読むべき本、見逃していない?

安倍首相が「SAPIO」に批判されているワケ

外国人の受入れと日本社会

 安倍政権が珍しく、その支持基盤層から反発を受けている。「安倍『移民政策』は天下の愚策である」――これは最新号の「SAPIO」の見出しだ。保守系雑誌から安倍政権の政策がここまで攻撃されるというのは珍しい。右派によるデモも行われているようだ。

 外国人労働者の受入れ拡大をめざす「入管法改正」問題。ちょうど国会でも論戦が始まった。本書『外国人の受入れと日本社会』(日本加除出版)は極めてタイムリーな一冊だ。

日本社会のリスクマネジメントを考える

 著者の髙宅茂さんは日本大学危機管理学部教授。法務省の入国管理局長や大臣官房審議官を歴任している。入国管理問題のエキスパートだ。もうひとりの著者、瀧川修吾さんは日本大学大学院総合社会情報研究科准教授。政治学者だ。

 本書は外国人の受入れ拡大の是非を論じるものではない。これまで外国人、特に労働者の受入れをどのような政策と制度で行ってきたのか、それが今どのように変化しているのか。今後さらなる受入れが拡大しそうだという見通しの中で、安心・安全を確保し、分断や軋轢を防ぎつつ一層の発展を実現するにはどのような政策、制度が必要なのか。それらを、「長期的視点から見た、日本社会のリスクマネジメント」として考えようとしている。

 第1章「外国人の受入れに関する政策とそれを実現するための法制度」、第2章「外国人の受入れに関する政策の変遷」、第3章「外国人の受入れの拡大と入国管理法制の再整備」、第4章「今後の展望」、第5章「未来に向けたグランドデザイン」に分けて詳述している。

 コンビニのアルバイト店員など身近なところだけ見ても、かつては中国人、韓国人が多かったが、最近はベトナム人やネパール人が目立つ。「拡大」ぶりをひしひしと感じている人は少なくないだろう。平成29年末現在の外国人在留者は256万人を超え、過去最高となっている。総人口に占める比率は2%に近い。東京では今や20代の10人に1人が外国人だという。

建設や農業、介護など5業種を対象

 安倍首相はすでに18年6月の経済財政諮問会議で外国人労働者の受け入れ拡大を表明している。人手不足が深刻な建設や農業、介護など5業種を対象に19年4月に新たな在留資格を設け、単純労働に門戸を開いて、25年までに50万人超の就業を目指すというものだ。その方針に沿って、11月2日には外国人労働者の受け入れ拡大に向けて新たな在留資格を創設する出入国管理法改正案を閣議決定した。

 安倍首相は外国人の受け入れについて「移民ではない」と強調するが、今回の入管法改正案を「事実上の移民解禁」と見る向きは少なくない。それが国粋的な保守層からは反発されている大きな理由だろう。一方、少子化で経済界では労働力不足が深刻。日経新聞などは、「今回の政府の事実上の方針転換は一歩前進だが、国際基準に照らすとまだまだ出遅れている。外国人労働者から『選ばれる国』になるために受け入れ態勢の整備が急務」と急かす。産経新聞は、受け入れ拡大に消極的だった安倍首相の背中を押したのは菅官房長官であり、「外国人に働いてもらわないと日本はもたない」という菅氏のコメントを紹介している。

 外国人労働者を巡っては、様々なトラブルが日本各地で多発しているのも事実だ。昨年一年間で失踪した外国人技能実習生は7000人を超え、過去最多という報道もある。なんだかんだきれいごとを言っても、外国人労働者を日本人がやりたがらない仕事に就かせようという本音も見え隠れするだけに、野党側は、受け入れ制度の不備などを指摘している。

 いずれにせよ、急浮上したように見える「入管法改正」問題で、日本の外国人政策が大きな転換点を迎えることは確実だ。流入する外国人の暮しや子どもの教育などを巡り、地域社会も対応を迫られる。もはや他人事では済まされない。本書などを通して、頭を冷やしておく必要がありそうだ。

  • 書名 外国人の受入れと日本社会
  • 監修・編集・著者名髙宅 茂、瀧川 修吾 著
  • 出版社名日本加除出版
  • 出版年月日2018年10月 1日
  • 定価本体2500円+税
  • 判型・ページ数四六判・320ページ
  • ISBN9784817845030

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