読むべき本、見逃していない?

「繊細さん」だから感じられる幸せがある!

「繊細さん」の幸せリスト

 HSP(とても敏感な人)専門カウンセラー・武田友紀さんの初の著書『「気がつきすぎて疲れる」が驚くほどなくなる 「繊細さん」の本』(飛鳥新社)は2018年に刊行され、現在45万部突破のベストセラーとなっている。書店に行くとだいたい平積みされている「繊細さん」は、評者も以前から気になっていた。

 そうこうしているうちに今年4月、武田さんの新刊『今日も明日も「いいこと」がみつかる 「繊細さん」の幸せリスト』(ダイヤモンド社)が刊行された。本書は約半年で9刷。一冊目から読むべきかと思ったが、「いいこと」がみつかるというサブタイトルに惹かれて手にとった。

 それにしても、「繊細さん」というタイトルの書籍の帯に「○○万部突破!」とあることが少し意外だった。たとえば、「わたし、繊細だから」と面と向かって人に言うのははばかられる。逆に「わたし、繊細だから」と自分で言っている人もあまり見かけない。それほど「繊細」という言葉の扱いは気を遣うというか、あまり表に出てくる言葉ではないと思っていた。長引くコロナ禍も多少影響しているのだろうか。自分が「繊細」であるかどうかはさておき、とにかく心が疲れてしまった。ここから抜け出すヒントがほしい。そんな切実な思いを抱えている人が、いま増えているのかもしれない。

親しみを込めて「繊細さん」

 武田さんは、九州大学工学部機械航空工学科卒。大手メーカーで研究開発に従事後、カウンセラーとして独立。全国のHSPから寄せられる相談をもとに、HSPならではの人間関係や幸せに活躍できる仕事の選び方を研究。HSPの心の仕組みを大切にしたカウンセリングとHSP向け適職診断が評判を呼び、全国から相談者が訪れる。ラジオやテレビへの出演、講演会やトークイベントの開催により、HSPの認知度向上に努める。そのほかの著書に『繊細さんが「自分のまま」で生きる本』(清流出版)がある。

 本書で言う「繊細な人」は、アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱したHSP(Highly Sensitive Person)の概念がベースになっている。背の高い・低いがあるように、刺激に対する感度も人によって差があり、「生まれつき繊細な人」がいることがわかってきたという。

 自身もHSPである武田さん。HSPは日本では「とても敏感な人」「敏感すぎる人」などと訳されるが、「敏感すぎる人」と呼ばれるのは、気持ちのいいものではなかったという。武田さんは親しみを込めて「繊細さん」と呼んでいる。

 「私はこの呼び方に大きな意味があると考えています。......自分の繊細さを、克服すべき課題ではなくいいものとしてとらえる。そこが出発点です」

 武田さんはメーカーに勤める技術者だったが、ストレスが積み重なり休職したことをきっかけに「繊細さん」の心の仕組みを研究し始めた。それまでは感じたことに振り回され疲労困憊だったが、ストレスに耐え続ける生き方をやめ、「繊細さを含めて自分を大切にしよう」と思えたとき、人生が大きく変わったという。

「繊細さん」ってどんな人?

 エレイン・アーロン博士が行った調査により、「生まれつき繊細な人」は5人に1人の割合で存在することがわかってきたという。繊細な人とそうでない人は、脳の神経システムにちがいがあり、光や音などの刺激を受けたとき、繊細な人はそうでない人より敏感に反応するそうだ。人の感情、場の雰囲気、光や音、気温などの環境の変化など「自分の外側にあるもの」はもちろん、体調や自分自身の気持ち、新しいアイデアなど「自分の内側で起きていること」など、「繊細さん」が感じる対象は多岐にわたる。

 アーロン博士の「HSP診断テスト」では、「自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ」「ミスをしたり物を忘れたりしないよういつも気をつける」「生活に変化があると混乱する」など23の質問に「はい」「いいえ」で答えていく。「はい」が12以上の場合、おそらくHSPという診断になる。

 もう一つの診断の目安となるのが、「繊細さん」の4つの気質。アーロン博士によると、「この気質の根底には4つの面(DOES)が必ず存在する」という。武田さんは「4つのうちひとつでも当てはまらない場合には、おそらく『繊細さん』ではありません」としている。

~「繊細さん」の4つの気質~
 ■D(Depth)......深く処理する(深く考える)
  表面的なことよりも本質的なことを考える傾向にある。
 ■O(Overstimulation)......過剰に刺激を受けやすい
  大きな音や光、暑さや寒さ、痛みなどに敏感。楽しいイベントも刺激を受けすぎて疲れたりする。
 ■E(Emotional&Empathy)......感情反応が強く、共感力が高い
  事故や事件のニュース、暴力的な映画などが苦手な傾向にある。
 ■S(Subtlety)......ささいな刺激を察知する
  小さな音、かすかな匂い、相手の声のトーンや視線、自分を笑ったこと、ちょっとした励ましなどに気づく。

「繊細さ」は「幸せを感じるため」の才能

 本書の目次は以下のとおり。「繊細さん」が持つ幸せを6つに分類した上で、「感じ過ぎたら、アウトプットで刺激を流そう」「本音で選び続けると、人生全体が良い方へシフトしていく」「SNSは繊細さんと相性がいい」などの「"繊細さんだから"感じられる『幸せの53のコツ』」を紹介している。

序章 繊細さんってどんな人?
第1章 感じる幸せ――身のまわりの「いいもの」に気づいてめいっぱい味わう
第2章 直感の幸せ――人生のときめきをUPさせ、想定外の未来へ自分を運ぶ
第3章 深く考える幸せ――ひとり静かに世界とつながる
第4章 表現の幸せ――本当の自分で人とつながる
第5章 良心の幸せ――やりたいことをやることで、まわりの人を笑顔にする
第6章 共感の幸せ――「わかりあう」を手放して、いろんな人と笑い合う

 本書の帯には「あなたの『繊細さ』は『幸せを感じるため』のすてきな才能」とある。武田さんが「繊細さん」へのカウンセリングを通してわかったのは、「繊細さを大切にすることで、どんどん元気になる」ということ。繊細さの良い面に気づき、「心が喜ぶもの」「自分の本音」に目を向けることで、幸せな時間がふえていくという。

 ここでは「幸せの53のコツ」から2つ紹介しよう。まず、第3章の「気持ちや感覚を書くことで、自分とのつながりが強くなる」。「自分」が育つ時期には、それまでひっそり存在していた「自分の気持ち」が前面に出てきて、アウトプットがふえるという。日記でもブログでも、この「書く」という行為には「自分を知り、受け止める作用」があるのだという。

 「誰かに自分の話を聞いてもらえると、嬉しいですよね。書くことは、自分で自分の話を聞いてあげるということ。自分とのつながりが強くなるのです」

 もう一つは、第6章の「やりたいことをやっていると、『人生の同期』と出会える」。やりたいことをやり始めると、自然と、気の合う人と出会えるようになるという。ここで言う「気が合う人」とは「大切にしているものや人生の時期が似ている人」。

 「行きたい場所に行ったり、やりたいことをやったりしていると、年齢や肩書きはちがっても、深い話ができる「人生の同期」と出会えるのです」

 本書には「繊細さんの素敵なところ」がたくさん出てくる。しかし、それは決して繊細でない人との優劣ではなく、あくまで「ちがい」。「人はそれぞれちがいがあるんだな、自分は自分の良さを大切にしたらいいんだな、ととらえていただけたら」としている。

 本書の「幸せの53のコツ」を読んでいくと、いまは八方ふさがりで切羽詰まった心境だとしても、まだまだこんなに幸せの感じ方はあるのかと、読み終えるころには心がラクになっているのを感じるだろう。

 武田さんのカウンセリングの相談者は、人生の転機にさしかかっている人が大半という。「ストレスに耐えてまわりを優先する生き方から脱出し、自分の本音を大切にする生き方へと舵を切る」タイミングで来るようだ。「繊細さん」というタイトルが気になる人は、人生の転機にさしかかっているのかもしれない。

 BOOKウォッチでは、HSP関連で『繊細すぎて生きづらい~私はHSP漫画家~』(ぶんか社)、『気にしすぎる自分がラクになる本』(青春新書プレイブックス)などを紹介済み。



 


  • 書名 「繊細さん」の幸せリスト
  • サブタイトル今日も明日も「いいこと」がみつかる
  • 監修・編集・著者名武田 友紀 著
  • 出版社名株式会社ダイヤモンド社
  • 出版年月日2020年4月 8日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・236ページ
  • ISBN9784478109328

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