婚活アプリなるものが存在することを評者は初めて知ったが、ネットで調べてみると若い世代の間で相当普及しているらしい。会員が数百万人という大手もある。ひと月数千円の料金(女性は無料の場合も)で利用できるし(このほかに課金がある場合も)、ちょっとした時間で異性と出会うことができるメリットが受けているようだ。
本書『アプリ婚』(小学館)は、実際に婚活アプリを利用して結婚した取材漫画家・新里碧さんが、体験をもとに書いたもの。アプリ婚活のあれこれの問題とその解決策、さらに自分の結婚までのエピソードを漫画と文章でつづった。婚活アプリを出会い系サイトのようないかがわしいものかと思い、ためらっている人には今後の参考になる本だ。
新里さんは東京藝術大学卒業後に外資系広告代理店のアートディレクターを経てフリーランスになった取材漫画家・イラストレーター・アーティスト。2012年には、ゆるキャラグランプリみうらじゅん賞を受賞している。
29歳の時に同僚に勧められて、ある婚活アプリに登録するところから始まる。しかし、自分のプロフィールに一向に「いいね!」が返ってこない。写真もなく、属性を出し惜しみして人柄も分からないプロフィールに反応がある訳がないことに気がつき、プロフィール作りに精を出す。プロフィールの書き方次第で「いいね!」は増えるという。
新里さんは「登山、ファッション、好きな食べ物など、その人の趣味や生活、自分らしさが垣間見える、会ってみたくなるような写真を選ぶ」ようにとアドバイスしている。また、アプリによっては、プロフィール写真がFacebookの写真になるものがあるので、変更するなど注意が必要という。
次の段階でメッセージのやりとりが始まる。そのうちに会う人も出てくる。新里さんは会う時間は平日の夜を勧める。対面して話が合わないと思ったら、翌日の仕事を理由に早く切り上げられることや、お互いの仕事時間がわかるというメリットを挙げる。
その後、お付き合いするようになっても、婚活アプリで出会った関係ならではの問題もあるという。たとえば付き合いはじめたのに、相手が婚活アプリを退会してくれない、友人や家族の話を一切してくれないなどだ。相手への不信感が生まれやすい出会いだからこそ、不信感を解消する努力が必要だという。
新里さんも婚活アプリで出会った男性と1年半つきあい、自分中心のヤバい人であることがわかり別れた。31歳でアプリを再開すると、29歳の時は無料だったのに1カ月3980円と有料になったことに驚いた。
幸い1歳上のゲーム会社に勤める男性と出会い、好きなゲームの話で盛り上がり、1年後に結婚した。しかし、婚活アプリで出会った事実を家族に理解してもらうために、あえて釣書を書き、両方の親と出会う機会を多く作り、理解を深めてもらったという。
評者の世代はまだお見合い結婚が珍しくなかったが、今やお見合い自体があまりないだろう。この本を読み、婚活アプリがかつてお見合い話を持ってきた「おせっかいおばさん」の役割を果たしていると思った。信頼できるものを選べば、有用なものに違いない。
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