読むべき本、見逃していない?

養育費は払えないのか、払いたくないのか

離婚の経済学

 離婚を扱った学者の本というと、グラフや表が並んだ無味乾燥なイメージがあり、敬遠したくなる。帯の「20~24歳で結婚する夫婦の半数が離婚」とか「離婚の申し立ては妻からが7割」という文言に目を止め、手にしたのが本書『離婚の経済学』(講談社現代新書)である。

 欧米では経済学や社会学を中心に離婚について学問的研究が進んでいる。その成果を生かしながら、日本の離婚に焦点を当てた本だ。

『格差社会』の橘木俊詔さんの共著

 著者の橘木俊詔氏は京大教授などを経て、現在、京都女子大学客員教授(労働経済学)。著書の『格差社会』(岩波新書)は、流行語にもなった。共著者の迫田さやか氏は、同志社大学大学院経済学研究科後期課程退学。博士(経済学)。フランス国立社会科学高等研究院客員研究員などを経て、現在、日本学術振興会特別研究員(京都大学)。橘木さんとの共著に『夫婦格差社会』(中公新書)がある。

 以下の構成になっている。

 プロローグ なぜ離婚を論じるのか
 第1章 年齢別離婚率から言えること
 第2章 離婚の国際比較
 第3章 歴史から離婚を読み解く
 第4章 不倫――「存在の耐えられない軽さ」か
 第5章 なぜ女性から言い出すのか
 第6章 養育費は払えないのか、払いたくないのか
 第7章 働けど働けど我が暮らし楽にならず
 第8章 離婚と幸福度――もう一度結婚したいですか?
 エピローグ 離婚からみた現代日本

20~24歳では半数が離婚

 年齢別離婚率の表が最初に出て来る。これによると、離婚率の高い年齢層は25~39歳であることが分かる。2017年では、30~34歳が8.12%ともっとも高い(厚労省「人口動態調査」)。「あれっ、帯の文言はどうした?」と思い、読み進むと理由が分かった。

 若者では結婚している人が少なく、したがって離婚数も少なくなる。だから総人口に対する離婚率としてはそう高くなくなる。しかし、結婚している夫婦だけを分母にした有配偶離婚率で見ると、19歳以下の男性は40%強、女性は80%前後、20~24歳では50%前後に達する(国立社会保障・人口問題研究所『人口統計資料集』より)。

 「結婚する若者に限定すれば、約半数が離婚に至るという深刻さである」

 しかも、20歳代の既婚女性のおよそ40%が「できちゃった婚」であるという別のデータもある。賃金・所得が低い若者の経済的不安定さや精神的な未熟さ、家庭生活の不安定さが避けられない、と指摘している。

 本書は「若者の離婚には救いがある」としている。「将来に安定した結婚に遭遇する可能性が開かれているからである」と書いている。しかし、それはどうだろうか。ひとり親世帯の問題があるからだ。

養育費を受け取っている母子世帯は24%

 「第6章 養育費は払えないのか、払いたくないのか」を読むと、ひとり親世帯の深刻な状況が浮かび上がる。2016年に母子家庭123万2316世帯、父子家庭18万7000世帯、計約142万世帯のひとり親世帯が存在する。養育費を受け取っている母子世帯は24%に過ぎない。また平均受取額は月3万~4万円である。これは子どもにかかる費用(平均1.5人分)約9万2000円の半分にも満たない。

 本書は大石亜希子氏の論文「離別男性の生活実態と養育費」(2012年)を紹介し、離別再婚父親は3割以上が、また離別単身父親では5割以上が本人年収350万円未満であるという。特に離別単身父親の2割弱が年収140万円未満の低所得である。

 一方、周燕飛氏の論文「離婚と養育費」(2012年)によると、父親の年収に応じて、養育費の支払い率も高くなるが、1000万円以上の所得の父親でも、平均月6万円程度で、支払い率は50%だという。そして、こう結論づけている。

 「貧困層の父親は『自分の生活さえままならず、払えない』、比較的金銭に余裕のある父親は『支払えるが、新しい家族の生活がある』ために、総じてどの所得層の父親においても、養育費を払わないという状況が生み出されていると言えよう」

進む再婚研究

 ひとり親世帯の男性は家事に悩み、女性は金銭問題に悩むとして、最終章は再婚を取り上げている。さまざまな再婚研究を紹介し、男性の再婚率が女性よりも高いこと、男女共通して20代で離婚した人の再婚割合は高いことを紹介している。

 フランスの劇作家アルマン・サラクルーの「判断力の欠如によって結婚し、忍耐力の欠如によって離婚し、記憶力の欠如によって再婚する」という言葉を紹介している。離婚が増えるに伴い、再婚も増えている。日本でも再婚研究が進みそうだ、としている。

 巻末には内外の多くの参考文献が挙げられ、いくつかの章は外部の研究者による査読を受けたと書いている。離婚にかんして通俗的な本は多いが、本書のような「学術的香りのする啓蒙書」は珍しい。著者の狙いは達成されただろう。

 BOOKウォッチでは、離婚関連で、シングルファーザーの手記『君たちにサンタは来ない』(ヨシモトブックス発行、ワニブックス 発売)、『性風俗シングルマザー』(集英社新書)、『無断離婚対応マニュアル――外国人支援のための実務と課題』(日本加除出版)などを紹介している。

  

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朗読:祐仙勇 朗読:真木よう子 朗読:榊原忠美 朗読:橋本愛

  • 書名 離婚の経済学
  • サブタイトル愛と別れの論理
  • 監修・編集・著者名橘木俊詔、迫田さやか 著
  • 出版社名講談社
  • 出版年月日2020年4月20日
  • 定価本体900円+税
  • 判型・ページ数新書判・235ページ
  • ISBN9784065191514

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