「女の子なんだから、丁寧な言葉づかいをしなさい」
「男の子なんだから、泣かないの」
子どもの頃、こんな風に叱られて、疑問に思ったたことはなかっただろうか。
現在でも、「ジェンダー・ギャップ」に苦しめられている子どもたちは多い。それもそのはず、2019年12月に公表された「ジェンダー・ギャップ指数」で、世界153カ国中、日本は121位で、G7の中でも圧倒的に最下位という結果だった。
朝比奈蓉子さんの『わたしの苦手なあの子』(ポプラ社)は、今を生きる子どもたちが感じている違和感に、優しく寄り添う1冊である。
物語の主人公、瑠美奈は、祖父から「女の子らしくしろ」と注意されることが多い。モヤモヤが募るなか、クラスメイトの詩音が、突然坊主頭で登校してきたのだ。転校生の詩音は、初めからクラスにあまり溶け込んでいなかったため、ますます孤立してしまう。実は、詩音が坊主にしたのは、高校生の姉が、転校先の時代錯誤な校則に抗議するために坊主にし、周囲から理解されないでいるのを助けたかったためだった。瑠美奈はそんな詩音を心配しているものの、どのように寄り添ってあげればいいのかがわからない――。
前作『わたしの苦手なあの子』(ポプラ社)でも、少女たちの揺れ動く繊細な心情を見事に描いた朝比奈さん。本作では、「ジェンダー」や「多様性」といったセンシティブで深刻になりがちなテーマを、小学生や高校生の目線でみずみずしく描き出す。理不尽な校則や、家族や友人との関わりなど子どもたちにとって身近な切り口で、共感しやすい作品となっている。子どもだけでなく、親世代や祖父母世代、教育に携わる方々、にもオススメしたい。
社会や学校から押し付けられる「らしさ」とは、そもそも誰が決めたことなのだろうか。どうしてその基準の中にいないと「普通じゃない」と言われてしまうのだろうか。
多様性とは、相手を思いやり、助け合って、存在を認め合うこと。みんなと同じでなくてもいい。それぞれが自分らしく、ありのままでいられることが一番大切なのだ。頭ではそう理解していても、詩音の姉のように、実際に行動を起こすのは難しい。周りに流されず、自分にしかない「らしさ」を貫く勇気をくれる一冊。
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