コロナ禍で結婚に対する意識が前向きになった人が増えているという。とは言え、ちゃんとした職業についていない、お金がない、結婚はまだ早い、いいと思える相手に出会えない......と、結婚に踏み切れない理由はいくらでも出てくる。
本書『しょぼ婚のすすめ――恋人と結婚してはいけません!』(KKベストセラーズ)は、「出会って2週間婚」をした著者「えらいてんちょう」が「婚活・結婚・子育て」術を伝授する一冊。
「この本を読み終わったころには、さっき挙げた理由などどうでもよくなり、今すぐ結婚しようと考えると思いますよ」著者の結婚に対する前のめりな姿勢が際立っている。「無理やり結婚しろ、子どもを産めと強引に迫る本ではもちろんありません(結婚し、子どもを持つつもりがある人向けの本だと思ってください)」と断った上で、著者は「しょぼ婚=しょぼい結婚」をすすめる。
「えらいてんちょう」こと矢内東紀(やうち はるき)さんは、1990年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。バーや塾の起業経験から、経営コンサルタント、YouTuber、著作家、投資家として活動している。初の著書『しょぼい起業で生きていく』(2018年、イースト・プレス)が話題に。
著者は、現在の妻と出会って2日で婚約し、2週間で結婚したという。現在、2児の父。本書で取り上げる「しょぼ婚=しょぼい結婚」とは、「とりあえず婚姻を成立させ継続させること、そして社会を成立させ維持していくこと」を目的としている。そして「『結婚というもののハードルの高さ』を払拭し、結婚を、その本質を核として再構築すること」を目指している。
「バブル的価値観の弊害だと思うのですが、恋愛と結婚を一直線上に置き、さらに結婚というものに値段をつけて、結婚のハードルを著しく上げてしまったのが、現在の晩婚化、少子化の原因ではないでしょうか。いい大学を出て、どこの会社に勤めていて、年収はいくらぐらいで、どこらへんまで出世しそうで......。これ、全部無駄ですよ」
まず、著者の「出会って2週間婚」にふれておこう。出会いは2016年、著者が経営していたバーでのこと。その翌日に初デート、その夜にプロポーズと、とんとん拍子に事は進んだ。当時の著者は月収15万円ほど。妻は会社員だったが、事情により仕事を続けることが難しくなっていた。「仕事を辞めたら路頭に迷って死ぬしかない」と言う妻に対して「それならば私がどうにかしよう」と、結婚することになったという。
結婚までのあらゆる手続きをほぼ全部すっ飛ばしたが、「世界で一番素敵な妻と結婚できて幸せなかぎり」と、夫婦関係は良好なようだ。著者が結婚をすすめる背景には、自身の成功体験から得た確信があることがわかる。
本書は以下の8章構成。著者は「そんなこと(結婚しない理由)を考えている間にさっさと結婚したほうがいい」という話を展開。「結婚するまで・結婚してから・子育て」にまつわる問題を「ゆるく解決」していく方法を伝授する。
第1章 結婚とは投資である
第2章 結婚すれば、ちゃんとなる
第3章 今日がいちばん結婚しやすい日だ
第4章 結婚相手はペットだと思え
第5章 縁側でお茶を飲むのはセックスです
第6章 パパ友ママ友は友ではない
第7章 えらいてんちょう&てんつまの「しょぼ婚」Q&Aコーナー
結婚するだけで社会的信用も上がるし、ちゃんとした人になっていくし、仕事もうまくいくようになるし、お金にも余裕が出てくる......と、特に前半にズラリと並ぶ結婚のメリットは本書を読んでいただきたい。
結婚のメリットとともに、夫婦の仲良しぶりが伝わってくる記述も多い。評者が正直、満腹気味になっていたところに、親子の距離感に関する印象的な記述がいくつかあった。ここでは二つ紹介しよう。
結婚までたどり着いても、今度は結婚を起点に次から次へと新たな悩みが出てくる。特に長いスパンで親が悩むことになるのが、子どもにまつわるものだろう。たとえば、親が子を思ってやったことがかえって逆効果になる場合があったりして、判断がむずかしい。
著者は「教育ママ・教育パパから素晴らしい能力の子どもは生まれない」の項目に、「親という字は立つ木を見ると書く」として、「親は子どもという木が育っていくことをただ見守る以外のことはできない」としている。
「水や栄養を与えたり、周りの草をむしったりなどして環境を整えることはできますが、思いどおりの形に育てることは不可能です。早く育てようと思って引っ張ったりすると、地面から抜けて枯れてしまいます」
なんともわかりやすいたとえだ。どこまでが環境を整えることで、どこからがやり過ぎなのか。親は子を大事に思うからこそ、ついあれこれと手を出してしまうわけだが、そこはあえて、一定の距離感を保つことが大事ということなのだろう。
もう一つが「子どもを信じる親でいましょう」の項目。「子どもの可能性を広げようという風潮は一見正論」だが、「親が無理やり引っ張り回してもいいことはない」としている。
「たとえば子どもが突然、アフリカのザンビアへ旅に出て、そのまま帰ってこないかもしれません。しかし、親ができることは、遠い異国の空の下にいる我が子の無事を祈り、『あの子ならまあ何とかやっていくだろう』と自分たちで納得することのみです」
この境地に達するにはまだまだ時間がかかりそうだが、参考になる。BOOKウォッチでは、結婚・子育て関連で『結婚できるかな?――婚活滝修行』(祥伝社黄金文庫)、『頭のいい子の親がやっている「見守る」子育て』(株式会社KADOKAWA)など多数紹介済み。
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