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隠れ家カフェで花と美青年に癒やされたい!

秘密の花園でお茶を

 花と美青年に癒やされる隠れ家カフェへようこそ――。色とりどりの花が咲く庭のあるカフェを舞台に、花の香り、絶品スイーツ、思わずみとれるほどの美青年が、訪れる人を癒やしてくれる。

 安東あやさんの本書『秘密の花園でお茶を』(ポプラ文庫ピュアフル)は花カフェ「秘密の花園」(シークレットガーデン)をめぐる、美しく、おいしく、心落ち着く物語。女性の憧れを凝縮したような設定に、こんなカフェが現実にあったら......と、うっとりしながら読んだ。

魅力的なカフェ店主

 かすかに風が吹くたびに花の香りが広がるカフェ「秘密の花園」。店内にも花が飾られ、窓から花園が見え、花づくしのメニューがならぶ。カフェの様子をより具体的にイメージできる描写を引用しよう。

 「緩やかにS字を描く小径のすぐ脇にも、びっしりと花が敷き詰められている。地面を埋め尽くす白や青の小花たちの上には、もう少し背の高い黄色や赤の花々が揺れていた。そのまた奥には青々した葉をみっしりと茂らせた低木が可愛らしい花をたくさんつけている。そして背後にそびえたつ、花園に緑の屋根を作っている木々――どこを見渡しても、花が洪水のようにあふれていた」

 本書は「第1話 キョウチクトウの誘惑」「第2話 ライラックの憂鬱」「第3話 レンゲソウの窮地」「第4話 花冷えの日」からなる連作短編集。

 高1の英美里には、8つ上の兄がいる。兄は英美里に甘えてくるのだが、英美里は密かにそれを嬉しく思っていた。ある日、英美里は兄の婚約を知りショックを受ける。さらに、兄が婚約者とは別の女性と親しげに歩いているところを目撃し、気分が悪くなってしまう。

 英美里はクラスメイトの健に助けられ、兄の店だと連れてこられたのは、住宅街にある隠れ家のようなガーデンカフェ。そこで英美里を迎えたのは、優しく微笑む魅力的なカフェ店主・咲良だった。(第1話 キョウチクトウの誘惑)

 「秘密や悩みを話してもいいし、話さなくてもいい。秘密や悩みを抱えているつらさを吐き出してもいいし、抱えていてもいい。ここでは好きなようにしたらいいんだよ」
 「ここは秘密の花園。ここで聞いたことは絶対に外に漏らさないし、この瞬間だけのもの。だから安心してくれていいよ」

 柔らかそうな茶色の髪、線の細い優しげな顔立ち、肌の白さもあいまって繊細に作られた彫像のような店主・咲良。地面に飛び飛びに埋められたレンガの上を歩いていき、咲良に話を聞いてほしい......と思わずにはいられない。

「理想をイメージして創作」

 本書にはエディブルフラワー(食用花)を用いたメニューが登場する。たとえば「花とフルーツのチーズケーキ」は、ゼリーと2層になった円形のレアチーズケーキ。花とカットしたフルーツが、つやつやしたゼリーにどっさりと埋め込まれている。花はビオラ、バーベナ、マリーゴールド、サイネリア。フルーツはイチゴ、ブルーベリー、パイナップル。ラベンダーのお茶は、口をつけるとすっきりとした香りが広がる。

 安東さんは「あとがき」で、通販とデパ地下の野菜売り場でエディブルフラワーを入手し、作中に登場した「エルダーフラワーソーダ」を再現したエピソードを披露している。ポイントは、フラワーアイスキューブ(花の入った氷)の作り方といい、納得のいく氷(透明、かつ花を真ん中に固定できた状態)ができるまで1週間ほど作り続けたという。

 安東さんは、本書のテーマについてこう書いている。

 「この物語のテーマは『癒やしと救い』です。身も心も疲れ切ってクタクタ――そんなときに読みたくなる本をイメージして作りました。私自身がそんなふうに疲弊していた時期に、癒やしを求めて書いたお話です」

 カフェのイメージは、やはりあの名作『秘密の花園』(バーネット作)からとったという。

 「思いがけず出会った、自分だけの秘密の場所。外とは隔絶された別世界で、花や木々に囲まれている――。実在のカフェではなく、自分の理想をイメージして創作しました」

 本書は、色、香り、味などを想像し、感覚を研ぎ澄ませて読むと楽しい。文字を追っていただけなのに、カフェ「秘密の花園」に行き、スイーツとお茶を味わったかのような読後感だ。

 安東あやさんは、東京都在住。好きな花はバラ。著書に『新宿陰陽師』『鎌倉不動産のあやかし物件』(以上、メディアワークス文庫)などがある。

  • 書名 秘密の花園でお茶を
  • 監修・編集・著者名安東 あや 著
  • 出版社名株式会社ポプラ社
  • 出版年月日2019年10月 5日
  • 定価本体660円+税
  • 判型・ページ数文庫判・254ページ
  • ISBN9784591164235

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