読むべき本、見逃していない?

安倍長期政権のあとを予測する

長期政権のあと

 本書『長期政権のあと』(祥伝社新書)を安倍首相が辞意を表明したあとに目にした。なんて手回しのいい本だろう、と驚いた。帯に「待ち受けているのは混乱か新秩序か!?」とある。しかし、発行日は8月10日。対談そのものは昨年暮れから行われたというから、かなり前から周到に準備していたことがわかる。

佐藤優さんと山口二郎さんが対談

 作家で元外務省主任分析官の佐藤優さんと法政大学教授の山口二郎さんが、憲政史上、最長となった安倍政権について、なぜ長期政権となったのか。そして長期政権のあとにはどのような事態が出来するのか、徹底的に語り合った本である。

 出版のタイミングもさることながら、お二人の顔合わせに違和感をもつ人もいるだろう。佐藤さんは安倍政権の外交政策を肯定的に評価する立場。いっぽうの山口さんは安倍政権批判の先頭に立つ人だ。

 佐藤さんが「はじめに」で説明している。実は二人は親しかったそうだ。「政治的立場の違いは本質的問題ではない。重要なのは、話者の誠実性と学識だ」と書いている。キリスト教に対する深い学識をもつ山口さんは、佐藤さんの神学的発想にも理解があるという。

 本書の章と節は以下の通り。

 第1章 安倍政権の正体 選挙で選ばれた王/権力の源泉/対米追随は、戦後日本の国体/政権維持の方程式/長期政権が終わる時
 第2章 長期政権が変えた世界 民主主義と資本主義の均衡/新自由主義の登場/リベラル派の変身/民主主義の行き詰まり
 第3章 なぜ、自民党は強いのか 長期支配の秘訣/結党以来、最大の危機/日本社会の衰弱/自民党の変質と弱体化/国民は変化を求めていない
 第4章 安倍政権後に訪れる国難 政治の漂流/新たな思想/経済の破綻
 第5章 もはや先進国ではない 「経済一流」は遠い昔/淵源は教育にあり/壊れた家族/日本新生の処方箋

「危機管理のための与野党協調体制」と山口さん

 読者の最大の関心は、安倍政権後のことだろう。山口さんは大胆に以下のように発言していた。

 「今後、安倍さんが疲れはてて、政権を投げ出す可能性も考えられます。その時には、自民党内で政権をたらい回しにするのではなく、与野党を超えた国会の理性によって、暫定的に危機管理のための与野党協調体制をつくらねばならない。これは戦前の大政翼賛会のような一国一党体制ではなく、あくまで臨時体制です」

「短命政権生まれ、混乱の時代」と佐藤さん

 佐藤さんは自民党の次の総裁として、「党内をまとめられる人物が思い浮かびません」と書いている。岸田文雄氏と石破茂氏の名前を挙げているが、菅義偉官房長官にはふれていない。「短命政権がいくつか生まれて、混乱の時代が続きます」と予想している。

長い視点で世界の変化語る

 二人は政治について語り合いながらも、政局がどうなるのかという短期的なことよりも、民主主義がどうなるのか? コロナ禍のあとの世界はどうなるのか? という長い視点で発言している。

 佐藤さんは、今後は経済よりも思想が先行すると言い、コロナ禍の今、「一国だけ・一地域だけで対処しようとしても、グローバル化した世界では不可能です。われわれは助け合わなければ滅びるのです」と利他性の重要さを説いている。

 山口さんは、「確実に言えるのは、安倍政権がいつ終わっても、また誰に代わっても、次の政権は経済対策に全力を傾けなければならないことです」としている。

 コロナ禍の収束後、情報通信技術(ICT)の進展により、第四次産業革命が一気に到来することも考えられるという。

 最後に二人の議論は「教育」へと収斂していく。山口さんは、「過去30年間の利益追求至上主義の経済のあり方を反省し、人間を尊重する新しい秩序をつくる機会がめぐってきたのかもしれない」と書いている。

 ちなみに二人は、9月7日(2020年)発売の「週刊ポスト」で「誰がやっても『負け戦』政権の宿命」というタイトルで緊急対談を行っている。「権力基盤は崩れ、外交は展望遠く、経済は崩壊寸前」と暗い話が続いている。

 BOOKウォッチでは安倍政権について、『ドキュメント 強権の経済政策――官僚たちのアベノミクス2』 (岩波新書) 、『公文書危機――闇に葬られた記録』(毎日新聞出版)、『兵器を買わされる日本』 (文春新書) 、『平成経済 衰退の本質』 (岩波新書)など関連書を多数紹介している。

 

 


  • 書名 長期政権のあと
  • 監修・編集・著者名佐藤優、山口二郎 著
  • 出版社名祥伝社
  • 出版年月日2020年8月10日
  • 定価本体880円+税
  • 判型・ページ数新書判・253ページ
  • ISBN9784396116088

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