「自分の考えをうまく伝えられない」「うまく話せず、プレゼンで負けてしまった」「SNSで発信しても誰も見てくれない」――。これらの悩みを解決する一冊がある。
今注目のクリエイター・三浦崇宏さんによる本書『言語化力――言葉にできれば人生は変わる』(SBクリエイティブ)だ。「MBAよりも英語よりも大事なスキルが身につく36の考え方」がじっくりと書かれている。広告業界の人、起業を考えている人、言葉を磨くコツを知りたい人、革命児の脳内をのぞきたい人、必見だ。
三浦崇宏さんは、The Breakthrough Company GO代表・PR/クリエイティブディレクター。1983年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。博報堂・TBWA\HAKUHODOを経て、2017年独立。博報堂ではマーケティング、PR、クリエイティブ部門を歴任し、PR戦略を組み込んだクリエイティブを数多く手がけた。現在、様々な業種のプロフェッショナルを集め、新規事業開発から広告まで幅広く問題解決を手がけるThe Breakthrough Company GOを設立。カンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルで金賞、ACC総務大臣賞などを受賞した。
なお、「クリエイティブディレクター」とは、従来は広告制作の責任者という意味で使われる言葉だったが、著者は「アイデアの力で社会や企業の活動に変化を起こす専門家」という意味で使っている。
ビジネスパーソンの間で歴史長編漫画『キングダム』のブームを巻き起こしたり、「新聞広告の日」に朝日新聞の見開き30段に「左ききのエレン」という漫画を掲載し、ツイッターの爆発を引き起こしたり、ラッパーのケンドリック・ラマー来日のプロモーションとして、霞ヶ関駅と国会議事堂前駅に黒塗りの行政文書をモチーフにした広告を掲げ、SNSやメディアで話題になったり......。著者がこれまでにクリエイティブの力で変化を起こしてきた実績が挙げられている。
本書は以下の4章構成で、言葉を「最強の武器」にする方法が書かれている。
序章 すべては言葉で変えられる――仕事も人間関係も人生も
第1章 「言葉にする」方法
第2章 印象に残る言葉、一生残る言葉をつくる
第3章 言葉で人を動かす
第4章 言葉で未来を指し示せ
帯に顔写真が載っている。どこか破天荒な雰囲気が漂う。なにか面白いこと、斬新なこと、ピリッとしたことが書かれていそうな気がして、評者は吸い寄せられるように手にとった。結論から言うと、予感は的中した。
著者は、自身の成功談も失敗談もひっくるめて披露している。仕事の実績を謙遜することも、過去の絶望体験を隠すこともない。歯に衣着せぬ物言い、堂々と構える姿勢にスカッとする。一方、言葉に対する並々ならぬ愛情があふれ出ている。圧倒的な存在感を放つ、豪快さと繊細さを兼ね備えた革命児、といった印象を受けた。
「本書は、12年間、いや、36年間、言葉と向き合い、言葉を駆使し、言葉に救われてきた男が、言葉によって自分の人生をコントロールするための思考法とテクノロジーをまとめたものだ。(中略)『あ、この瞬間から、自分の人生が少し変わるかもしれない』。そんな感覚を手に入れてくれたら嬉しい。」
過去の体験、そこから得た教訓、言葉の持つ力、ビジョンが、実感の込もった言葉で書かれている。「自分の言葉」で表現することが大切とよく言われるが、これぞまさに自分の言葉、三浦さんにしか書けない言葉だと思うものばかり。直球かつユーモアがあり、惹かれる文章だった。
ここでは、著者が「ぼくの人生にとって大切な、最も汎用性の高い武器」とする「LIFE is Contents」を紹介しよう。これは、人生に起きるあらゆる出来事を言葉で語ることで、コンテンツにしてしまえば、前向きに捉えられるようになるというもの。
小学校5年生のとき、元ダンサーの父が事業に失敗、倒産し、家が破産した。世田谷区での三階建て一軒家の生活が一転、一家は夜逃げのように板橋区の外れの団地へと引っ越した。当時通っていたのは、裕福な家庭の子どもが集まる名門校。ある日突然、安定した生活水準から弾かれてしまったことを秘密にするのか、面白おかしく話すのか、2つの選択肢で迷った。
著者が選んだのは後者だった。友人みんなに同情なんて決してさせない、笑いの渦に巻き込んでやると考え、「あのさ、すげぇ面白いことがある。ウチさぁ、ぶっちゃけ破産したわ」とカミングアウト。結果、周りは大爆笑だった。この体験により「LIFE is Contents」は三浦さんの人生のど真ん中を貫く指針となったという。
「何か嫌なことやトラブルがあっても『これでまた仲間に語るネタが1つ増えたな』あるいは『自伝の章立て』が増えたなくらいに考えるようになったのだ。(中略)未来は言葉で作られる。同じように過去の意味は言葉で変えられる。」
数々のエピソードにより浮かび上がってくる三浦さんの人物像に興味が尽きない。
「誰でも簡単に意識せずに日常的に使っている『言葉』こそが、あなたの価値を明確にし、あなたの願いを叶え、あなたを成長させるたった一つの、そして最強の武器だ。」
すでに手にしている言葉を磨くことで、想像できないほどの変化をこれから起こせるかもしれない。テクニックを教わるとともに、それ以上に言葉の持つ可能性に気づかせてくれる。読めばワクワクしてくる一冊だ。
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