読むべき本、見逃していない?

えっ、無断離婚・・・そんなことがあるの?

  • 書名 無断離婚対応マニュアル
  • サブタイトル外国人支援のための実務と課題
  • 監修・編集・著者名二宮周平、松本康之 監修、協議離婚問題研究会(リコン・アラート) 編
  • 出版社名日本加除出版
  • 出版年月日2019年10月 7日
  • 定価本体3200円+税
  • 判型・ページ数A5判・304ページ
  • ISBN9784817845863

 多数の本を紹介していると、世の中にはこんなこともあるのかと驚かされることがある。本書『無断離婚対応マニュアル――外国人支援のための実務と課題』(日本加除出版)が取り上げている問題もその一つだ。 日本人と結婚していたが、いつのまにか離婚されていた、と訴える外国人が少なくないという。まさか、と思うが、本当にあることらしい。表面化していないだけで珍しくないというのだ。

子どもと会えない

 本書は立命館大学法学部教授の二宮周平さんと、弁護士で公益財団法人「とよなか国際交流協会」理事長の松本康之さんの監修。協議離婚問題研究会(リコン・アラート)という団体が編集している。主な読者対象は、日本にいる外国人を支援している実務家たちだ。トラブルの解決手引書となっている。

 冒頭に外国人女性のAさん(30代)の例が紹介されている。日本人の夫Bさんと不仲になり喧嘩、家に入れてもらえない。友人宅を泊まり歩いている。夫にはDVの癖があり、子どもとも会えない。

 相談を受けた支援者が、「無断離婚」されている可能性もあるとみて、まず役所に「離婚届不受理」の申し出を勧める。役所に行ったら、すでに「離婚が成立している」と言われた。子どもに会いたくて保育園に行ったら、保育園の先生から子どもに会うことも、園の中に入ることも拒否された。知らないうちに事態が進んでいた。

 支援者のサポートでBさんの戸籍謄本を取り寄せると、「協議離婚届」が受理されていることがわかった。「離婚無効」の訴えをしたが、裁判が長引く。約1年後にようやく子どもと会えたが、すでに子どもは新しい生活になじんでおり、Aさんは強いショックと孤独感を感じた・・・。

 Aさんの支援者は、日本語がたどたどしいAさんの訴えを親身になって聞いて相談に乗らなければならない。法制度の理解や様々な手続きは日本人同士でも厄介だ。外国人となると、苦労は何倍にもなる。

日本だけのオリジナル

 本件で大きな問題点になっているのが、「協議離婚」に関する日本の法制度だということが推測できる。本書は「協議離婚制度は日本だけのオリジナル」という項目で次のように説明している。

「(日本では)当事者の一方若しくは双方あるいは第三者が協議離婚届書を戸籍の窓口に提出し、戸籍係が届書をチェックして受理すると、離婚が成立する」
 
「世界で最も簡単な離婚制度である。世界を見渡せば、夫婦財産の清算や離婚後の子の養育について合意し、その内容を裁判所が確認して初めて離婚が成立する国々が多い。中国や台湾も裁判なしで合意のみで離婚できるが、それでも当事者双方が登記機関に出頭し、口頭で離婚する旨を述べなければならない。だから、日本人と結婚した外国人にとって、届出とその受理だけで離婚が成立する仕組みは、予想だにしないことである」

 本書ではこうした日本的な離婚手続きが容認されてきた歴史的経緯や、修正案の動きなども詳しい。家風に合わない嫁を追い出すのに好都合だったとか、年間7万件に及ぶ離婚手続きを簡素化したいという思惑もあるとか、逆にDVで妻が離婚するには良い制度という見方なども。日本の社会史、家族史を振り返る上でも参考になる。特に戦後まもないころの修正論議では、法学の泰斗である中川善之助氏、田中耕太郎氏や、国会議員の奥むめおさんなど著名人の名前も登場するので勉強になる。

役所の戸籍係も必読

 もちろん、こうした離婚届は戸籍係を通すことが必要だ。正常に作成されたと思わせなければならない。そこでいくつかのインチキが行われる。本書では(1)署名の偽装(2)詐欺~虚偽の説明(3)署名の強要(4)無断届出(5)親権者の無断決定(6)離婚の報告的届出における無断離婚、という6つのパターンに分けて説明している。いずれも外国人が日本語や日本の手続きに疎いことにつけこんでいる。

 それぞれの内容については、おおよそ見当が付くが、少し分かりにくいのは(6)だろうか。これは妻の母国ですでに離婚が成立しているかのように装うことだ。日本人の夫が、外国人の妻の母国で書類を偽造し、その翻訳を添付するようなケースだ。書類が本物かどうか確認することなく受理されたことが過去にあるという。

 本書では「第一章 支援者に必要なこと」「第2章 協議離婚制度の成り立ちと問題点」「第3章 無断離婚の予防」「第4章 無断離婚の司法的救済」「第5章 無断離婚と子どもをめぐる問題」「第6章 無断離婚から生じる問題とその対応」「第7章 今後に向けて」の7章構成。多数のQ&Aも掲載されている。支援者のみならず、役所の戸籍係などにとっても、必読本と言える。

 日本に住む外国人は少なめに見て100万人強、帰化や国際児も含めると400万人に上るという数字もある。2019年4月から外国人労働者の受け入れを拡大する新制度がスタートし、今後5年間で35万人増やすことが見込まれている。本書で取り上げているような問題は増えることはあっても減ることはないだろう。

 編者の「リコン・アラート」(協議離婚問題研究会)は、2015年に関西で外国人相談を実施する団体が共催で、シンポジウム「勝手に離婚されるだけじゃない? 無法地帯の協議離婚」を開催したことをきっかけに結成された。外国人のための1日離婚相談ホットライン」の定期開催や、外国人当事者向けの動画配信及び多言語パンフレットを通じた情報提供など、協議離婚制度の改善に向けて提言や情報発信に取り組んでいる団体だという。

 BOOKウォッチでは関連で『「在日」の相続法 その理論と実務』(日本加除出版)、『外国人の受入れと日本社会』(日本加除出版)、『ふたつの日本――「移民国家」の建前と現実』 (講談社現代新書)、『団地と移民』(株式会社KADOKAWA)、『コンビニ外国人』(新潮新書)、『〈超・多国籍学校〉は今日もにぎやか!――多文化共生って何だろう』(岩波ジュニア新書)、『奴隷労働―ベトナム人技能実習生の実態』(花伝社)など多数紹介している。

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?