日大芸術学部の学生たちが毎年12月に主催運営している映画祭がある。
10回目を迎えた今年のテーマは「中国を知る」。香港の雨傘運動を描いた『乱世備忘 僕らの雨傘運動』(2016)、日本統治時代の台湾を映し出したホアン・ミンチェン監督『湾生回家』(2015)、中国では上映禁止になっているロウ・イエ監督の『天安門、恋人たち』(2006)など計15作品が12月12日から18日まで上映される。
日中戦争を題材にした亀井文夫監督(1908~87)の戦前の記録映画2作品も公開される。検閲により公開禁止となった幻の名作『戦ふ兵隊』(1939)と、戦意高揚を目的に製作された『上海-支那事変後方記録-』(1938)だ。
亀井は「戦ふ兵隊」で戦前、映画人として治安維持法で逮捕される第一号になった。戦後につくった「日本の悲劇」(46年)も占領軍に没収されるなど、いわば「ミスター不許可」ともいうべき硬派のドキュメンタリー監督だ。
60年、部落差別を告発した「人間みな兄弟」を最後に52歳で社会性の強い記録映画の世界から退き、晩年は都内で骨董屋「ギャラリー東洋人」を開業、主人におさまっていた。
波乱の生涯は、BOOKウォッチで紹介した『たたかう映画――ドキュメンタリストの昭和史』(岩波新書)にまとめられている。ドキュメンタリー作家でドキュメンタリー映画の研究者でもあった谷川義雄さんが、亀井の残していた多数の記録などをもとに、亀井の人生と人物について、再構成したものだ。
映画祭「中国を知る」の会場はユーロスペース(東京都渋谷区円山町1-5 KINOHAUS3F)。主催は日本大学芸術学部映画学科映像表現・理論コース3年「映画ビジネスⅣ」ゼミとユーロスペース。チケットや上映スケジュールなどは公式サイト(「日芸映画祭2020」で検索)で確認を。
BOOKウォッチでは関連で、『傀儡政権――日中戦争、対日協力政権史』 (角川新書)、『なぜ必敗の戦争を始めたのか』(文春新書)、『太平洋戦争の収支決算報告』(彩図社)、『それでも、日本人は『戦争』を選んだ』(新潮文庫)、『コロナ後の世界は中国一強か』(花伝社)、『日本の「中国人」社会』(日経プレミアシリーズ)、『潜入中国 厳戒現場に迫った特派員の2000日』 (朝日新書)、『芝園団地に住んでいます――住民の半分が外国人になったとき何が起きるか』(明石書店)、『習近平のデジタル文化大革命』(講談社+α文庫)、『中国共産党と人民解放軍』 (朝日新書)、『ルポ 隠された中国』(平凡社)など多数を紹介している。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?