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韓国では「反日心情はあらゆる法を超えた民族の正義」

韓国を蝕む儒教の怨念

 日本と韓国の関係は戦後最悪の状態にある。日韓基本条約で解決済みの徴用工裁判で、韓国の最高裁は日本企業に賠償判決をだした。文在寅大統領は反日の姿勢を加速させている。反日は韓国の歴史にあり、儒教の影響が大きいと本書『韓国を蝕む儒教の怨念』(小学館新書)は結論づける。

反日から知日になった著者

 著者の呉善花(お・そんふぁ)さんは、評論家、拓殖大学国際学部教授。1956年、韓国・済州島生まれ。韓国での学校教育によって、かつては反日主義に傾倒していたが、83年に来日、大東文化大学、東京外国語大学大学院で学び、さまざまな葛藤を経て知日派となった人だ。『攘夷の韓国・開国の日本』(文春文庫)、『なぜ「反日韓国に未来はない」のか』(小学館新書)など多数の著書がある。

 韓国・北朝鮮の政治・文化・社会の直接的な基盤は、朝鮮半島に518年間続いた李朝(李氏朝鮮、1392-1910)に求められるという。王朝の交代が何回も行われた朝鮮半島。最後の王朝であった李朝は、仏教文化を誇った高麗王朝(918-1392)に代わると、儒教=朱子学をイデオロギーとして国をつくり変えたという。

 家族・社会・国家を共通に律する一つの普遍的な倫理・道徳があり、最上位に位置する。李朝の影響は現代の韓国にも色濃く残っており、韓国人の意識のなかでは、「法よりも道徳が上位にある」とイメージするのはそのせいだ。

 さらに「情理」が法に優先する。こんな驚くべき例を引用している。

 「韓国では酒に酔っての犯行となれば『情理』の判断をもって必ず減刑されるし、単純暴力では前科の有無を問わず罰金・略式起訴で裁判までいかせないのが司法界の慣例です」(「朝鮮日報」2012年9月17日)

 「情理」とは「大多数の韓国人(国民)が今このときに常識として抱いている正しさの感覚」というもので、司法の判断も引きずられる。

「国民情緒法」は憲法を超越

 「『国民的合意』とみなされれば、他国との間で決まった約束事を勝手に破ったり、あとでルールを自分たちに都合良く変更したりすることなど意に介さないのです」と書いている。

 明文化された法律ではないが、このいわゆる「国民情緒法」は、憲法の規定すら超越する。対日本問題での適用が顕著なのは、反日心情はあらゆる法を超えた民族の正義だという思想があるからだという。

 李朝時代に深く根を下ろした中国古来の「天命思想」が、「国民情緒法」の根拠になっているという指摘は興味深い。「天意は民意」のポピュリズムである。以下のように単純に理解する人が多いそうだ。

 「人民の支持を得て統治者となるのだから、主権は人民にある。天意は絶対的な意思であり、それは民意・人民の動向として現れるのだから、実際には人民の意思が天の意思である、つまり人民の意思が絶対的な意思である」

 前政権を倒した「ろうそく革命」の後に登場した文政権には、こうした心情が強いのだろうか。

道徳重んじるのに犯罪多い韓国

 儒教の影響だけでなく、著者の筆は韓国のあらゆるものに鋭く向けられる。身内正義の価値観、あまりに手前ミソな「中国文化韓国起源説」、人口当たりの発生率で日本の16倍という詐欺事件の多さ(横領は80倍、汚職は118倍、背任は432倍という調査結果も)。

 なぜ道徳を重んじる伝統の国なのに、反道徳・不道徳というべき犯罪事件が圧倒的に多いのか。著者は「犬のように儲けて両班のように使う」という韓国のことわざを紹介する。「将来は高い徳をもった人となって世のため人のためにお金を使うのだから、金持ちになるまではどんなに汚い儲け方をしてもかまわない」という意味だそうだ。不正を合理化する現世主義がはびこっているのだ。

 韓流ドラマを見て、嘘と不正だらけの筋書きに「ドラマにしてもひどいもんだ」と思っていた評者だが、本書によると、「韓国の社会には『騙されるほうが悪い』という通念がある」という。

 著者は98年に日本に帰化しているが、韓国出身である。「自国民は絶対善で、日本は絶対悪」と教えられてきたが、日本に来て真実を知ったという。右派メディアへ登場することが多く、評者は少し敬遠していたが、本書を読み、認識を改めた。儒教が徹底し、その結果、表と裏が乖離したいびつな社会がつくられた韓国。いいかげんなところで儒教を振り切り近代化した日本。その溝は想像以上に根が深い。

  • 書名 韓国を蝕む儒教の怨念
  • サブタイトル反日は永久に終わらない
  • 監修・編集・著者名呉善花 著
  • 出版社名小学館
  • 出版年月日2019年8月 6日
  • 定価本体840円+税
  • 判型・ページ数新書判・270ページ
  • ISBN9784098253517

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