章 燃えよ誘導棒、魂の章!
第三章 燃え過ぎたジュウザ、フライングマニュアル通用門事件!
第四章 宣戦布告のちコケオドシ。さらばえーけーびー!
終章 探偵として駆け出す前に
ちなみに、同僚の実名を出すのはまずいということで、登場人物の名前は漫画『北斗の拳 イチゴ味』のキャラクターから借りている。「サウザー」「ジュウザ」など、この漫画を知らない読者は誰が誰だか若干混乱するかもしれない。
ただ、こうしたアニメの要素を入れることで、「実話のような作り話」でありつつ「作り話のような実話」かもしれないという、独特の読み味が生まれている気がした。
「私は子供のまま大人になり、大人になってからも子供であり続けた」――。座右の銘は猪突猛進。仕事も人間関係も一瞬一瞬に魂を込め、いかなる時も全力投球、直球勝負。
そんな「私」はあちこちで壁にぶち当たることになるのだが、どんなに痛い目を見ても這い上がる。この姿勢は、同じように挫折を経験した人を勇気づけるだろう。
たとえば、四十代の「私」は「捕鳥」を始めた頃、ニワトリを捕まえるのが一番遅かった。しかし、徐々に頭角を現し、二十代の青年たちより速く捕まえられるようになった。
「人はいくつになっても、何かを始めるとして、遅すぎるということは何もない。私は、身をもってそれを証明したのである」
そして、自分は「捕鳥」が大好きなのだと自覚する時が来る。
「人にはぶっ飛んでいると言われるが、そうすることではじっこから見た、物事の核心がよく見えることがある。そんな私が分かった事がある。『職業に貴賤なし!』」
北の大地を舞台に繰り広げられる「スーパー破天荒な人生の物語」とともに、「私」から飛び出す格言の数々を味わってほしい。
■オーサキ・コーさんプロフィール
1973年生まれ。警備員の社会的地位の向上という見地から、警備業法および探偵業法を研究。2020年3月、独立資金1万円、畳6畳の一室で探偵事務所を設立し、探偵業を開始。一般社団法人日本調査業協会北海道支部。職種、ジャンルに縛られない活動を展開している。
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