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空想地図のあの人の地図活用術

「地図感覚」から都市を読み解く

 地図好き、地理好きという人は意外に多い。本書『「地図感覚」から都市を読み解く』(晶文社)の著者、今和泉隆行さんは7歳の頃から空想地図(実在しない都市の地図)を描き、大学生時代に47都道府県300都市を回って全国の土地勘をつけたという人だ。「地理感覚」ならぬ「地図感覚」とは、いったい何だろう?

2020年日本地図学会の学会賞受賞

 はじめに、本書が2020年日本地図学会の学会賞(作品・出版賞)を取り、現在5刷と売れていることを紹介したい。さまざまな都市地図が掲げられ、ビジュアルに解説されている。本そのものが美しく、読んでいて楽しい、ひとつの作品のような本である。

 今和泉さんは1985年生まれ。2015年、株式会社地理人研究所を設立。現在は日経ビジネスオンラインライター、ゼンリンアドバイザーとして、都市や地図に関する情報を提供。「ブラタモリ」などにも出演。テレビ番組やゲームの地理監修・地図製作にもかかわっている。著書に『みんなの空想地図』(白水社)など。地図で飯を食っている数少ない人だ。

「地図感覚」があるメリット

 「地図感覚」とは今和泉さんの造語。人々が潜在的に持っている地理感覚や土地勘、経験を地図で引き出して読み解く感覚を指す。「地図感覚」を身につけ、地図が読み解けるようになるとどんなメリットがあるのか。

 ・理想の住環境や街、日常生活が地図から選べるようになる。
 ・ビジネスをはじめようとするとき、どこが適切か地図からわかるようになる。
 ・都市がこれまでどのように発展し、今後どのような展開になっていくか見通せるようになる。

 本書の構成は以下の通り。章タイトルを見ると、どんなことが身につくかわかるだろう。

 点と線でつかむ土地勘
  1 体になじむ地図をみつける
  2 身近な場所の大きさを地図で見る
  3 地図上の長さと距離の体感をつなげる
 面でつかむ土地勘
  4 道路模様から地形と密度を想像する
  5 新しい道と古い道 沿道の新旧を比べて見る
  6 地図模様から生活感と歴史を想像する
 土地勘から都市勘へ
  7 都市の発達と成長・年輪を読み解く
  8 街の賑わいを決める 人口、地形、集散
  9 街は動く? 街の移動と過去、今、未来
 都市・社会を映す地図
  10 地図表現の特徴と都市地図の変化

小学校をみつけると、感覚的に距離がつかめる

 地図もスマホのGoogleマップやYahoo!地図で見る人が多いだろう。昭文社などから出ている市販の都市地図との違いが詳しく書かれている。Googleマップなどは豊富な情報を有する割には、見た目はとても情報が少なく、色も薄く描かれている。「目的地を検索する」のが主だから、下地の地図は最低限の情報に絞られている。スマホで地図を見ると、縮尺が表示されないので、距離がわからないこともある。小学校は約150メートル四方くらいなので、「小学校をみつけると、感覚的に距離がつかめる」という。小学校7個分が1キロにあたる。徒歩なら15分というところだろう。

市街地の重心は移動する

 市街地の重心は移動することを論じた「9 街は動く? 街の移動と過去、今、未来」が興味深かった。中心街(旧市街)と駅(新市街)のどちらが強いか、全国いくつかの都市を6つに分類している。地図マニアの評者もうなずきながら読んだ。

 1 旧市街がもっとも強い例として、八戸、山口、高知、熊本、宮崎
 2 旧市街に新市街が追いついていないのは、盛岡、京都、広島、福岡、佐世保
 3 新市街が旧市街の脅威になり始めているのが、札幌、名古屋、鹿児島
 4 旧市街と新市街が対等に棲み分けているのは、弘前、仙台、山形、水戸、甲府、岐阜、富山、岡山、米子
 5 新市街が唯一の中心となり、旧市街は観光地となり、棲み分けをしているのが、長野、松本、松江
 6 新市街が唯一の中心となっているのは、秋田、鳥取、徳島

 熊本、盛岡、松江で地図を示して解説している。

 岡山と鹿児島では、街の新たな動きが市街地のキワで起きていることを地図で示している。地図を目的地に行く時に使う道具として使うだけではもったいない。地図を読み解くことで社会の変化を知ることもできる。

 BOOKウォッチでは、地図関連で『地図と写真でわかる 江戸・東京』(西東社)、『地形図でたどる日本の風景』(日本加除出版)、『地図帳の深読み』(帝国書院)、『地図で楽しむ京都の近代』(風媒社)など多数紹介済みだ。

  • 書名 「地図感覚」から都市を読み解く
  • サブタイトル新しい地図の読み方
  • 監修・編集・著者名今和泉隆行 著
  • 出版社名晶文社
  • 出版年月日2019年3月20日
  • 定価本体1900円+税
  • 判型・ページ数四六判・253ページ
  • ISBN9784794970732

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