2020年4月15日に投開票された韓国の総選挙(定数300、任期4年)で、文在寅政権を支える進歩派(革新)の与党「共に民主党」が6割の議席を得て圧勝した。この結果に失望している韓国と日本の保守派政治家や言論人も多いだろう。
本書『韓国大統領はなぜ悲惨な末路をたどるのか?』(宝島社)を読んだ人も意外に思うかもしれない。なぜならば、本書の帯には「文在寅は逮捕されるのか」と堂々と大書されているからだ。
歴代韓国大統領の末路は以下の通りだ(第4代、第10代を除く)。
初代~3代 李承晩 亡命 第5~9代 朴正煕 暗殺 第11~12代 全斗煥 逮捕 第13代 盧泰愚 逮捕 第14代 金泳三 次男が逮捕 第15代 金大中 息子3人が逮捕 第16代 盧武鉉 自殺 第17代 李明博 逮捕 第18代 朴槿恵 逮捕 第19代 文在寅 ?
よく知られた事実だが、あらためて列挙すると悲惨としか言いようがない。なぜ、こうしたことが繰り返されてきたのか、本書は右派(保守派)と左派(進歩派)による怨念闘争の黒歴史があったからだ、と説明する。
本書の構成と執筆者は以下の通り。
第1章 韓国大統領はなぜ悲惨な末路をたどるのか? 朴斗鎮(コリア国際研究所所長) 第2章 『反日種族主義』はなぜ韓国でベストセラーになったのか? 李策(ジャーナリスト) 第3章 文在寅大統領は過激な「反日主義者」なのか? 特別インタビュー 木村幹(神戸大学大学院国際協力研究科教授) 第4章 金正恩は文在寅政権をどう評価しているのか? 高英起(北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長) 第5章 韓国経済は本当に危機的状況なのか? 李策
木村氏を除く3氏はいずれも在日の北朝鮮についての専門家であり、文在寅政権を支える北朝鮮シンパの動向にも詳しいので、類書にはない分析が新鮮だ。
タイトルの「韓国大統領はなぜ悲惨な末路をたどるのか?」というテーマについて、朴氏は以下の3点を挙げている。
要因1 「やるか、やられるか」左右の非和解的対立 要因2 権力の集中と長期政権への野望が招く不正と腐敗 要因3 韓国社会の「たかり体質」と「利益誘導体質」
そして歴代の大統領の政策と末路について詳しく説明している。左右の非和解的対立は、韓国の建国前とその後も続いた共産主義勢力との厳しい戦いに由来する。
韓国建国後の1948年10月に南朝鮮労働党の指令を受けた軍部隊による「麗水・順天反乱事件」が起きて、李承晩によって鎮圧された。この際、党員を含めた約8000人の将兵が「アカ(共産主義者)」のレッテルを貼られ粛清された。その家族は怨念を持って社会の底辺に滞留した。その後の朝鮮戦争では南北合わせて約450万人の死傷者を出し、南北は敵となり、韓国内の反共自由主義者と共産主義者の対立も怨念対立と転化した、と指摘している。
北朝鮮の地下組織は現在まで、さまざまな合法組織の中に浸透しているという。文在寅政権は多数の学生運動出身の従北派を受け入れているとして、固有名詞と肩書をあげて書いている。大統領府の40%近い高官と職員が「全大協(全国大学生代表者協議会)」出身者というから驚きだ。
反日政策が次々に打ち出されるのも当然だろう。
次期政権を保守派が奪還すれば、文在寅大統領も「塀の中」と結論づけているが、今回の総選挙の結果を見る限り、それは難しいようだ。
新型コロナウイルスへの対応が選挙の争点となり、おおむね高く評価されたのが、与党が圧勝した要因と見られる。文在寅氏は、コロナ禍のおかげで生き延びる大統領になるかもしれない。
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