読むべき本、見逃していない?

韓国大統領にはキリスト教信者がこんなにも多い!

君は韓国のことを知っていますか?

 日韓関係や韓国をめぐる本は多い。本書『君は韓国のことを知っていますか?――もう一つの韓国論』(春秋社)の大きな特徴は、著者の鈴木崇巨さんが牧師だということ。韓国にキリスト教信者が多いことはよく知られている。他の論者とは異なる情報や視点があるのではないかと思い、手に取ってみた。

キリスト教信者は人口の3割超

 鈴木さんは1942年生まれ。東京神学大学大学院修士課程および米国南部メソジスト大学大学院修士課程修了。西部アメリカン・バプテスト神学大学大学院にて博士号を取得。日本キリスト教団東舞鶴教会、田浦教会、銀座教会、頌栄教会、米国合同メソジスト教団ホイットニー記念教会、聖隷クリストファー大学などで47年間、牧師、教授として働き現在は引退している。

 特に韓国の教会に勤務した経験があるわけではない。韓国語ができるわけでもないが、韓国のキリスト教関係者との付き合いは深いようだ。何度か韓国を訪れている。

 鈴木さんによると、韓国のキリスト教信者は人口の3割を超えているそうだ。日本は1.7%というから比較にならない。もともとは儒教の国だが、戦後、急拡大したそうだ。仏教徒は2割ちょっとだというからキリスト教徒の方が多い。

 最近の大統領でも金泳三、李明博はプロテスタント、金大中、文在寅はカトリック。いずれも熱心な信者であり、個人差はあるが、「理想を追求するタイプ」だという。「日本人にとっては、このような人々が大統領に選ばれる政治風土を理解することが少し難しいかもしれません」と記す。

 日本では韓国人と儒教の関係が注視されるが、現在の多くの韓国人の思考法や行動の原理にもなっているのは「信仰」だと指摘する。

朝5時から「祈祷会」

 鈴木さんは日本と韓国のキリスト教徒や教会の違いについても書いている。韓国の教会は朝5時から「祈祷会」をやったりしているそうだ。ある牧師にインタビューしようとしたら、「午後11時から午前2時」という時間を指定されて驚いた。それほど、牧師は忙しいというわけだ。「日本なら労働基準局から警告されてしまいそう」「日本の牧師は本当にのんびりした仕事ぶり」と書いている。

 キリスト教徒のたたずまいも、日本のように「聖書から学ぶ」というのではない。「聖書を神からの直接の声として『襟を正して聴く』という態度」だという。

 韓国は1910年から45年まで「日韓併合」されていた。いろいろなことが起きた。日本で問題になるのは、「慰安婦」や「徴用工」くらいだが、ほかにも多々ある。有名なのが、1919年の「3・1独立運動」だ。ソウルをはじめ各地で「独立万歳」を叫んで多くの市民が立ち上がった。鈴木さんによれば、全国の集会数は1542、参加者205万人。死者7509人。その多くがプロテスタントの信者だった。ソウル郊外のキリスト教徒の多い村では、住民が憲兵隊によって教会に集められ、逃げられないようにしたうえで火を放たれ、銃撃などで29人が殺された。

 こうした「殉教」の歴史は韓国ではよく知られているそうだ。鈴木さんはこの村に再々建された教会を訪れ、韓国人の牧師の話を聞いた。「日本人を赦さなくてはならない。しかし、この悲劇をけっして忘れてはならない」と語っていたという。

日本だけが、「韓国が嫌いな国」

 日本は「未来志向」を重視する。しかし、韓国は「過去」にこだわるといわれる。そのギャップが日韓関係のギクシャクとして、しばしば表面化する。

 本書で鈴木さんは、日本が「未来志向」といいつつ、あまりにも「過去」について教えなさすぎではないか、と指摘する。日本の小学校6年生の教科書は「朝鮮を併合して植民地にした」と短行の説明にとどまる。中学校の教科書でも、先の「3・1独立運動」に関しては、「朝鮮で『3・1独立運動』が起こり、多くの死傷者や逮捕者を出しながらも5月まで独立運動は続きました」と記載しているだけだという。確かに、戦前の日本と朝鮮との関係について、戦後の日本の学校教育では、他人事のような扱いになっているのは否めないだろう。

 各種の世論調査によれば、日本人で韓国を「好き」という人は少なく、「嫌い」が多いということはよく知られている。ところが世界に目を広げると、外国人の多くが韓国に肯定的だということも本書は伝える。世界的に見ると、日本だけが、「韓国が嫌いな国」なのだという。ヘイトスピーチなどからもわかるように、日本人の一部に、「かつては植民地だったのに、今は反抗的で、けしからん」という思いが根深くあることは否定できないだろう。鈴木さんは、韓国を持ち上げようとは思っていないが、日本は今も、「韓国を差別視している」と考えている。

歴史的に濃密な関係

 本書でもう一つ、印象に残ったのは、日本は島国だが、韓国は違うという指摘だ。海外で働く日本人は135万人だが、人口が日本の半分以下の約5000万人の韓国では、700万人以上が海外で暮らしている。韓国人の国際化は日本よりかなり進んでいる。

 そういえば『グローバル人材へのファーストステップ――海外の学生とPBL / TBLで学び合う』(九州大学出版会)に興味深い話が出ていたことを思い出した。日韓の大学生の交流で日本の九州大学の学生たちは、韓国の学生たちの英語でのプレゼンテーション能力の高さに驚き、非常な刺激を受けたというのだ。野口悠紀雄さんの『平成はなぜ失敗したのか』(幻冬舎)によれば、近年、米国スタンフォード大大学院への留学者数で日本は韓国に大差をつけられているらしい。

 ところで、BOOKウォッチで紹介した『倭館――鎖国時代の日本人町』(文春新書)にもあるように、両国は、江戸時代は友好的な関係だった。さかのぼれば、平安時代に京や畿内に住んでいた氏族の名前を記した『新撰姓氏録』(815年)によると、全体の30%が中国や朝鮮をルーツとする人たちだったという。これは、『渡来人と帰化人』(角川選書)などに詳しく出ている。桓武天皇の生母が百済ルーツであることは、平成の天皇も記者会見で語っているし、『新版 古代天皇の誕生』(角川ソフィア文庫)も、「平安朝以降の天皇家には蕃国人の血が流れており、この事実は疑いようがない」と指摘していた。『「異形」の古墳――朝鮮半島の前方後円墳』(角川選書)や『古代韓半島と倭国』 (中公叢書)、『戦争の日本古代史』(講談社現代新書)などでは、古代の日本と朝鮮半島の濃厚な関係を知ることもできる。

 『ヤマト王権誕生の礎となったムラ 唐古・鍵遺跡』(新泉社)によれば、奈良の唐古・鍵遺跡は弥生時代最大級の「ムラ」として有名だが、成立させたのは、縄文人ではなく、稲作農耕の技術と文化をたずさえて新たに来た人たちだ。渡来系の可能性が高いことが指摘されていた。

 以上のように、歴史をさかのぼれば、日本と朝鮮半島の深いつながりは明らかだ。何しろ対馬から釜山までは約50キロ。天気がいいと、肉眼で見えるのだという。秀吉の朝鮮出兵は韓国に大きな傷跡を残したが、先の『倭館』によれば、比較的早期に両国関係は修復され、1607年には朝鮮通信使が来日、ほどなく釜山に「倭館」が設けられている。「倭館」では数百人の対馬の人々が常時働いていた。日韓関係は現代史のみならず、時間軸を広げると、興味が尽きない。

 BOOKウォッチでは最近の日韓関係について、『だれが日韓「対立」をつくったのか――徴用工、「慰安婦」、そしてメディア』(大月書店)、『韓国を蝕む儒教の怨念』(小学館新書)、『反日種族主義』(文藝春秋)、『ルポ「断絶」の日韓』(朝日新書)、『脱北者たち』(駒草出版)なども取り上げている。

 慰安婦問題関連では『妓生(キーセン)――「もの言う花」の文化誌』(作品社)、『芸者と遊廓』(青史出版)、『文書・証言による日本軍「慰安婦」強制連行』(論創社)など、近現代史では『阿片帝国日本と朝鮮人』(岩波書店)、『評伝 孫基禎――スポーツは国境を越えて心をつなぐ』(社会評論社)、『近代日本・朝鮮とスポーツ』(塙書房)も紹介済みだ。



だれかに本を読んでもらう。いま、無料で体験できます。

朗読:祐仙勇 朗読:真木よう子 朗読:榊原忠美 朗読:橋本愛

  • 書名 君は韓国のことを知っていますか?
  • サブタイトルもう一つの韓国論
  • 監修・編集・著者名鈴木崇巨 著
  • 出版社名春秋社
  • 出版年月日2020年2月26日
  • 定価本体1800円+税
  • 判型・ページ数四六判・184ページ
  • ISBN9784393323892

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?