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こんな60代になりたい「風吹流・しなやかな生き方」

Wind

 有名人が自宅から参加するリモート収録。今までならあり得なかったことだが、有名人の素顔や新たな一面を垣間見ることができ、これがなかなか興味深い。本も、こうした有名人の素顔にふれることができるものの一つ。

 年齢を重ねてもなおチャーミングな女優の代表格・風吹ジュンさんの素顔にグッと迫るのが、本書『Wind――風のように軽やかに生きる』(TJMOOK)。「今が一番楽しい。これからはもっと楽しい」という「風吹流・しなやかな生き方」をテーマにした一冊。

 いつまでも綺麗で可愛らしく、名前のとおり軽やかなイメージがある風吹さん。しかし、過去にそんな体験があったの? という風吹さんの意外な一面も、本書を読んで知ることとなった。

向田邦子さんのひと言

 風吹ジュンさんは、1952年生まれ。富山県出身。モデルとしてキャリアをスタート。1973年、初代ユニチカマスコットガールに選ばれ、デビッド・ハミルトン撮影の写真などで注目される。75年「寺内貫太郎一家2」で本格的に女優デビュー。ドラマ「前略おふくろ様」「岸辺のアルバム」「阿修羅のごとく」「北の国から '83冬」「やすらぎの刻~道」、映画「蘇える金狼」「無能の人」「男はつらいよ 寅次郎の青春」「魂萌え!」「海街diary」など、出演作は多岐にわたる。第74回(2019年度)毎日映画コンクールで田中絹代賞を受賞。

 本書は場面も時代も幅広く、多数の写真を掲載している。風吹さんの私物、手料理、散歩や買い物風景、旅先にロケ先。さらに幼少期から学生時代、デビュー当時、産後まで。中には公園で授乳する一枚もあり、プライベート感満載。他にもロングインタビュー、些細なことも本音も聞き出す「100の質問」など、風吹さんの素顔にとことん迫る。

 本書の目次は以下のとおり。

Chapter1 「これまで、これから」
Chapter2 「暮らしを楽しむ」
(「着る」こと、「食べる」こと、「住む」こと、「見る、知る、感じる」こと)
Chapter3 「カラダとココロ」
Chapter4 「山をあるく」
Chapter5 「JUN'S HISTORY」
Chapter6 「写真日記」
Chapter7 「100の質問」
Chapter8 「風吹さんて、こんなひと」

 Chapter1「止まらない、私の演技欲」に、今になって「女優という仕事の面白さに目覚めているのかな」とある。風吹さんは劇団に所属した経験がなく、そのことをコンプレックスに感じていた時期もあった。しかし「俳優にも色々な育ちの方がいる」からと、それに倣って経験を重ねていく方向でここまでやってきたという。

 23歳で「寺内貫太郎一家2」に出演したとき、向田邦子さんから「あなたって無国籍ね」と言われたことがあった。「あれって褒め言葉だったんだな」と振り返り、「自由で型にハマっていないというのも、ひとつの強みなんじゃないか」と考えるようになったという。今は亡き向田邦子さんとのやりとり、若かりし頃の葛藤に、女優・風吹ジュンの歴史を感じる。

「生きている限り、変化」

 「60歳を過ぎてもチャーミング」「あんなふうに歳を重ねたい」――。風吹さんの容姿、演技、オーラからそう思う人は多いだろう。それが本書を読んで、風吹さんのエネルギッシュな内面も人を惹きつける一因と感じた。

 「まだ知らない色々なことを吸収したいし、どんどん変わっていきたい。何歳になっても生きている限り、変化し続けていきたいです」

 67歳になったいまもなお、自身を更新しつづける風吹さん。中でも登山は「これからの人生に楽しさを与えてくれた」という。きっかけは、60歳を機に催された富山県・高岡の中学校の同窓会。「恐る恐る参加」して、45年ぶりに同窓生との再会を果たした。その中に登山家がいたことから「せっかくだから富山県に来る時は」と、一緒に登山をするようになったという。

 「私のモットーは『人生はビギナーズ』。新しいことを始めるのに、遅すぎることなんてないのです!」
 

風吹さんのタフさを育んだもの

 最後に、冒頭の「意外な一面」にふれておきたい。Chapter1「これまで、これから」で、68歳になろうとしている「今を支点」に、仕事、恋愛、子供、体験して感じてきたことを振り返っている。

 明るく華やかな話から始まるかと思いきや、本書の最初にあるのは風吹さん流の傷との向き合い方だった。「私に幸いしているのは、色々な感情を人と共有しないこと」であり、「傷つくのも1人、忘れるのも1人」のスタンスでやってきたという。

 風吹さんのこのタフさを育んだのは、子供の頃、両親の離婚をきっかけに「ほぼ放置されていた生活環境だと思います」。兄と2人きりの子供時代は確かに孤独ではあったが、風吹さん流の孤独の捉え方はこうだ。

 「実は孤独な時こそが自分を磨いてタフにしてくれるのです。......孤独な時間は、自分を自分に向き合わせて、生き抜くための客観性を育んでくれるのです」

 離婚、シングルマザーとして子育てをした経験にもふれている。「本当に色々ありましたから」としつつ、笑顔で前向きに貪欲に生きる風吹さん。ただチャーミングなだけでなく、芯の強い女性だった。「風吹流・しなやかな生き方」は、年齢にとらわれることなく自分にいっそう磨きをかけていけばいいんだ、と教えてくれる。



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  • 書名 Wind
  • サブタイトル風のように軽やかに生きる
  • 監修・編集・著者名風吹 ジュン 著
  • 出版社名株式会社宝島社
  • 出版年月日2020年4月16日
  • 定価本体1200円+税
  • 判型・ページ数B5変型判・128ページ
  • ISBN9784299001658

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