長期休校、行事の延期・中止、学校説明会の延期・中止、秋冬に懸念される新型コロナ感染再拡大......。受験生の抱えるストレスは相当なものだろう。中でも受験を経験したことのない多くの中学3年生は、日々不安との戦いではないだろうか。
思春期の子育てアドバイザー・道山ケイさんの本書『高校受験――志望校に97%合格する親の習慣』(青春出版社)は、受験を控えるわが子のためにできることはないか? と思っている親御さんに最適の一冊。「勉強しなさい」と言わなくても、塾に無理に通わせなくても、スマホを取り上げなくても、子どもが自分から勉強し、合格をつかめる「道山流・高校受験必勝プログラム」を公開している。
高校入試は1~3月に行われるところが多い。もう間に合わない? かと思ったが、表紙の「ひと月あれば偏差値10アップも可能」のコピーを見て、このタイミングで紹介することにした。
道山ケイさんは、元中学校教師。学級崩壊の「地獄」と学年最下位クラスを9か月で学年トップに変えた「天国」を経験したことから、道山流思春期子育て法を確立。「道山流で子どもに接すると成績が上がる、志望校に合格する」と話題になり、年間3000組の親子をサポート。本書が初の著書となる。
道山さんは「高校受験は親の習慣が9割」としている。親は「子どもがやる気をなくす言葉」を使わず、本書で紹介する「子どもが自ら勉強を始める言葉」を使ってみる。すると、子どもは自分の意思で机に向かい、だらだらスマホやゲームをしなくなり、定期テストの点数は上がり、第一志望校に合格――。
著者のプログラムは、スマホ・ゲーム機が手放せない子、偏差値が大きく足りない子、激しい反抗期の子、不登校の子を含め、高校受験を考えている子であれば誰にでも効果があるという。本書の目次は以下のとおり。
プロローグ 子どもが自分から勉強し、合格をつかめる! 道山流・高校受験必勝プログラム
第1章 受験合格ステップ1 「愛情銀行」の預金残高を増やす
第2章 受験合格ステップ2 「アクティブ進路」を見つける
第3章 受験合格ステップ3 「脇役サポート」をする
エピローグ 志望校合格以上に大切な「一生信頼しあえる親子関係」を作るために
付録 偏差値がグングン上がる「おすすめ問題集」
プログラムの柱となるステップ1~3を解説しながら、著者の教師時代の失敗・成功談、プログラムを実践して受験に成功した親子の実例を多数紹介している。子どもの成績も親子関係もスタート時期もさまざま。これならいまからでも、何らかの効果を期待できそうな気がしてくる。
プログラムに入る前に、一つ意識することがある。それは「5つのイライラ言葉を言わないようにする」こと。イラッとしたらつい言ってしまいそうなセリフばかりだが、まずは一か月我慢。すると、子どもが自分から勉強するようになるという。
1 「早く勉強しなさい! 今の学力じゃ高校に行けないわよ」
「勉強しなさい」(命令)の代わりに「何か手伝えることある?」(提案、気づかい)と言う。
2 「なに、このひどい点数......。次のテストまでスマホは没収だからね」
スマホやゲーム機を取りあげる(上から押し付ける)代わりに「次のテストで〇点以下だったら、しばらくスマホをあずかるね」と約束(協力)する。
3 「もう3年生だから塾に入りなさい」
無理やり塾に行かせても成績は上がらない。子どもの気持ちを確認する。
4 「この問題集を使いなさい。有名な先生がテレビで紹介していたから」
人から押し付けられたものではやる気が出ない。子どもが自分の意思で問題集を選ぶ。
5 「偏差値40のA高校より、50のB高校のほうがいいに決まっているでしょ」
無理してレベルの高い高校に進学した結果、留年、転校、退学して就職するケースも。偏差値以外の条件で進路を選ぶ。
共通しているのは「無理にさせない」こと。親はわが子を思うあまり、ついあれこれ言ったりやったりしてしまうもの......。しかし、子どもに無理やり何かをさせる行為は「過干渉」となり、子どもが最も嫌がる接し方だという。不登校や引きこもり、リストカットなどの自傷行為、スマホ・ゲーム・YouTube依存、親に対する暴言や暴力など、その9割は過干渉が原因になっているそうだ。
では、親は受験生のわが子にノータッチを貫けばいいのかというと、そうではない。次の3つのステップを実践して、子どもが自分から「勉強したい」と思えるように「仕向ける」のだという。
まず「ステップ1 『愛情銀行』の預金残高を増やす」。最初にすべきなのは、親の愛情を的確に子どもに伝えること。子どもの心には、親の愛情を受け止める容器=「愛情銀行の預金口座」があるという。子どもは親から愛されていると感じると、愛情銀行の預金残高が増え、安心して生活できるようになり、受験勉強もがんばれる。短期間で残高を増やす手順は......
・挨拶:子どもを名前で呼び、「おはよう」「おかえり」と笑顔で挨拶をする
・会話:子どもの興味や関心に合わせた会話を増やす
・ギフト:子どもの好きなおかずを作ったり、好きな雑誌を買って帰ったりする
・投資:子どもの心身に悪いことや他人に迷惑をかけることは、厳しく叱る
・回収:「できれば公立に行ってほしい」など、親の願いを聞いてもらう(残高が多ければ、多少の回収=親の意思を伝えることもOK)
次に「ステップ2 『アクティブ進路』を見つける」。子どもが心の底から進みたいと思う進路=「アクティブ進路」を見つけるサポートをすること。それは「夢が叶う」「条件を満たす」「合格率8割以上」の条件を満たす進路。最速で「アクティブ進路」を見つける手順は......
・学科を決める:明確な夢がある子は専門科、そうでない子は普通科を
・高校を絞る:行きたい高校の条件をすべて書き出し、優先順位を決める
・「夢を叶える高校リスト」を作る:勉強時間の明確化でやる気を引き出す
そして「ステップ3 『脇役サポート』をする」。親が出しゃばり過ぎない程度に、子どもが望むことだけをサポートすること。問題集や道具の準備、面倒な作業(例 単語カードを作る)を手伝うなど。
ここまで駆け足でプログラムのポイントを紹介してきた。ステップ1~3の順序を守ることが最も大事とした上で、受験まで時間がない場合はステップ1だけ行いましょう、としている。受験まで2か月を切った状態で、勉強の話を一切やめて、ステップ1だけを実践した親子の成功例も紹介している。
最後に一つ伝えたいこととして、志望校に合格することだけが「受験成功」ではない、と道山さんは書いている。
「私自身は、志望校に合格することは二番目に大事なことだと考えています。では、一番大事なことは何でしょうか? 答えは『受験を通して、一生信頼しあえる最高の親子関係を作ること』です」
受験本番までの過程で親子関係が揺らぎそうになったら、このことを思い出したい。
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