「だから」は不快感を与える言葉、「遅くなりました」はNGワードなど、気になることが帯に書いてあり、手にしたのが本書『その言い方は「失礼」です!』(幻冬舎新書)。無意識にしている「失礼な言動」を取り除き、「本当の礼儀正しさ」が身につく手法を徹底的に解説している。
著者の吉原珠央さんは、昨年(2019年)出した『自分のことは話すな』(幻冬舎新書)がベストセラーになり、話題になったイメージコンサルタント。ストレスフリーをコンセプトにした化粧品などを扱う会社も経営している。他の著書に『「また会いたい」と思われる人の38のルール』(幻冬舎)、『パワーウーマンのつくり方』(宝島社)などがある。
社会生活を営んでいると、相手の言動が「失礼」だと思えることは日常的にあるだろう。 たとえば、買い物の支払いの際、店員が目も合わせずに、片手でクレジットカードを返してきたとき、タクシーに乗ってから降りるまで運転手の発した言葉が料金だけだったとき。それらの「かすかな違和感」こそが失礼の正体だという。
他人の言動に関する「違和感」チェックリストが参考になる。
・誰かが傷つく内容か? ・相手からの敵意を感じる内容か? ・相手からの敬意を感じられるか? ・自信を持って人にも話せる内容か? ・自分の気分がよいか?
こうした基準で違和感を明確にしておけば、あれこれ悩まずに、相手とある程度の距離感を保ちながら付き合うことで、ストレスを軽減できると、吉原さんは説明している。
第1章で、ひんぱんに遭遇する「失礼な言動」を挙げている。「疲れて見える」と本人に伝えるな、「かわいそう」は上から目線、メールが長いと人は離れていく、「うちの旦那」とはいわないほうがいい、など。失礼になる言葉の言い換え例も豊富だ。
「第2章 失礼な人ほど『自分が正しい』と思っている」を読むと、以下の指摘が並んでいる。
・お客様を「さん」づけで呼ぶな ・場所を選ばず、プライベートな質問をするな ・「暇だから」と誘うのはNG ・「やっぱり」の多用は「押しつけがましい」 ・質問は長いほど非常識
だいたいがなるほどとすぐに納得できる指摘だ。本稿の冒頭に挙げた「遅くなりました」は謝罪ではなく、単に状況報告をしているにすぎない、と注意している。「相手に迷惑をかけてしまった」という現実をしっかり受け止め、「申し訳ございませんでした」と謝罪の言葉をきちんと伝えられる人だけが、様々な場面でチャンスを手にすることができる、と書いている。
「後ろの人」に気を遣えるか、という問題提起から始まる「第3章 礼儀正しい人は無敵である」に、新型コロナウイルスとともに、以前では当たり前だったことが、「安心・安全」のために当たり前ではなくなっている、と指摘している。さらに、オンラインでの「プレゼン力」がさらに重要になった、として、パソコンを使った会話で徹底すべきポイントを7つ挙げているのが参考になる。
1 はっきりした発声 2 ワンフレーズの後に間を入れる 3 話を15秒以内に区切るイメージを持つ 4 自分の話が終わったら、相手に口頭で繋げる 5 手にジェスチャーで躍動感を演出 6 表情の動きを大きくする 7 背景をシンプルにする
20代でキャビンアテンダントをしていた吉原さんは会社員を辞めて、フリーランスとして25歳から今の仕事をしてこられたのは、顧客が多かったからではなく、「本当に必要な人たちから必要とされるための言動を徹底し、少数ながらも深いお付き合いができる方たちとの関係を継続できたから」と自己分析している。その信頼関係も礼儀正しさが基本にあったから、と理解できる。
礼儀正しさを小手先の形ではなく、内実から実現する考え方を教えてくれる本だ。とりあえず、形から入るだけでも有用なアドバイスに満ちている。
BOOKウォッチでは関連で、『Think CIVILITY――「礼儀正しさ」こそ最強の生存戦略である』(東洋経済新報社)、『日本語の作法』(青土社) 、『超基本 テレワークマナーの教科書』(あさ出版)などを紹介済みだ。
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