「セクシュアリティの悩みが原因で、自分らしく働くことをあきらめたくない」。本書『自分らしく働く LGBTの就活・転職の不安が解消する本』(翔泳社)は、そんな思いをもつ人のための一冊だ。LGBT就活生・転職者から実際に寄せられたリアルな不安に対する向き合い方と解決策をわかりやすく解説している。
著者の星賢人さんは、1993年生まれ。東京大学大学院情報学環教育部修了後、「全てのLGBTが自分らしく働ける社会の創造」をめざして起業。現在は35万人を超えるユーザーを抱える就職支援サービス「JobRainbow」CEO。
星さん自身、ゲイとしていじめられた経験があり、一度は就活に失敗した経験を生かし、本書を書き上げたという。
ゲイ、レズビアン、トランスジェンダーなど6人のLGBTが登場し、彼らの就活・転職をアドバイスするというスタンスで書かれている。
「1 就活・転職の基礎知識」「2 自己分析」「3 業界・企業分析」「4 インターンシップ」「5エントリーシート」「6 面接」「7 内定」「8 入社後」と、実際の流れに沿った構成になっている。
冒頭に「カミングアウトは必須ではない」とある。たとえば、トランスジェンダーの場合、内定後の手続きの中で明らかになる場合がある。内定後に伝えると虚偽記載として内定取消になるのではと不安に思う人がいるかもしれないが、法的に虚偽記載にはならない。ゲイやレズビアンでも同様だ。
それでも、いつ、どのようにカミングアウトするかは自分の中で決めておいた方がいいとアドバイスしている。カミングアウトしないという選択もある。
星さんは「LGBTこそ、自己分析は重要である」として、自分史をつくり、過去の行動パターンから自分の特性をつかむ方法を紹介している。次にセクシュアリティをオープンにするのか、クローズドにするのかのメリット、デメリットを踏まえた上で、キャリアプランとライフプランをつくる。
たとえば、トランスジェンダーの5年後のライフプランとしては、こんなものもある。
「性別適合手術も行い、名前も戸籍もすべて女性として、思いっきり人生を楽しむ」
LGBTが働きやすい職場づくりに取り組んでいる企業を「LGBTフレンドリーな企業」という。しかし、LGBTフレンドリーだからといって、LGBTを特別採用することはないとクギを刺している。だから、企業選びに当たっては、「LGBTフレンドリーな企業」にエントリーを絞りすぎないことが大切であるという。
さて、いよいよ面接だ。その際の注意は以下のようなものだ。
・カミングアウトは自己PRや体験にからめて話すとよい ・カミングアウトをするか・しないかは、自分で選択する ・カミングアウトすると決めたら、タイミングや話し方をあらかじめ準備しておく
想定問答もリアルだ。カミングアウトする場合としない場合の両方に対応している。
「ゲイってことは、心は女なんだよね?」 「身体はどうなっているの?」 「LGBTであることは仕事とは関係ないからいわなくていいですよ」(以上、カミングアウトした場合)
「身体はどうなっているの?」は、仕事にまったく関係がなく、単純なセクハラなので、「プライベートなことなので......」と軽く受け流そう、と書いている。
「LGBTサークルに所属していたということはあなたもそうなの?」 「LGBT、はやっているもんね。どう思いますか?」(以上、カミングアウトしない場合)
相手がどのような意図で発言したかを、しっかりと見極め、感情的にならず、冷静に対応するようにと注意している。
さらに、内定後、入社後のアドバイスも書いているので、LGBTで仕事に不安をもっている人には大いに参考になるだろう。
LGBTの当事者だけでなく、一般の人が読んでも参考になる内容も多い。たとえばNGワード。「レズビアン、ビアン、ゲイ、ホモセクシュアル、バイセクシャル」はOKだが、「レズ、ホモ、バイ、オカマ」はNGだ。
また、コミュニティ内で聞いた話を他の場所でする「アウティング」は避けよう。
巻末に特別付録として、「LGBTフレンドリーな企業」18社の取り組みを紹介している。参考までに会社名を挙げておこう。
アメリカン・エキスプレス・インターナショナル、イケア・ジャパン、LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン・ジャパン、資生堂、チェリオコーポレーション、TENGA、丸井グループ、物語コーポレーション、佐川急便、JTBグループ、セガサミーホールディングス、ソニー、ソフトバンク、日本航空、野村ホールディングス、P&Gジャパン、PwC Japanグループ、freee
BOOKウォッチでは、『LGBTをめぐる法と社会』(日本加除出版)、『僕が夫に出会うまで』(文藝春秋)などを紹介済みだ。
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