昨年(2018年)テレビ朝日系で放送されたドラマ「おっさんずラブ」は、中年の上司と後輩双方から愛を告白され、板挟みになる若手サラリーマンのこっけいな日常を描いて話題になった。男性同士の恋愛がテレビドラマになり、好感を持たれたのはLGBTへの理解がすすんだからだろう。 本書『東京パパ友ラブストーリー』(講談社)は、男同士のダブル不倫をテーマにした小説で、さらに一歩踏み込んでいる。
有馬豪は、30歳の若さで渋谷にあるファンドマネージメント会社のCEOを務めるヤングエグゼクティブ。妻のまなみと円満に暮らしている。5歳になる娘の亜梨が通う保育園で、鐘山明人という中年の建築家と知り合う。鐘山の妻美砂は大企業勤務、語学留学の後、民主党から東京都議会選挙に出馬、「ミス早稲田準グランプリ」の称号で当選。3期目のいまは立憲民主党に所属しているやり手。リノベーションの仕事を回してもらっている鐘山よりも、美砂の収入が多い。
鐘山からLINEで飲みに誘われ、「お互いイクメンとして妻の悪口を言い合おうよ」と盛り上がる。その晩、明人に唇を奪われた豪は一気に傾いていく。帝国ホテルで逢引きを繰り返したり、池袋にあるフランク・ロイド・ライトの学校建築を見に行ったり、20歳以上歳の離れた二人の仲は深まるばかりだ。
そしてある日、破局が訪れる。ある週刊誌が発売前日に公式アカウントでこんなツイートをアップしたのだ。
"キレすぎる都議"東雲美砂都議の夫 カリスマ設計士が株式仲介会社社長と"ゲス不倫"ならぬ"ゲイ不倫"―スクープ速報
この後、ツイッター大喜利が展開する。それぞれの夫婦がどういうその後を送るのかは、実際に読んでもらいたい。ここには教訓も小説的技巧もない。作家が現代の世相、風俗から吸い取った、リアルがむきだしになっている。
著者の樋口毅宏さんは『日本のセックス』など異色の作品で知られる作家。旧作のようなエグい描写は本書にはないので、女性でも安心して読める。2013年『タモリ論』(新潮選書)がベストセラーになった。16年に作家引退を宣言したが、その後も小説を発表しているというのも面白い。
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