「既婚、未婚にこだわる時代はもう終わり」――。女性の生き方が多様化する現代、結婚は既定路線ではなくなり、あくまで選択肢の一つになりつつあると感じる。もしあなたが未婚を選ぶなら、本書『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(ベストセラーズ)を読んでおきたい。
本書は「正々堂々の独身」であるライター・小林久乃さんが「毎日が分岐点の女性たち」に贈る「読めばスッキリして前を向ける35の話」。著者の長年の人間観察と考察により「もし独身でいるのなら知っておくと役に立つ、それなりの条件、気をつけたいこと」を詰め込み「濃厚なエッセイ」に仕上げている。結婚にまつわるモヤモヤを吹き飛ばす、ピリッとした一冊。
著者の小林久乃さんは、静岡県浜松市出身。地元タウン誌から始まり、女性誌、情報誌の編集部員を経てフリーランスへ。エンタメやカルチャー分野に強く、ウェブや雑誌で連載記事を持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には10万部を超えるベストセラーも。
職業はライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど、毎日変わる。片仮名の肩書きがズラッと並び一見おしゃれだが、これは「単に色々なことを生業と謳って、食いっぱぐれのないように予防線を張っているだけ」。「32歳でフリーランスデビューをして、まさか44歳まで独身で仕事を続けているとは思ってもいませんでした」と、リアルな内幕を明かしている。
未婚の著者は、日本で生活していて窮屈さを感じている。それは「既婚」という身分証明を持ち合わせていないことによるもの。とくにスーツを着た一般企業の人たちと仕事でやり取りするとき「好奇心で溢れかえったおっさんたちの視線」を感じ、モヤッとしたことも。
40歳になるまでありとあらゆる婚活に手を出してきたが、現在、婚活はしていない。それは結婚を放棄したわけではなく、常に臨戦態勢ではいるとのこと。ただ、「別に結婚してもしなくてもこの世は楽しく生きられることも見えてきた」のだという。
「培った人間観察記と、現代女性は今こんな風に生きるべきではないかと思う私なりの推論。このミックスが本書には詰まっています。書いてみたら、これまでどこにも販売されていなかった、生々しいテキストに仕上がりました。既婚、未婚にかかわらず、女性であれば頷ける内容に書きました。3組に1組が離婚する現代、(中略)その時にあたふたするのではなく、女性として凜とした姿勢を保てるためのヒントを集約させたものがこの一冊です。」
本書は「起」「承」「転」「結」の4部構成。7つのコラム「"あかん男"たち」は、著者の観察眼がいかんなく発揮されている。
■「起」結婚願望の泉はどこから湧いた
なぜ私たちが結婚しようと思ったのか。そもそもの原因を振り返り、「二度と同じ意識を自分の中にため込まないための、ちょっとした復習」をする。
■「承」私たちが今、結婚しなくてもいい理由
今、なぜ私たちが結婚を選択しないのか、改めて理由を並べる。「これを反面教師にするもいいし、どっぷり浸るのも構わない」。
■「転」妻の称号を得るために費やした時間と金と下心
著者の婚活実績の数々を紹介する。婚活の「思い出をここで共有して、先に進もう」。これから婚活する人は、「このリアルすぎる体験談」を今後の参考に。
■「結」未婚で幸せに暮らしていくそれなりの条件を
観察してきたたくさんの人間模様と、自身が経験した「盛大な裏切りや歓喜」をミックスして編み出した「『独身でも楽しく生きていく条件』の10の法則」を記す。
【コラム】いますぐ見破れる"あかん男"たち7つのチェック
キャップのツバを後ろにしてかぶる男「自己顕示欲が強い」、「『(笑)』『!』が好きすぎる男『何かと許容範囲が狭い』」ほか。
「本書は純然たる婚活本ではありません。男にモテるための教訓が並んでいるわけでもないのです。(中略)負け犬の遠吠えでもありません。私たち女性が、ますます清く、正しく、色っぽく生きるきっかけのひとつ。そう思いながら読み進めてもらえたら幸いです」――。気さくで本音が詰まった本書を読んでいると、女子会に参加しているような気になってくる。
ここでは「結」の「『独身でも楽しく生きていく条件』の10の法則」から、とくに共感したものを紹介しよう。
「1 他人に誇れる仕事を持つ」
独身で仕事を続けていくときに必要なものの一つが「今、自分の仕事を他人に誇れるかどうか」。著者の場合、読者から褒めてもらえれば嬉しくなり、酷評を聞けばやはり傷つき、仕事の発注も、クレジットを見てわざわざ自分の名前を調べて連絡をくれるクライアントに対してはアガる。人から自分の仕事を問われたとき、胸を張って自慢するという。「自分の仕事の『未来』をプレゼンする誇りをあなたは持っているだろうか?」。
本書の端々から、著者の仕事に対する誇りが感じとれる。堂々と胸を張る、凛とした女性の姿が目に浮かぶ。既婚か未婚か関係なく、同性として刺激になる仕事観だと思った。
「ダイエット法や健康法と同じで、自分に合うものを選んで実行していけばいい。その選択した集合体が、どこにもないオリジナルの私たちの人生なんですよね。できればその『選択肢』の一つにこの本があることを願ってやみません。」
評者の場合、既婚か未婚かについて熟考することなく、流れに身を任せて現在に至った感がある。もはや人生の選択肢の一つとなった結婚については、一人ひとりの価値観がある。どちらを選ぶにせよ、頭の隅にしまっておきたいのが「この世は結婚してもしなくても楽しく生きていける。でももし、ひとりで生きていくのならそれにはちょっと条件がある」という著者の教訓だ。
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