報道番組やクイズ番組の解説者として、よくお見かけする。書店に行けば、目を引く位置に著書がいくつも並んでいる。その多彩な活動と多作ぶりが際立つ齋藤孝さん。
齋藤さんの近著『本は読んだらすぐアウトプットする! 「書く」「話す」「伝える」力がいっきにつく55の読書の技法』(興陽館)は、読み終わってからも忘れない「アウトプット読書方法」が凝縮されている。
読みっぱなしにして、せっかく読んだ本の内容をすっかり忘れてしまう......。本のジャンルを問わず、そんなもったいない読書をしている人にオススメだ。
「はじめに」を読み、個人的にうっすらと思っていたことが、じつはよくあることなのだと知らされ、安心した。
「読書というのはこのアウトプットがあってこそ意味のあるものになります。なぜなら読みっぱなしだと、どうしても内容を忘れてしまうからです。仕事にも人生にも何も生かされないまま、記憶のもくずと消えてしまうわけです」
こうした一般的な読書によるむなしさを払拭するための「アウトプット読書」の55の技法が、4つのPARTに分けて語り尽くされている。
「PART1 読んだ本は忘れてしまうまえにアウトプットすればいい!」
本の読み方/アウトプットの方法
「PART2 読んだ本から「伝える」「話す」「書く」力を引き出す!」
伝える力/引用力/雑談力/文章力
「PART3 本は読めば読むほどあらゆる『スキル』がつく」
スキルアップ/リーダーシップ/揺るぎない精神/想像力&創造力/プレゼン・スキル
「PART4 本を読んで心を強くしなやかに整える」
モチベーション・アップ/心を整える/打たれ強くなる
PART3とPART4は、読書の効用について書かれている。ここでは、本書のタイトルにある「アウトプット」の技法にしぼって、PART1とPART2からいくつか紹介したい。
まずは、そもそもの読書の考え方について。せっかく買った本なのに、途中で挫折した経験は多くの人が共通して持っているだろう。齋藤さんは「一言一句の"読み漏らし"なく読み切らなければ」という「思い込みを捨ててしまいましょう」と書いている。
「2割読んで、その本全体で言いたいことの半分以上をつかめたらOK。読破したこととし、つかんだ内容をしっかり記憶に留めよう」
(PART1 本の読み方 「"2割読み"飛ばし読みする」)
続いて、文書のタイトルについて。ある程度の定型があるビジネス文書でも、読み手を惹きつける工夫が必要であり、本のタイトルから学ぶことをすすめている。2010年以降のベストセラーについて分析しているところが面白い。例えば、下重暁子さんの『家族という病』について。
「『家族とはすばらしいもの』という幻想を打ち砕くような見出しだが、『そうかも』と思わせるものもあり引きつけられる。」
(PART2 文章力 「本のタイトルに見出しを学ぶ」)
このほかに「SNSでライブ配信する」「『読書メモ』をつくる」「友だちと話す」「本を買ったらカフェで読む」「20分で読む」「数分で人に話す」「コピーライターの文章を読む」など、かなり具体的に書かれている。
読書の目的や興味の対象によって、55の技法のうち、どれを実行したいと思うかはさまざまだろう。「本書はどのページから開いて実践してみてもかまいません」とあるとおり、ピンと来た技法を、普段の読書にプラスして実行してみると良さそうだ。
読者に話しかけるような齋藤さんの文章を読んでいると、齋藤先生の授業を受けている生徒になった気分になる。本書は、本好きな人をより充実した読書体験へと導き、本をあまり読まない人の読書欲を掻き立てる一冊。
著者の齋藤孝さんは、1960年静岡県生まれ。明治大学文学部教授。専門は教育学、身体論、コミュニケーション論。著書に、毎日出版文化賞特別賞を受賞した『声に出して読みたい日本語』(草思社文庫)、新潮学芸賞を受賞した『身体感覚を取り戻す』(NHKブックス)、『雑談力が上がる話し方』(ダイヤモンド社)など多数。著書発行部数は1000万部を超える。NHKEテレ「にほんごであそぼ」総合指導も務めている。
本欄では類書で『学びを結果に変えるアウトプット大全』(サンクチュアリ出版)なども紹介している。
当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!
広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?