読むべき本、見逃していない?

「AIはヒトに届くのか?」 4月22日発売『タイタン』、著者野﨑まど氏にインタビュー

 2020年4月22日、講談社から野﨑まど氏の新作SF『タイタン』が発売される。至高のAI『タイタン』によって人類が労働から解放された未来を描いた壮大な作品だ。アニメ『バビロン』などで日本を震撼させた野﨑氏による前代未聞のエンターテインメント。コロナ禍によって、仕事を失う人が増える今、「仕事」とは何かを問う重い課題に迫る内容になっている。野﨑氏に作品の狙いを伺った。

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写真は『タイタン』(講談社)

タイタンが人間の代わりに仕事をする世界

 まず、簡単に『タイタン』の設定を紹介しよう。『タイタン』は、こう説明されている。

 「人間の代わりに仕事を行うもの。
  人間の暮らしをサポートするもの。
  それらを自律的に行うもの。
  産業機械、建築機械、輸送機械、センサー、ネットワークで繋がるもの、統合処理AI、それら個々の呼称であると同時に、それら全ての総称」

 21世紀に登場したタイタンは進化を続け、2205年現在、あらゆる自律機械は世界12拠点に設置されたAI施設『知能拠点』に接続しながら活動している。タイタンはAIの名称であると同時に、あらゆるロボットの総称となっている。

 東京で心理学を「趣味」とする女性、内匠成果(ないしょう せいか)博士のもとを訪れた、世界でほんの一握りの就労者の男が彼女に告げる。

 「貴方に《仕事》を頼みたい」

 彼女に託された《仕事》とは、突如として機能不全に陥ったタイタンのカウンセリングだった。

仕事がなくなるのが問題にならない未来

 ――AIが発達すると、人間の仕事がなくなるという記事が、週刊誌にも出るようになりました。本書では、生産活動までタイタンが担う世界が実現しています。この究極のAIを発想したきっかけは?

 「AIが仕事を代替し、仕事がなくなることが問題になっています。しかし、200年の時間があれば、仕事が自然となくなって、それが問題にならない未来も想像できます。また現代でも「仕方なく働いている」という人は一定数存在していると思います」

 ――本書の参考文献にギリシャ哲学の本も挙げられています。西洋では必ずしも労働は善ではないという労働観があるようですが。

 「仕事をするのが望ましいことではなく、罰としての労働という考え方があります。当たり前のように仕事をすることを一度疑ってみようと。生まれたときから仕事が存在しなければ、積極的に仕事しようと思うことも無いのではないかと」

 ――新型コロナウイルスの影響で、仕事がなくなることが社会的な問題になっています。この時期に、こうした本が出るのは大変な問題提起になるように思うのですが。

 「この時期に出せるのは幸運であると思います。作品によって伝えようとしていることが、普通に読まれるよりも一段踏み込んで感じていただける気がします」

北海道が舞台

 ――では、作品の内容に沿って、質問します。主人公の女性、内匠博士は北海道の弟子屈にある「第二知能拠点」に赴き、仕事をするという設定です。どうして北海道を舞台にしたのですか?

 「どういったところに作ろうかと考えたときに、タイタン自体、非常にモノが大きいので広い場所が必要であること。それを設置するリアリティがある場所ということで北海道にしました」

AIを人格形成する

 ――今回、AIをビジュアル化しようということで、人格形成という話が出てきます。ある種AIが、「実体化」する訳ですが、この発想はどこから?

 「物語なので、どうしてもキャラクターは必要と考えています。AIは人間ではないけど、人間の近くにいる存在として設定しました。ある種の異種族コミュニケーションのようなものを考えました」
 「参考にした作品の一つに『シェイプ・オブ・ウォーター』があります。半魚人のような生物と人間の交流の物語です。異種との信頼関係を構築する上で、どういった交流を重ねて行くかのヒントになりました」

壮大なスケール

 内匠博士は人格形成の実験に取り掛かる。しだいに「コイオス」という小さい男の子のような人格が形成される。コイオスは「第二人工知能」のニックネームだった。

 物語はコイオスの成長の物語でもある。その規模は実に壮大であり、読者は想像もできないだろう。そして、人間とAIとの関係について根源的な問いを迫られる。

 ネタバレになるので、今回のインタビューの大半を占める第3部以降の展開にふれることはできないのが残念だ。

 本書はいずれ映像化されるだろう。その際、アニメだけではなくぜひ実写化も望みたい。

 今日も働く人類への力強い応援歌であると、インタビュアーは受け止めた。

 野﨑氏は2009年『[映]アムリタ』で第1回「メディアワークス文庫賞」を受賞し、デビュー。13年に刊行された『know』(ハヤカワ文庫)は日本SF大賞にノミネートされた。19年公開の劇場アニメ『HELLO WORLD』でも脚本を務める。講談社タイガ刊の「バビロン」シリーズは、19年10月からアニメが放送されている。

 受賞歴と書誌以外では、「東京都生まれ。麻布大学獣医学部卒業」ということしか個人情報を明らかにしていない。写真も公表していない。

 「ノザキマド」という名前の音から「ノマド」=遊牧民ということばを連想した。何者にも束縛されない自由なイメージだ。

 インタビューにはあまり出たがらないと聞いていたが、質問にはすべてたいへん率直にお答えいただいた。だが、作品の核心部分にふれる内容が多いので、ここに紹介できないのが残念だ。

 「AIはヒトに届くのか」。その答えがここに書かれている。

                        

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