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新型コロナに対応した受験参考書がもう出た!

最新版 東大のクールな地理

 本屋で一般の人の教養に役立ちそうな受験参考書はないかとあれこれ探していたら、「『新型コロナ』の影響がここまで深刻になると考えていた人は、当初はほとんどいなかったのではないでしょうか」という書き出しで始まる本があったので驚いた。

 本書『最新版 東大のクールな地理』(青春新書プレイブックス)である。地理というと暗記科目と敬遠した人が多いかもしれないが、東大の地理の問題はそれだけでは解答できない。知識に加え、図表を分析する力や思考力、表現力が求められるのだ。

グローバル化の負の側面が出た

 著者の伊藤彰芳さんは河合塾講師。東大文学部ドイツ語ドイツ文学研究室を卒業後、渡独。帰国後に河合塾の地理講師として「東大地理」を担当。著書に『地理B 統計・データの読み方が面白いほどわかる本』、『東大のクールな地理』などがある。

 伊藤さんは「はじめに」でこう書いている。

 「わずか数年前まで手放しでもてはやされていた『グローバル化』の負の側面が、世界規模で露呈するようになる。そういう時代を、私たちは生きているのです」

 地理は、「日本と世界のダイナミックな変化」、「経済の動き」を扱う科目なので、入試問題、とりわけ東大の入試「地理」は、社会人にも大いに参考になるという。

どういう時代を生きている?

 7つの章で構成され、「いま私たちは、どういう時代を生きている?」「日本と世界は、どこに向かっていく?」という疑問に答える内容になっている。各章と主な項目は以下の通り。

 1 グローバル化と人・モノ・情報の移動 「新型コロナ」、米中摩擦、そして......、日本の観光業、拡大する貿易・パナマ運河の拡張
 2 中国 アメリカと対峙する大国、怒涛のアフリカ進出、世界の工場から「世界の市場」へ
 3 アジアのダイナミズム 中国以外のアジア...32億人のエネルギー、インド...優秀な人材とインフラ事情
 4 EU ブレグジットでみるヨーロッパ、航空機産業にみる国際分業
 5 アメリカ合衆国 「自国第一主義」に向かうアメリカ、リーマンショック...東大が異例の早さで出題!
 6 SDGsと人類の未来 国連が定めた目標、化石燃料と再生可能エネルギー、フェアトレード...なぜ高価でも伸びている?
 7 日本 人口減少時代...東大が問うテーマとは?、東京への一極集中と地方の格差

 各章の冒頭で、簡単な解説があり、予備知識なしでも理解できるよう工夫されている。そして、実際の東大の問題に沿って、さらに深く掘り下げている。

インバウンドが2019年出題されていた

 たとえば、新型コロナウイルスの感染によって、何かと話題になっている「インバウンド」についての問題は、こんな内容だ。

 日本を訪れる旅行者数の2005年と2015年の上位6か国の表を掲げ、こう設問している。

 「中国とタイからの旅行者数が増加している共通の理由として考えられることを、下記の語句をすべて用いて、3行以内で述べなさい。語句は繰り返し用いてもよいが、使用した箇所には下線を引くこと。 所得階層、政策、航空、入国管理」(2019年 第2問 設問Bの一部)

 年換算で3650~36500ドルの収入がある「中間層」の増大や日本政府による誘致キャンペーン、LCC(格安航空会社)などの原因を説明し、下記の解答例を挙げている。

 「経済発展により中高所得の所得階層が増えたことに加え、日本では誘致政策を進め、ビザ発給要件の緩和や入国管理の簡素化、誘致イベントが行われ、格安航空の就航も拡大したため。」(83字)(注) 下線は省略した

 10年前の2010年には、まったく逆のことが問われていたという。日本から中国に行く人が多くて、中国からの旅行者が少ないことが問われていた。それだけ、東大は時代の変化に対応した出題をしていることがわかる。

「東大地理」は"知の宝庫"

 来年の問題には、コロナ禍の拡大による「サプライチェーンの寸断」や「インバウンド旅行者の激減」などが出題されるかもしれない。

 在宅勤務でテレビも見飽きて、少しタメになる本でも読んでみようという人にはうってつけの内容だ。

 伊藤さんは、「東大地理」は、知識ゼロからでも読める"知の宝庫"です、とアピールしている。

 私事で恐縮だが、評者はある国立大学の地理にかんするゼミナールの落第生だった。それにもかかわらず社会でなんとかやってこられたのは、地理学のスキームのおかげかもしれない、と学恩に感謝している。

  
  • 書名 最新版 東大のクールな地理
  • サブタイトル"10年後の日本と世界"を知る
  • 監修・編集・著者名伊藤彰芳 著
  • 出版社名青春出版社
  • 出版年月日2020年4月25日
  • 定価本体1090円+税
  • 判型・ページ数新書判・252ページ
  • ISBN9784413211635
 

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